[劇評]スタジオライフ「アドルフに告ぐ」@紀伊国屋ホール

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原作の良さもあると思うが、2時間20分の長さをあまり感じずに物語に没頭できた舞台であった。カウフマンが少しづつ人間として壊れていき、最期に全てを失う。そういう時代の悲しさが伝わってきて、ジーンとした。

劇団 スタジオライフ
題名 アドルフに告ぐ(ドイツ篇 MG)
公演期間 2015年7月11日〜2015年8月2日
出演 松本 慎也、緒方 和也、曽世 海司、山本 芳樹、船戸 慎士、宇佐見 輝、藤原 啓児、大村 浩司、鈴木 翔音、若林 健吾、倉本 徹、山本 芳樹、松本 慎也、藤波 瞬平、吉野雄作、江口翔平、澤井 俊輝、深山 洋貴、鈴木 智久、久保 優二、藤波 瞬平、深山洋貴、牧島 進一、大村 浩司、倉本 徹、深山 洋貴、甲斐 政彦
劇場 紀伊国屋ホール
観劇日 2015年7月18日

先日、神奈川芸術劇場で上演のあった「アドルフに告ぐ」は、ちょっと遠すぎて見に行くのを断念したのですが、幸運にも、都内で同じ題材の舞台があると知り、見に行くことにしました。
スタジオライフは、2005年の「白夜行」以来の2度めの観劇です。

原作に興味を惹かれて観劇に伺ったのも、前回と同じです。アドルフに告ぐは、スタジオライフでは、既に2006年に上演されていた作品のようで、今回は再演です。とはいえ、再演に伴い、3つのバージョンの作品が作られ、その3演目を交互に公演するというスタイル。練習大変だったんだろうなとと他人事ながら感心。僕はその中で、ドイツで起こったことを中心に描かれたドイツ篇を見ました。(主役カウフマンを松本 慎也さんが演じるMG版)

二度目ですが、女性役を男性が演じるのには、大分なれて、物語に集中することができました。

憎しみ合うことなど夢に思うことのなかった二人のアドルフが、もう一人のアドルフが巻き起こした悲劇の中で引き裂かれ、最期には憎みあいの死を迎える。

胸に迫るシーンがたくさんありました。何よりも、カウフマンがそのナチスへの忠誠心を試されるために、親友の父親を射殺することによって人格が壊されていくシーン。絶叫が耳に残りました。

また、物語終盤になってヒトラーが亡くなったことも知らずに、秘密文書を手に入れて狂喜する姿とその直後に訪れる絶望。その姿が哀れで、不覚にも涙しながら見ていました。

狂言廻しの峠草平役の曽世さんは、引いた演技が多いものの抜群の安定感がありました。ヒトラー役の甲斐さんも、イメージぴったりの演技でした。ヒトラーをある意味カリカチュア化していても存在感のある演技でした。

似ているといえば、アセチレン・ランプの倉本さんも、イメージぴったりでした。ランプは、手塚作品の常連なので、他のキャラクタに比べて原作の絵の印象が強かったのですが、出てきてすぐわかるほどの完全コピー状態でした。

総じて、物語のスピード感も高く、2時間20分の舞台はまったく長さを感じることがありませんでした。このくらいの長さの舞台だと途中に休憩が欲しくなるものですが、今回の作品は、最期までつっぱしってくれたのが功を奏したように思いました。

 

 

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