[劇評]ラッパ屋「特別な情熱」@紀伊國屋ホール(新宿三丁目)

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まあまあ年齢のいった劇団員が、高校の制服姿で高校時代から老年までの半生を演じる。その事前情報だけで、笑う気満々で紀伊國屋ホールに向かいました。ところが僕より10歳ほど上の世代の半生は自分の人生と繋がる部分が多く、結局は真面目に自分の半生を振り返りながら、悲喜こもごもをたくさん垣間見ることになりました。同じ俳優が女子高生と定年過ぎの老年をやるというのは、映画でもドラマでも難しい。舞台だから見られるエンタメだと思います

劇団 ラッパ屋
題名 特別な情熱(第51回公演)
公演期間 2026年7月22日2026年7月28日

鈴木聡

演出 鈴木聡
出演者 配役名(1975年 都立武蔵玉高校 実験部員の学年)
木村靖司:早乙女滋(三年)
松村武:金子清隆(三年)
宇納佑:原田直樹(三年)
大草理乙子:東智子(三年)
福本伸一:手島徹(二年)
熊川隆一:寺山文也(二年)
中野順一朗:小野裕介(二年)
山像かおり:山村久美子(二年)
谷川清美:西川洋子(二年)
岩本淳:松井実(一年)
浦川拓海:野口修(一年)
武藤直樹:今泉拓也(一年)
弘中麻紀:馬場恵子(一年)
岩橋道子:星野淳子(一年)
林大樹:斎藤和也(1999年 二年)
上大迫祐希:八木香織(1999年 二年)
劇場
紀伊國屋ホール(新宿)
観劇日 2026年7月26日(ソワレ)

制服姿で半生を演じる、という事前情報だけで

今回、事前に仕入れていた情報はほぼそれだけでした

まあまあ年齢のいっている劇団員のみなさんが、高校時代から老年に至るまでの半生を演じる。しかも高校時代は制服姿で。
そりゃ笑うところでしょうと、笑う気満々で客席に座りました

ところが、描かれるのが僕より少し上、たぶん10歳くらい上の世代の半生なんですね
そうすると、笑いに来たはずなのに自分の半生のほうを振り返ってしまう。悲喜こもごもの人生をたくさん垣間見ることになりました(笑う気満々だったのはどこへ🤣)

1997年の「鰻の出前」から、ほぼ30年

僕がラッパ屋を初めて見たのは1997年だと思います。THEATER/TOPSでの「鰻の出前」でした

ということは、ほぼ30年見続けている劇団ということになります
しかも今回、当時出ていた役者さんが何人も出演されている。宇納佑さん、木村靖司さん、福本伸一さん、熊川隆一さん、武藤直樹さん、大草理乙子さん、弘中麻紀さん、岩本淳さん….改めて並べてみると、これはもう座組がそのまま30年分歳を取ったということです

その1997年に主役をやられていた宇納さんも、もういいお年になられていて(記憶に頼っているので、正確ではないかもしれません)、そこだけで感慨深いものがありました

去年の公演を見逃してしまったので、僕にとっては少し久しぶりの観劇です。前回はこちらでした

ここからはネタバレします

同じ俳優が女子高生と60代を演じるということ

ほぼ主役といっていい西川洋子役の谷川清美さんは、ラッパ屋でも何度か拝見していますし、他の舞台でも見たことのある役者さんでした

その谷川さんが、今回は高校生の役から、老後というか亡くなる直前の60代近い役までを、本当に一貫して一人で演じられていました
高校生、20代、30代、そして60代という年齢の変遷を、きちんと演じ分けられている

これは映画でもドラマでも難しくて、舞台演劇だからこそ見られるエンタメだと思います。最終的に彼女がこの物語の主人公だったことを考えると、素晴らしいキャスティングでした

