[書評]有川浩「シアター!」

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■有川浩さんの作品は、初めて読みました。

この小説は、有川浩さんの2009年の作品。人から勧められて読みました。

 

映画やアニメになった図書館戦争のような有名作品があるのに今まで読んだことなかった作家さんでした。気にはなっていたのですが、それ以上の興味もなく…
実は、解説読むまで、作者が、女性であることさえ知りませんでした

この小説は、演劇に関わったことがある僕にすれば、とても親近感の持てる舞台設定で、あっというまに読み終えました

■なかなか、萌えるかつ燃える設定です

金についてはまったく無頓着な劇団員たちとその主宰の兄の工務店の営業のビジネスマンというとりあわせが、絶妙です。一見、兄の職業なんてなんでも良さそうなもんですが、工務店にいたことが、思わぬ形で、劇団の窮地を救うことになります。

その兄が、三百万もの借金をして劇団存続の危機。それを助ける兄貴は、二年以内の返済と返済できなかった時の解散を条件にカネを貸す

兄貴は、それで全力で劇団の運営を助ける。実は、兄弟が反発しあいながら強調する話はとても好みです。

■演劇という不思議な世界への理解が深い

あとがきによると、作者の方は、あまり小劇場の事をご存じなかったところから割りと短期で取材して、書いたとあるが、それにしてはとてもよく小劇場界の内情をついているなあと感心しました。

学生演劇の延長でサラリーマンの当初も芝居をしていて、今はすっかり観客に徹してる私にとって、サラリーマンの司(兄)の考えも、芝居に没頭している巧(弟)たちの考えも、実感できてしまいます

劇団という不思議な団体や、演劇の世界の不条理をビジネスマンとしての感性から否定したり、戸惑ったりする様子がリアルに感じられました。

劇団手伝いつつ、演劇という活動が、ひどく不経済だという司の指摘は、常々自分も思っていたことなので、そういう部分が、司への共感につながります。

多分、年代的にも部長が、一番ちかいのだが‥彼の出番が少ないのがちょっと寂しいorz

■ラノベなの?これ‥

ラノベとそうでない小説の境目が分からない私です。この本は上記のことを除いてもとても読みやすい小説でした。
一章一章の切り替えがしっかりしていてわかりやすい。とても読みやすい文体でした。物語の中に時限爆弾(ハラハラ要素)をセットして、読者を引っ張るストーリー作りは常套手段ですが、見事に嵌められたなと思いました。
読み出したら、止まらないスピード感のある読み応えでした。

■シアター劇団子と沢城みゆきさんがモデル

あとがきと、解説で沢城みゆきさんとシアター劇団子が、発想の原点だと知りました
沢城みゆきさんといえは、声優界にそんなに詳しくない僕でも知っている声優さんです。小説中の千歳と被せると、上手くイメージが膨らみました。

自分も当時大人気だった(らしい)宮村優子さんご出演する小劇場の舞台「八月のシャハラザード」を見に行った時、観客層が、いつもと違うという違和感を体験しましたが、この作品の中での劇場の雰囲気もあんな感じだったのかなと思うとちょっとニヤリとする思いを感じました

[劇評]劇団ショーマ「八月のシャハラザード」@シアターサンモール

■全ての演劇関係者に読んでもらいたい

すべての小劇場演劇関係者に一読を薦めたくなる良書です。が、七年も前の作品。当然、その界隈では既に有名な本なのかもしれません。

それなのに、芝居なんかに興味のなかった春川司が、平日は7時半開演にすべきという判断をしているのにいまだ、平日の7時に芝居やってる劇団が多いのはなんでなんだろう‥‥

この辺、集客のアイデアとしては良いと思うのだけど。

 

 

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