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劇評

[劇評]燐光群「くじらと見た夢」@座・高円寺1(高円寺)

投稿日:

燐光群の「くじらと見た夢」は、いつものように膨大な取材に裏打ちされた情報量に富む考えさせられることが多い舞台でした。一方で、群像劇であるが故か、個々のキャラが立っておらず、スタッフワークも地味だったこともあり、観劇後の高揚感を得ることができませんでした

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劇団 燐光群
題名 くじらと見た夢
公演期間 2017/11/172017/11/26

坂手洋二

演出 坂手洋二
出演 佐々木梅治:比嘉忠栄(比嘉家を遠い昔に出奔。くじら取り漁師)
東谷英人:草野智(基地反対派の本土人)
Benjamin Bearsley:ロバート・ケイン(くじらとイルカの悲劇を終わらせる会の会員)
樋尾麻衣子:桐野アン(ロバート・ケインの同僚)
武山尚史:屋良透(名護西岸の漁師)
鴨川てんし:上原信徳(名護西岸の漁師)
中山マリ:上原カメ
中瀬良衣:昭島千恵子
田中結佳:上原教子(基地反対運動を行う地元の娘)
南谷朝子:新城ふさ(歌う市長)
杉山英之:比嘉清昌(比嘉家の息子 兼業漁師 豚の飼育もしている)
橘麦:比嘉佳子(比嘉清昌の義理の母 比嘉亮春の後妻)
山村秀勝:上原敏志
大西孝洋:比嘉清昌(比嘉家の当主。いるか漁師)
川中健次郎:平良勇(いるか漁師)
猪熊恒和:屋良清治(兼業漁師 市役所勤務)
秋定史枝:屋良あずさ
宗像祥子:比嘉うみ(清昌の妻。息子が6歳になる)
菅原はなえ:円城寺あや(野生動物専攻の大学教授 忠栄の娘)
劇場
座・高円寺1(高円寺)
観劇日 2017年11月26日(マチネ)

16年ぶりに伺った舞台

坂手さんの作品はいつも考えさせられるテーマが扱われていることが多いです。最初の出会いは舞台ではなく、戯曲でしたが、時代や社会に対しての独特の視点を元にした世界観に魅了されました。後年、舞台化された作品を見ることができました。以下の「トーキョー裁判」です

[劇評]燐光群「トーキョー裁判1999」@シアタートラム

その後も、足を運びましたが、最近はとんと観に行っていませんでした。今回は、出演者の方からのお誘いをいただき本当に久しぶりに劇場に観に行きました

ちなみに、この春再演された「くじらの墓標」は、BSプレミアムでの放送を録画でみていました

情報量が多すぎる、情報密度が低すぎる

上記の通り独特の世界観と社会に対する坂手さんの視点は好きなのですが、今回の舞台はひときわ情報量が多く世界観を感じる以前に情報の洪水に溺れました(苦笑)

坂手さんがパンフレットの寄せた文章に以下のような一節がありました

おそらく今までで一番多く溢れる情報を相手に、井上ひさしさんがよく言っておられた「小説はどんなに長く書いても許されるが、戯曲はどうしても二時間半に収めなければならない」という困難が、立ち塞がった

わかってんじゃないですか!。収まりきってません!!

この作品の前作にあたる「くじらの墓標」は、失われていく捕鯨文化に焦点が絞られていました

しかし、今回はその舞台を沖縄に持ち込むことで、米軍基地移転問題が背景に盛り込み、「ザ・コーブ」に象徴される国際的な捕鯨反対運動をも取り込んでいます

捕鯨・漁業を守る人々が、基地移設のための保証金をもらっているが、漁業組合が同じであっても別の海で漁業をする人々も巻き込まれれる話

鯨とりに憧れながらも、鯨とりができなくなった漁師が沖縄を離れた話。

今でも、イルカ漁を続ける漁師たち

基地反対派、漁師を継ぐことに抵抗感を持つ若者

イルカと同一視される女たち、イルカ漁・くじら漁の近現代史

こんな情報が、2時間15分休憩なしの物語に詰め込まれた結果、上記の世界観を示すキーワードの発表会となってしまっていました

その上、沖縄を舞台にしたがために、うちなー(琉球方言)と大和言葉(標準語)と英語を喋る俳優が舞台上に存在し、翻訳的な重複がすごく多くて、たくさんの台詞が飛び交う割に、正味の情報があまり客席に伝わってこない舞台でした