特別な情熱に突き動かされる女子高生と、それを記録することを決意する脇役的な女子高生。この二人がどう幸せをつかんでいくのかを、ハラハラしながら見ることができました

声だけで分かった山像かおりさん

そのお友達役の山村久美子を演じた山像かおりさんは、僕にとっては声さえ聞けば思い出せる方でした

アメリカのドラマ「ER」に一時期すごくハマって2周くらい見ているので、スーザン・ルイス役の山像さんの声は本当によく覚えています
なので、舞台上で声が聞こえてきた瞬間に「聞き覚えのある声の方が出ているな」と思いました

申し訳ないことに、お顔のほうは今回あらためて認識した感じだったのですが🙇‍♀️
声を聞いてすぐに馴染みのある山像さんだと分かったのは、今回の舞台での嬉しい驚きのひとつでした

昔からの役者さんが、それぞれの役を

他の役者さんについても、本当に前から見ている方ばかりでした

木村靖司さんは相変わらずやんちゃな役をされていますし、福本伸一さん映画好きが昂じた苦労人という役。それぞれの役を魅力的に演じられている。このあたりはもう安心して見ていられます

なかでも良かったのは岩橋道子さんでした
僕が見る舞台では、岩橋さんはいつも不幸になっていく役が多かったんですよ。それが今回、最終的には幸せになる役だったのは本当に良かったなと思いました(僕が勝手に心配していただけですが)

銀座のお姉さんにクラゲを売る商売

ストーリーの中で気になったのは、バブル期に銀座のお姉さんたちにクラゲを売るという怪しい商売が出てくるところです

きっとあの頃は、そんな怪しい商売がいっぱいあったんだろうなと思いました
ちょうどバブルの終わり頃に社会人になった僕にとって、バブルの伝説というのは少し追いつけなかった時代でもあります。だからこそ、聞いていて楽しいお話でした

「平凡なんてない」

松村武さんが演じる金子清隆の、世界中を旅して回るヒッピーのような生活も、きっとこの時代には本当にいた人たちなのだと思います

そういった生活に憧れつつも、それが本当に正しいのか。物語の終盤で「平凡なんてない」という言葉が出てきたのがすごく印象的でした

平凡からかけ離れたところにいた金子清隆や西川洋子が、人生の紆余曲折を経て結局は平凡に憧れていく。そのプロセスがすごく面白かったです

1999年にIT長者は、ちょっと早くないですか?

武藤直樹さんが演じる今泉拓也が、1999年の時点でIT長者になっているという話について

マイクロソフトはともかく、え、この頃のAmazonってそんなに株価上がってましたっけ。Appleもこの頃はまだ経営が危なかった時期じゃなかったっけ、などと思いながら見ていました

気になって調べてみました。Appleが経営危機に陥ったのは1995年とか1996年くらいで、1997年にスティーブ・ジョブズが復帰して、1998年にiMacが出た。ここらへんから急上昇していったようです

ということは、ここを正確に捉えると、今泉さんという人はものすごい投資家でありギャンブラーだったということになりますね
この時代を経てAppleの株を持ち続けて儲かったのだとすれば、飄々としたキャラクターどころか、相当な博打打ちです
そこまで考えられていたのかどうか。舞台上の今泉さんのキャラクターとは、ちょっとかけ離れた人物像のような気がします

まぁ、突っ込んでいたらキリがないですし、物語として分かりやすく設定したのだろうなと納得はしています😂

若い頃の仲間は、仲間という理由だけで集まれる

最終シーンの「若い頃の仲間は仲間という理由だけで集まれる」というセリフ

最近、同窓会だとかなんとか理由をつけて、いろいろな友達との旧交を復活させつつある自分にとっては、とてもタイムリーな名言でした
笑う気満々で入った劇場で、最後にこのセリフを聞かされるとは思っていませんでした

30年通っている劇団の役者さんたちが、50年分の半生を演じる。それを30年見てきた客席で見る
考えてみれば、こちらもずいぶん贅沢な見方をさせてもらっています

以上 ラッパ屋「特別な情熱」の感想でした

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