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劇評

[劇評]トラッシュマスターズ「たわけ者の血潮」@座・高円寺1

投稿日:2017/02/06 更新日:

二時間半にわたる会話劇。暗転もなく場面も変わらす、プロローグを除けばほぼ時間軸も変えないまま突き進む。
途中で飽きたりすることを心配していたが、結局杞憂終わった。ことばの力を信じ、表現による力を信じる強い物語。観客や民衆にこびるのではなく、理想を実現するために世界を感化する事の大事さ訴える
この芝居に感化されたのは、自分自身かもしれない。

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劇団 TRASH MASTERS
題名
公演期間 2017/02/022017/02/18
中津留章仁 演出 中津留章仁
出演 菅原茂之(市議会議員 父親):高橋洋介
菅原伊代理(茂之の妻、翻訳家):川﨑初夏
菅原康生(茂之/伊代理の長男、無職・反ヘイト法活動に参加):森田匠 菅原愛理(茂之/伊代理の娘 女優):多田香織
菅原紀之(茂之の弟 公務員):林雄大
阿久津一樹(伊代理の弟 劇作家/演出家):星野卓誠

大木翔太(愛理の恋人):森下康之
藤原英都(俳優 舞台上で愛理の恋人役):長谷川景
神戸百合枝(新聞社 劇評家):林田麻里
糸井明(新聞社 社会部記者):倉貫匡弘

劇場
座・高円寺1(高円寺)


観劇日 2017年02月05日(マチネ)

■物語■

かつて新劇に所属し、大女優として知られた阿久津佳苗の邸宅には今、その娘である菅原伊代理とその家族、弟の劇作家の阿久津一樹が住んでいる。佳苗は数年前、不審死しており、世間では麻薬中毒で亡くなったと伝えられている

菅原家のリビングでは、伊代理を中心に阿久津一樹の創作した演劇について会話がなされている。
演劇の内容は、伊代理の家族が投影され、市議会議員で離党しようと画策している伊代理の夫茂之、在特会のような団体に入りヘイトスピーチをしている長男康生についても触れられていたようである。
一樹はヘイトスピーチをテーマに戯曲を書いたようなのだが…..。
何故、一樹はそのような戯曲を書いたのか?
伊代理は、その意味を問う。

家族を通し、先進国で生きる人々の病理を鮮やかな手口で浮き彫りにする。

実は演劇に政治的な立場を持ち込むことには余りポジティブな感情を持っていない。

おそらく学生時代に見たアングラテント芝居の中に、物語性を無視したアジテーションが舞台に載っただけの舞台を見たことも影響しているだろう
過去にも、野田秀樹さんやケラさんが突然戦争を芝居に絡めてくることに不快感を感じたことも多い。
しかしこの芝居に関してはあまりにも真正面から政治を取り上げていることに違和感を感じないどころか、飽きさせない知的興味を刺激されあっという間に時間は過ぎた
おそらく、この芝居に心を動かされたのはそれだけが、理由ではない

この物語の本質は家族の物語

様々な政治的な議論や演劇論の中に興味深い話があったが、けしてそれを主張するための討論大会ではない。あくまでも家族の変容または成長の物語として上質であるが故に、観劇後のじわっとした満足感につながったのだと想う。

役者さんは、皆さん上手い方でした。

市議会議員役の高橋洋介さんは、最初に出て来たときは硬い演技の役者さんで好きになれそうにないなと思いました。しかし、話が進み感情の吐露を始めたあたりから、共感できる役者さんになりました。
実は、この舞台を見ている間、誰がこの舞台の主役なのだろうとずっと考えていたのですが、彼が主役なのだと最後のシーンで気づきました(僕にとって感情移入できる主役の存在はとてもたいせつなのです)

妻役の川﨑初夏さんは、冷めた演技が魅力的でした。それ故に、最後の感情の爆発が印象的でした。欲を言えばもっと取り乱して欲しかったですが、魅力的であることに変わりはありませんでした。

長男康生役の森田匠さんも、印象に残る役者さんでした。考えてみれば、最初と最後のシーンしか出てこないのに印象的なシーンをやっているというのは、随分おいしい役をもらっているなと思いましたが、それに見合う演技だったと思います

