[劇評]こまつ座「きらめく星座」@紀伊国屋サザンシアター(新宿)

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こまつ座の「きらめく星座」は、戦前の暗くなる世相の中で、歌謡曲と笑いを通して庶民の生活を映し出す舞台。演劇賞を受賞した秋山菜津子さんが従来のイメージと大きく異るコディエンヌぶりを発揮して舞台を引っ張るのが印象的でした。こまつ座でスタンディングオベーション初めてみました
劇団 こまつ座
題名 きらめく星座
公演期間 2017/11/052017/11/23

井上ひさし

演出 栗山民也
出演 秋山菜津子:ふじ(オデオン堂の後妻。元松竹歌劇団)
山西惇:源次郎(みさをと結婚した傷痍軍人)
久保酎吉:小笠原信吉(オデオン堂主人。みさをと正一の父)
田代万里生:正一(オデオン堂長男 砲兵部隊からの脱走兵)
木村靖司:権藤(正一を追う憲兵)
後藤浩明:森本(オデオン堂に下宿する音楽家)
深谷美歩:みさを(オデオン堂長女)
木場勝己:竹田(オデオン堂に下宿する広告文案家)
岩尾海史:出征が決まった青年
阿岐之将一:出征が決まった青年
劇場
紀伊国屋サザンシアター(新宿)
観劇日 2017年11月23日(マチネ)

軽い歌謡曲による暗い世相と人生

今年は、たまたまこまつ座を二作見たが、どちらも前の戦争に翻弄される庶民の物語(円生と志ん生を庶民とすればだが)

世相を映してか何故か重く印象が残る

こまつ座の意図というよりも受け取るこちらの問題かもしれませんが

本作は、太平洋戦争が始まる直前の浅草のレコード屋を舞台とした家族劇

まだ、惨状はひどくないが少しづつ世相が暗くなっていくのが台詞の端々で感じることができる

そんな中で、役者さんの演技がどなたも素晴らしかったです

秋山菜津子さんの演技が良いという話は聞いていましたが、イメージしていた以上の熱演。どちらかといえば、クールビューティーなイメージでしたが、今回の舞台ではびっくりするくらいのコディエンヌぶりでした

オデオン堂の家庭の明るさの象徴であり、読売演劇賞受賞納得の熱演でした

ふたりのおじさんの配役の妙

また、久保酎吉さんと木場勝己さんの二人の年配男性キャストの配役も素晴らしかったです

当初見始めた時に、同じようなキャラクターの二人の男性キャラがいることを不思議に思っていました。しかし、この二人のハーモニーがとても心地よいのです

人情に厚い久保酎吉さん演じる信吉と広告文案家なだけに、世の中を少し斜めに眺めて弁の立つ木場勝己さん演じる竹田。二人は時には、対象的にあるときは同じ思いを共有する同士のように共鳴し合い話の厚みを作ってくれます

見終わってみればどちらが舞台上にいなくても成り立たないキャラクターでした

対象的な兄弟の確執と和解

軍人である山西惇さんと脱走兵のちょっと軟弱な田代万里生さんのやりとりも面白かったです

特に山西惇さんがすこしづつオデオン堂の家族に溶け込んでいった様は、演技もそうですが、脚本の妙だと思いました

そして、国家観/戦争観が真逆の二人が、最後のシーンで通じ合う「庶民の目線から語られる戦争」は、印象に残る台詞でした

国家に大義が不要とは思いませんが、その大義の影でその大義を台無しにする人がいる。庶民の目線から見た時それがそのまま大義そのものまでが疑わしくなっていく。悲しい現実を示すエピソードでした

「人間」のコピーライティングが印象に残りました

みさをが、未来に絶望して自らの子供を生みたくないと悲嘆に暮れる時に、広告文案家(コピーライター)の話す台詞が重いです

「4000億の公正を巡る4兆の惑星に水惑星が生まれる奇跡、清明な生まれる奇跡、人間がそして今の我々が生まれる奇跡」

(台詞はもっと長かったです。正確に記憶しておりませんm(_ _)m)

どこかの国会議員が表彰するとか言っているよりも、子供が生まれることに対する奇跡を伝えることの方が少子化対策になりそうです

長崎、満州とバラバラに散る家族の末路が、忍ばれて辛い

ラストシーンにて、バラバラになるオデオン堂の面々。太平洋戦争前夜に語られる彼らの行先は、やがて悲劇が訪れる地名

明るく笑う彼らの行末が、観客の中だけに落とす影

脚本の巧みさは、これに限りません

台詞と歌の選択が上手く既成曲を使っているにも関わらずミュージカルのようなカスタムメイドの曲のように歌われている場面と出演者の心情を映し出します

当時の馬鹿げた言葉狩りの台詞の中に現在の言葉狩りが潜む

途中で、軍人の山西さんが外来語を否定するシーンがあります。コーヒーとかジャズとかそういったものを否定する戦前から戦中にかけてドラマの中では見慣れたシーンです。その中で、山西さんが、コーヒーを否定するあまりお茶を褒めるのですが、その時に木場さんが「それもチャイナから来たものでは?」といいます。

これで、黙り込む軍人。

でも、このシーンちょっとだけ首を傾げてみてました。なぜ、山西さんは「チャイナ」という言葉に反発しなかったのでしょうか?そもそも、戦前にお茶の発祥地を「チャイナ」なんてハイカラな言い方をしたでしょうか?

シナという言葉を言い換えたのだと思います。馬鹿げた戦前の言葉狩りを皮肉るシーンに現在の言葉狩りが潜んでいる事に皮肉な現実を垣間見た思いでした

楽日だったこともあるかもしれませんが、カーテンコールはスタンディングオベーションでした。僕はこまつ座の舞台で初めてスタンディングオベーションに出会いましたが、自分も思わず席を立って舞台上に拍手を送った出来でした

以上 こまつ座の「きらめく星座」の感想でした

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