[劇評]劇団☆新感線「蒼の乱」@シアターオーブ

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1年半ぶりの劇団☆新感線の本公演。天海祐希さんを主役として迎え、脇を固める実力派とものすごい制作スタッフ力を背景に圧倒的なパワーを見ることができた。新感線には珍しく「爽やか」な印象をもったのは、天海さん、松山ケンイチさんの清々しさとタイトルにある「蒼」を意識した舞台照明そしてなにより、色んな所で風を感じさせる演出にあった。そして、早乙女太一の超絶殺陣は健在でした。

劇団 劇団☆新感線
公演期間 2014/03/27~2014/04/26
演出 いのうえひでのり 中島かずき
出演 天海祐希、松山ケンイチ、早乙女太一、梶原善、森奈みはる、粟根まこと、高田聖子、橋本じゅん、平幹二朗、右近健一、河野まさと、逆木圭一郎、村木よし子、インディ高橋、山本カナコ、磯野慎吾、吉田メタル、中谷さとみ、保坂エマ、早乙女友貴、川原正嗣、武田浩二、藤家剛、加藤学、川島弘之、安田桃太郎、井上象策、菊地雄人、南誉士広、熊倉功、岩崎祐也、成田僚、穴澤裕介、阿部誠司、石井雅登、蝦名孝一、長内正樹、熊谷力丸、常川藍里、原慎一郎、生尾佳子、上田亜希子、後藤祐香、斎藤志野、鈴木奈苗、中野真那、森加織、吉野有美
劇場 シアターオーブ(渋谷)
観劇日 2014/04/12

 

■物語

都に官位を求めて上京し、検非違使の一人として働いてた将門小次郎(松山ケンイチ)は、そこで渡来人の女に出会い、その女達とともに、故郷の坂東へと帰郷を果たす。自らの親族の裏切りを鎮圧し、中央から派遣された国士を倒し、反乱の狼煙をあげる。都で出会った渡来人の女、蒼真(天海祐希)と結ばれ、その反乱は、蒼真と同郷で海賊を頭に収まった西の純友との共謀により、都の公家たちを追い詰める戦いになるはずだった。

しかし、戦いは終わらず、民は疲弊し戦いへの支持はなくなった。戦いに倦むことなく指揮をとる小次郎は民からも煙たがられ、精神を疲弊し坂東から出奔。後は、蒼真がその戦いの指揮を将門「御前」という名のもとにとることとなる。

一方、都で、この反乱の真相が高貴な人物の兄弟げんかでしかないと信じた小次郎は、俵藤太と名前を変えて、将門討伐軍の副将となって坂東に来る。

■感想

坂東の原風景を感じさせる「風」が印象的な舞台

色々な舞台を見てきましたが、舞台上に風が吹き続けた舞台は初めて見た気がしました。京で、小次郎(松山さん)が故郷の相馬を語るシーンから始まり、言葉で語る広野での草、空、そして風。それが、坂東の広野に戻ってから何度となく実際の風として舞台上に吹きました。(扇風機…いったいいくつあったんだろう

ちょっと中世の日本ではその服装はどうなのと思うような天海さんのドレス風の衣装は、この風を観客に感じさせるためのものだったのでしょう。凛々しく立つ天海さんのスカート(?)が揺らめく姿は、自分が劇場の中にいるのを忘れさせるような効果がありました。

主役は、天海さん。第2幕では本領発揮

なんといっても、大怨霊「将門」の役をやっているので、松山ケンイチさんが今回の主役なのかなぁと思っておりました。事実、1幕は天海さんはちょっと引き気味で、松山さん演じる小次郎が物語を引っ張っていきます。

が、それも2幕の初めまで。戦争に疲れ、常世王(蝦夷の王、平幹二朗さん)に操られることで、心身喪失し行方しれずになった後、天海さんが反乱軍を指揮するとなってから、一気に物語が加速しました。