いや、実はこの舞台の主役は一度も舞台に登場しない亡くなった往年の大女優だったのかも知れません

家族の物語が印象的でした。

以下は、とはいえ、劇中で多く語られていた政治的な話や演劇論について、個人的に感じたことです。(ちょっと劇評とは趣が変わる気がします

憲法改正には賛成の僕でさえも…

憲法の条文の言葉の美しさをあらためて感じることが出来ました。
美文と言うよりも高邁かつ理想的なその思想は、やはり我々に取って欠くことができないものだなと感じました。
もともと僕の中の改憲に関する思想もそうだが、前文だけはけして変えてはいけないのだと改めて思いました、
僕の改憲論はあくまでも、前文の精神を受け継ぎつつ、内容を微修正する、そういうものであるべきだろうと思っています。

共感したこと

人は法の下で、自由かつ理想を追い求め、精神的な豊かさ目指すべき。

矛盾するようだが、その豊かさを追うために邪魔になる法律に縛られるのは、間違い

共謀罪も安保法制も、日本国憲法に違反してるのだから、反対しても無意味。もし、その条文に違反すると言うことで捕まるならば、法廷は憲法のもとにそれを否定するはず…なるほど。勿論、現保守政党の憲法の解釈改憲は保守派を自認する僕でも、やりすぎかなぁと想うところありましたが、そう考えるとちょっと気が楽。(だから、余計に改憲論は慎重に)

ちなみに、安保法制については、憲法のほうを修正するべきと思っています。詳しくは、以下の書評を読んで下さい。

大麻合法化

日本を含むアジア諸国は、大麻を初めとするドラッグに対して大きな拒否反応がある。

しかし、各国での合法化の流れや医学研究も活発に行われているにもかかわらず、日本ではタブー化されて十分に議論されていないように思う

キチンと客観的な評価研究を行っても良いのではないか

今、思い当たったが、効用があるかもしれないのにタブーにして研究しない感じは、西欧がキリスト教の教義にもとると感じて、未受精の卵細胞を活用したES細胞の研究に本気で取り組まず、そういうタブーがない韓国、日本あたりが研究に邁進したのと逆の現象なのかも知れない。

似たような事を以下の記事でも書きました。

役者は観客に媚びるべきか、自分の演技を貫くべきか

演劇も、観客に受け入れられる為に、自らの演技の限界の言い訳にしていることの指摘は鋭いなと思いました。

考えを変えたこと

慰安婦像の問題は、韓国の政府の混乱もあり、騙されたという印象を我々は持っている。(僕も思っていました)

しかし、慰安婦像を作り釜山の日本総領事館の前に置いたのは韓国政府ではなく民間団体。

それを政府が規制することは韓国民の表現の自由を政府が規制することを期待する行為であり、民主主義の根幹を揺るがす事態。日本が、大使召還など政治的圧力をかけるのは、ちょっとやり過ぎというのは一理あると思いました。

中国が、一民間企業のアパホテルに対して、表現の自由を規制するべく色々圧力をかけてきているが、他所の国のことをとやかく言えないと自戒しました。

従軍慰安婦問題については、同じ土俵に載る必要はもうないなと思う。

慰安婦への賠償は終わったんだし、相手にしなければいいこと。海外に在住の日本人にとっては、色々面倒なのだと想うし、そういう事で在外邦人が苦労するのを終わらせたいという日本政府の思いもわかるが、民主主義の基本を犯す行為はやはり説明がつかない。

共感できなかったこと

新劇と商業演劇の定義の違いは、本当にそうかなと、???が、頭に渦巻きました。 そういう区分け必要?という意味での疑問符です。演劇は、大小問わず観客からお金を取って見せている以上は、興行であり、まずは観客を楽しませること、エンターテイメントであることが第一優先でしょう。エンターテイメントに徹したいなら商業演劇で、新劇は左翼思想(革新思想)を持つべき的な議論は途中でついていけませんでした。
別に保守思想でも良いわけだし、なんか政治思想と演劇ジャンルが紐付けられる議論は、???でした。(ま、この芝居の主張というよりも、出演者の主張なので、聞き流せば良いのだと思っていますが)

こんな色々な事を考えさせられる芝居も久しぶりにみました。たまにはいいなぁと思いました。

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