小劇場の演劇が食べていける(かもしれない)方法をまとめてみた

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先日、ツイッターを見ていて、女優さんが呟いていたのは、小劇場の舞台をやっていると必ずぶつかる疑問でした

学生時代は、どうして…とか思っていまいしたが、会社員として長く仕事していて、演劇を一つのビジネスとして捉えれば、食えないのは当たり前と気づきました

食えないのは当たり前の説明、プラスじゃ、どうやれば食えるようになるのかを考えてみます

尚、出演者が個人として成長して(例えば、テレビ等の仕事で)食べられるようになるという方法ではなく、あくまでも演劇をビジネスとして成り立たせる(=食える)を目標にします

どうしたら舞台で食べていけるようになるかを考えてたらこんな時間になってしまった

声優もされている女優さん春名春風さんの4/16の上記のツイートに対して、様々なフォロワーの方が、コメントをつけていました

僕自身も、自分が演劇をやっていた頃は、どうすれば好きな演劇(小劇場)で食べられるようになるんだろうと漠然と考えていた時期もありました

就職して会社員になり、会社という仕組みを理解するにつれ、演劇で食べていく=無理ゲーということがよくわかりました ビジネスとして成り立つはずがないのです

例えば、普通の会社が何か製品の企画から開発までの期間に1年かけたとして、その商品が3ヶ月しか販売期間を予定しないなんてことはありません

でも、演劇の場合1ヶ月の練習で公演期間は木曜日〜日曜日の6回(土日は2回公演)公演で終わりというのはザラです

簡単に計算してみました

私自身は、20年以上演劇制作に関わっているわけではないので、以下の試算はあくまで私見です

まずは制作費の総額(ざっくり)

出演者が5名、スタッフが5名(演出、脚本家、音響、照明、美術、衣装、制作 …いくつか兼務として)が、1ヶ月(20日間、8時間/日)で稽古及び制作

公演期間は5日(仕込みゲネを1日、4日本番(木、金、土、日 土日は2回公演で計6回公演)

劇場は、100名のキャパ。5日間借りる費用が25万円

練習場所は、色々でしょうが1日2万円かかると考えます

この条件で試算してみます

東京都の最低時給は、958円ですが、計算を簡単にするために時給は1000円として計算すると、人件費は10名×25日×8時間×1000円=200万円

劇場費25万円、練習場所は2万円×20日で40万円

衣装、美術は想像もつかないので、35万円くらい

締めて300万円の経費がかかります

次は売上

100名のキャパの劇場で、6回公演ならば完売御礼で600人の観客が来ます

単純に計算すれば、300万円÷600=5000円

即ち、チケット代が5000円にしないと上記の制作費を賄うことができません

チケット代5000円の舞台は、観客にとってはハードルが高い

少なくとも僕はそう感じます

また、演劇情報サイトのCorich舞台芸術にも、公演の一覧を見る際に5000円以下のチケット代の舞台を見ることができるようになっていて、結構な数の舞台がその一覧に並んでいます

上記の制作費の試算も最低限(そもそも最低時給近くで時給を計算すべきか?とか、役者5人、スタッフ5人という根拠はかなりギリギリだと思います)であり、一方で多くの公演は必ずしも全回満員御礼とはなっていないことを考えれば、その5000円であっても原価割れ(赤字)になっている公演が多いことを示していると思います

劇場費や、練習場所といったどうしても出費しなければならないものを除けば、おそらく人件費を削っているということです

だから、小劇場演劇を中心に活動している方々は、その赤字をかぶってバイトで食いつながなければならない状態になっているのです

演劇で利益を出す方法は色々考えられてきている

演劇は、もうからないビジネスなのか?もちろん、そんなことはありません

他のビジネスと同様に、工夫をすることで黒字化できる方法はたくさんあります

以下、ビジネスで利益をだすために行われている方法を例にとりながら、演劇に援用されている例をあげていきたいと思います

海外で実績のあるものを持ち込む

FacebookやTwitterなど日本で展開されているサービスの多くは海外製です。海外で成功しているサービスや製品を国内で展開するのはビジネスを成功させる上での一つの定石です

東宝や劇団四季がやっている海外で成功しているミュージカルなどを国内で上演するモデルは、このようなビジネスの手法に似ています

一から舞台を作る事による制作費の高騰を抑え、できあがる作品の品質が維持しやすく、観客も海外での成功の実績を根拠に集まりやすいという意味で、コスト圧縮及び売上拡大に繋がる方法です

