[劇評]モダンスイマーズ「死ンデ、イル」@ザ・スズナリ

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新装開店というか、新人女優をオーディションで決めての新規展開モダンスイマーズ第1弾。

何度か過去に見ているはずなのに、何か別の脚本家の別の劇団の舞台をみたような新鮮さ。後半、ストーリーの展開の際には、背筋にぞぞぞっと何かが走るような感覚に襲われた。新人女優は、ぱっと見のインパクトはないが、気づくと目を離せない不思議な魅力。

劇団 モダンスイマーズ
公演期間 2013/12/12~2013/12/22
劇場 スズナリ(下北沢)
演出 蓬莱竜太 蓬莱竜太
出演 古山憲太郎、津村知与支、小椋毅、西條義将、坂田麻衣、松本まりか、西井幸人、宮崎敏行、高田聖子

モダンスイマーズ「死ンデ、イル」フライヤー

物語

浪江町の普通の家族。両親を早くになくした女子高生。姉と姉の夫と3人ぐらし。それが、あの事故で状況が変わる。今までほとんど親交のなかった叔母の元で暮らすことになる彼女は、様々な状況の変転に身を任せた末に、自分の選択肢、居場所がなくなったことに気づく。

感想

先日、浪江町にいってきました。その記憶が生々しいが故に、他人事とは思えないストーリー展開。舞台上にいるほとんどすべての人に感情移入可能で、それでいて、その感情移入した役の立場に立った自分を主役である彼女の目線で見ると、異世界の化け物にみえちゃうというそんな感じの舞台。

女子高生とか、既に思考形態とか回路の根本が異なっている気がして、なかなか入り込めないと思ってたのですが、この舞台はその彼女の視点を無理やり観客に感じさせてくれます。

スケッチブックとか、舞台上のカメラ画像のプロジェクションとかそういった小道具がうまく使われているからです。特にスケッチブックで書かれたスケッチと彼女のコメントと絵による状況説明が彼女目線にうまくさせてもらえます。

そういう目線になってみた時に、彼女の周りの人々にもそれぞれにギリギリのところで生活をしていたのが顕になっていきます。

彼女目線から見た時の救いをどこかに求めていたのに、その救いを誰も提供してくれない、冷たいというか異形の存在に周囲の人々が見えてきます。

でも、冷静になってみると、周りの人々は特別冷たいなんてことはありません。彼ら一人ひとりの立場に立てば彼らのような行動をとってしまうんだろうなと考えこんでしまった。

それでも、彼女が追い詰められてしまった。…それは何故か…考えこまされてしまいました

最初は、「フツー」を繰り返す登場人物たちのフツーじゃない心境をえぐりだす会話の積み重ねに、何度ともなくいたたまれない気持ちになりました。
少しづつテンションが上がっていく会話の合間に、ついこちらが笑い出してしまうようなセリフが出てくるのも、登場人物たちの切羽詰まった心境の演技が真に迫っているが故に、傍目である観客にはこっけいに見えるところがあったのだと思います。

練りこまれた脚本と演出を感じました。まだ、開演して3日目ですが、完成度は非常に高かったです。

新生モダンスイマーズの象徴である若手女優を中心に描いた舞台は、脚本も演出も今までとは別物の緊張感のある舞台になっていたと思います。

主役の坂田麻衣さんは、暑苦しい周りの劇団員の男(おじさん)に比べると、ぱっとみ中学生日記に出てきそうな、普通の女の子ですが、細かい仕草や体をはった演技には凄みを感じました。

しかし、結局ビーマンの位置づけの意味は何だったんだろう….。彼の役が客演の方で行われていて、劇団員4人のうちのふたりがダブルキャストだったのは何故…とか思ってました。途中で大きく脚本が変わったのかなぁと妄想してました。

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