今回の天海さんは、過去に見たどの舞台よりも、感情表現が激しかったように思います。1幕の静/従の感じも後半明かされる蒼真の過去に縛られて抑え込んでいる様子が伝わってきましたが、後半、決心し、軍を率いるとなってからの男前ぶりはさすがです。急に言葉が悪くなり、強引になったその様子は、本当に活き活きとしていました。

そして、小次郎が反乱軍に帰ってきて、再び最後の別れをするシーンの感情を爆発させる天海さんの演技力にぐっと迫るものを感じました。

11年前の天海さん✕新感線の「阿修羅城の瞳」でも、その圧倒的な迫力に参りましたが、この舞台ではまごうかたなき主役の貫禄で、全舞台を見事に引っ張っていました。

 松山さんのカメレオンぶりが堪能できた

大河で、「平」清盛を演じていた彼が、「平」将門を演じるというのもいいなぁと思っていましたが、大怨霊将門を若い馬と話ができるほどの純朴な一本気な青年から戦争に疲れ狂乱する姿、そして最後に男らしく死ぬ姿まで、時には悪役にさえなるその演技の幅の広さは、舞台上でも十分通用する役者さんだなぁと思いました。

超絶殺陣は、スピードだけでなく、感情をノセる。

今回の舞台で楽しみだったのは、髑髏城の七人で見た早乙女太一さんの超絶の殺陣でした。

ところが正直、第一幕を見ている間は、「あれ、こんなもんだっけ?」とか思ってしまいました。意外と周りの殺陣もすごくて(松山さんのも迫力があってすごかったし、天海さん…女優なのにそんなにビシバシ決まる人はそんなにいない…)目立たなくなったのかな。と思っていました。

それは、見くびりすぎでした。他の役者さんは、セリフを喋りながら殺陣をしているものの、殺陣は殺陣、セリフはセリフで、セリフに感情はのっていても、殺陣はいつでも同じ調子です。

が、早乙女さんは殺陣そのものにその時の夜叉丸(早乙女さんの役名)の感情をノセるのです。二幕終盤の常世王を失った後の絶望的な状況での殺陣は、まさに目にも止まらぬ鬼気迫るスピードで、その激情がそのまま殺陣に現れていました。

圧巻は、実の弟(早乙女友貴さん)演じる太刀影との一騎打ち。ひゃーと声をあげてしまいそうなほどの恐ろしく美しいシーンでした。

期待を裏切らず、想像を裏切る中島脚本

キャスティング表を見た時から、この中世のオールスター登場的な脚本のなかで俵藤太がでていないことは、ちょっとひっかかっていました。

また、ストーリーが進む間、「とはいえ、史実では、将門は結局殺されるわけだし…」と思いながら見ていました。

坂東を出奔し、京(みやこ)で大殿と約束を交わし、といった辺りで「あれ?」と思っていると、まさか、将門が俵藤太を名乗るとは….確かに謎の多い人ですが、もっとおじいちゃんのイメージがあったので、この展開は想像していませんでした。(思わず小声で、「そうくるか…」とつぶやいちゃいました。

でも一方で、「え、じゃぁ、松山さんは敵軍として終わるの?」と思っていたら、ちゃんと最後はいいやつとして松山さんを再度将門にして、終わらせるあたりは、期待どおりです。

そして、あの将門の首が関東に帰ってくるというエピソードもきちんといれてきて芝居は大団円。よかったぁ。

ラストの演出は、キル風。舞台が草原と蒼空へ

ラストシーンの演出は、さぁっと馬(この馬の造形も素晴らしかった!!)によって緑色の布が舞台上を覆い尽くす演出でした。野田地図の「キル」の演出でも印象に残っていた演出手法。そういえば、あの作品も草原を舞台にした作品。

風がその布を震わせて、風が吹きつける広い草原のイメージがぱぁと広がりました。

2回目も見に行っちゃいました。そちらの劇評も読んでいってください。

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