劇団四季は、かつてはアングラ劇を上演する劇団でしたが、この方法を取ることで劇団経営が安定したのは有名な話です

成功したものを再販

当たり前ですが、企業は売れている製品は同じ製品を売り続けます。映画などでも、成功した作品のリメイクや続編を作るのはこれまた定石です

これにあたるのは、演劇の世界では過去作の再演にあたると思います

再演は、上記の海外作品の国内公演と同様、制作費を抑えることができ、観客動員も見込みやすい方法です

僕が見たところ、成長する劇団の多くは再演作品と新作を上手く組み合わせることで年間の公演回数を増やし(=販売機会を増やし)て経営を安定させているように思います

コラボレーション

テレビCMをみているとスマホゲームは、本当にいろいろなものとコラボしながら販売しているのがわかります

舞台も、2.5次元といわれるアニメ/漫画/ゲームを題材にしたステージが量産されています

これは、コスト圧縮というよりも、今まで舞台に興味を持っていなかった人を劇場に足を運ばせるマーケティング効果を狙ったものです

アップセル

ファーストフードで「一緒にポテトはいかがですか?」という、ついで買いを狙うあれです

演劇でいえば、劇場で売るパンフレットやDVD、台本販売等がそれにあたります。正直、どこまで劇団の収支に貢献できているか傍目には謎ですが

クロスセル

A商品を買ってもらったお客様にBの商品をすすめるというのも、ビジネスの現場ではよくあるマーケティング手法です

演劇祭のように複数の舞台を同じ場所で同時多発的に行う形式も、他の劇団を見に来た観客が、ついでに別の舞台に興味を持つというきっかけになるという意味で、クロスセルの手法に近いかもしれません

但し、公演時間などが同じような時間に行われることから、同日に複数の舞台に足を運ぶというのは難しく、工夫の余地はあるかもしれません

地方展開

東京で成功したモデルを地方に展開するのも、ビジネス拡大の基本です

こういうと、演劇でも地方公演を真っ先に思い浮かべるかもしれませんが、マーケティングと言う意味ではもう少し工夫した例があります

今は、もうなくなってしまいましたが、「ふるさときゃらばん」という劇団は、地方に行ってその地方の話を地元の方への取材を元に作り上げ、普段お芝居を見ない人に劇場に足を運ばせるという手法で一躍脚光を浴びました

また、上記のコラボレーションにも近いですが、秋田を拠点に活動するわらび座も、たざわ湖芸術村という温泉施設もある広大な敷地にあるわらび座劇場で、温泉+演劇という組み合わせで売り込んでいます

僕も、2年前にわらび座劇場に訪れましたが、上演されている舞台も秋田を舞台にしたお話で、地元の方がたくさん劇場に訪れていました

時間帯を変える

24時間営業のスポーツジムや、深夜営業の美容室や歯科医というのはニッチな顧客層を開拓するというのでよく見るアプローチです

演劇では、朝劇という試みが試されています。私も昨年見ましたが、良い試みだと思いまいした

随分昔ですが、自由劇場が深夜に開演するという舞台をやったこともありました(確か23時開演)。当然そのまま朝まで観劇仲間と飲む他ありませんでしたが、例えば、平日の遅い時間の舞台というのもあって良いように思います

時間を遅らせて売る

なんか表現が変ですが、映画なんかは最近は映画館での興行収入のみでは既に成り立たず、DVDでの売上まで見込んで制作費を計算しているそうです

演劇でDVD販売されるのは、かつては商業演劇に限られていましたが、最近は動画配信の「観劇三昧」のようなサービスで、上演後の作品が利益を上げ続けるモデルができ始めているかもしれません



これから考えられるビジネスとして成立させる方法

上記の多くは、小劇場というよりも商業演劇が主に活用してきたビジネスとして成り立たせてきた方法です

しかし、小劇場の舞台制作にも活用できる例はあるように思います

例えば、コラボレーションという手法でも、飲食店とのコラボレーションによる演劇の制作はマーケティングの手法としてありかもしれません

また、地方展開のところで書いた地元民に取材して公演の制作に潜在的な観客を巻き込むという手法は、最近だとクラウドファウンディングのように舞台制作に少額のお金を出してもらうというのも、そのお金よりもお金を出したことによる参加意識がマーケティング活動に繋がるかもしれません

まとめ

演劇は、最初に書いたようにそのままだと非常にビジネスとして成り立ちにくい活動で、結果として食べられないのが当たり前になっていると思います

ただ、その現場にいる人がそれを当たり前として受け入れるのと、そこから這い上がろうと色々工夫をするのとでは自ずと結果がことなってきます

春名さんのツイートへのコメントの中には、「芸術活動だから」「やること自体を楽しんでいるんだから」その活動で食べていくのを諦めろ的なコメントもあったのですが、できれば色々な試みを試していくことで、「食べていけるようになる」ことにこだわって行ってもらえたらなと思いました

ちなみに、演劇の世界とビジネスの世界で考え方が違う事を元にした小説で、有川浩さんの以下の小説は両者の立場がなんとなくわかる身としてはとても面白かった本でした

既に2巻まではでているこのシリーズ。完結していないのが残念です

追伸:一度、この記事を公開してから気付きましたが、まったく同じテーマで4年前にも記事を書いてました(汗)

完全に忘れてました…

なんか似たような結論になっている気がしますが、それでもこの記事とはまた違う事を書いているので、そちらも良かったら読んで下さい

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