俳優は僕の中では好き嫌いが別れました

南谷朝子さんは、久しぶりに見ても変わらぬ存在感

南谷朝子さんは、この劇団で見るのは初めてですが、10年程まえに数度見たことのある役者さんでした

実は、名前だけでは思い出せてなかったのですが舞台に出てきた瞬間に思い出しました。立ち居振る舞いがきりりとしていて存在感のある役者さんでした

前に見たときも、立ち居振る舞いに感心させられていました

[劇評]劇団桟敷童子「海猫街」@ベニサンピット

前に見た時は、堂々たる女社長役だったのですが、今回は庶民なのねとか思っていたら、「市長」役。やっぱそういうのが似合うのでしょうか

歌がうまいなぁと思いましたが、歌手としての活躍もされていることを今回はじめてしりました。

東谷英人さんの溶け込んでない感は、演技なのか素なのか

Dull-Colored-Popの舞台で見たときの「怒りの教師」とは打って変わって冷静かつ温和な役。数少ないやまとんちゅーという設定だったせいか、あまり周りの役者さんと絡む部分がなく、物語全体としては置いていかれている所が多いちょっと損な役回りだったと思います
前回舞台で見た時に比べると印象が弱かったのは、本人のせいというよりも上記のような役回りのせいだったのでしょう

[劇評]DULL-COLORED POP「演劇」@王子小劇場

宗像祥子さんは、主役でもよかったのに…

清楚な感じの女優さんですね。初めて見ましたが印象に残る役者さんでした。

物語の一部を牽引し、最後にかなり重要な役割を果たす割には、出番や台詞が少なく、もったいないなぁとおもってました

円城寺あやさんは少し疲れていたのでしょうか

実は劇場に伺うまで、今回の舞台に円城寺さんが出ているとは知らなかったのですが、出ると知って出番を今か今かとまっていました

夢の遊眠社が演劇原体験の僕としては、ある種神格化さえしている女優さんですが、今回は出演時の印象が弱かったです

若干声もかすれ気味で、楽日ということもありパワーダウンしていたのかもしれません

登場人物のだれも成長しない物語

正直、坂手さんはストーリーテラーというよりも、抽象画家のように舞台を作る傾向があるので、目の覚めるような展開を期待してはいけないのだとはおもいます

それでも、主人公が誰だが焦点を絞りにくいこの話だと、見終わった後のカタルシスを得にくいなと改めて実感しました

かつて読んだ小説の書き方の本ベン・ボーヴァ「SF作法覚え書」の中にある以下のような一節があります

フィクションというものは、すべて登場人物の上になりたっている。<中略>実際、短編小説はつぎのように定義することができるだろう「一人のキャラクターがあるひとつの問題を解決しようとすること」−それ以上のものでもなければ、それ以下のものでもない。

短編小説に限らず、物語の基本なんだと思います

そして、今回の舞台上では、この問題を解決しようとする一人のキャラクターがいません。

あるいは、みんながみんな別の問題を解決しようとしすぎていて、誰も何も解決できていない状態でした

この辺が、見終わった後のスッキリしないしこりが心に残る原因だとおもいました

確かに、提起している問題の内容(米軍基地の移転問題にしろ、イルカ漁の現実にしろ)は、簡単に解決策を人間が出していいはなしではありません。

それで、最後はイルカが当面の問題を解決してくれるというラストシーンになるのはある意味しょうがないのかもしれません

でも、結局、それって一時的な解決でしかない事を考えると、ちょっと納得感がありません

女がいるかになる演出いるか?

いや洒落ではありません(^_^)

途中、いきなり幻想的なシーンが挿入されて、女性がイルカになるシーンがあるのですが、必要性があるのかと理解に苦しみました

海のイメージを持ちにくい(でも海という設定の舞台)セットの中で想像力を膨らませていた観客を裏切ったような気がします

スタッフワーク力下がった?

装置が使いにくそう

奥行きのある舞台でありながら、堤防を舞台全面に作ったゆえに、演技できる空間がとても狭かったのも、残念でした

僕の座席は最前列だったのでまだしもですが、客席の後ろの席は芝居が相当みにくかったのではないでしょうか?

ラストシーンの漁船の造形もそうですが、ちょっとちゃちい感じの装置が散見されており、十数年前に見に行った時の舞台装置の壮大さと比較して少々拍子抜けしました

海のシーンしかも沖縄の海のシーンでありながら、開放感がなかったのは残念でした。

沖縄なのに、円城寺あやさんがトレンチコートを着ているのもちょっと違和感がありました

トレンチコートとか、沖縄で着る季節が思い浮かびません….

ううう。褒めてない。

繰り返しになりますが、散文的な台詞回しや抽象絵画のようなシーンは好きです。ただ、今回はそれさえも台詞(≒情報)の洪水で押し流され、観劇後のカタルシスを得にくい舞台になってしまっていたのが残念でした

以上 劇団燐光群の「くじらと見た夢」の感想記事でした

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