演劇とかの感想文ブログ

演劇感想文リンク(engeki.kansolink.com/)の中の人(清角克由(@kseikaku)のブログ。更新情報やサイト情報だけでなく、管理人の日々の思いも書いていきます。

書評

[書評]学び舎「ともに学ぶ人間の歴史 中学社会(歴史分野)」

投稿日:

麻布、灘等の名門校が採択したら、校長が「政治的な圧力を受けた」と発言し、200通もの抗議の葉書が舞い込んだという歴史教科書。読みもしないで批判するのは嫌だったので読んでみました。思ったほど過激ではないし、慰安婦についての記述も肩透かしに感じるほどさらっとしたもの(というかこの教科書から慰安婦とは受け取れない)。騒ぐほどのものではなく、つくる会の「新しい歴史教科書」と同じく過激な反対意見の過剰さは、読みもしない方の無責任なものであると確信しました。

スポンサーリンク

広告

一時期、ニュースにまでなった教科書。品薄な中ようやく届きました。

ネットニュースを始めとした様々な所で賛否両論あった歴史教科書。読まずに批判するのも嫌で、注文をしたら、なんと1ヶ月待ち。というわけで、随分と時間差がありますが、以下のニュースで話題になった教科書を読んでみました。
【神戸新聞 8/10】

私立灘中学校(神戸市東灘区)が採択した歴史教科書を巡り、自民党の盛山正仁衆院議員(63)=比例近畿=や和田有一朗・兵庫県議(52)=神戸市垂水区=が同校に「なぜ採択したのか」などと問い合わせていたことが3日、分かった。インターネット上でも「政治圧力ではないか」と問題視する声が上がっている

【毎日新聞 8/17】

「学び舎」の教科書を採択した同校に対し、自民党の県議や衆院議員から問い合わせの電話があり、さらに組織的とみられる同じ文面の抗議はがきが200通以上届いたことを明かし、「政治的圧力だと感じざるを得ない」などと論じている。
 今年7月31日未明に放送された毎日放送(大阪市)のドキュメンタリー番組で、匿名で紹介されたのがきっかけとなり、ネット上で拡散したとみられる。今月9日付の毎日新聞朝刊でも和田校長のエッセーが紹介され、灘中を含め「学び舎」の教科書を採択した全国の国立、私立中11校に抗議のはがきが大量に送られたことを報じた。

ちなみに、ニュースの発端となった和田校長のエッセーは以下のリンクから読めます。(PDF形式)
謂れのない圧力の中で

そんなに反日的なの。慰安婦問題への言及とはどんなにひどいの?

結論として、慰安婦問題への言及はびっくりするほどあっさりです。該当ページは、239ページの本文外にある【朝鮮・台湾の人びとと日本の戦争】というコラムの以下の2行程の文章です。

一方、朝鮮・台湾の若い女性のなかには、戦地に送られた人たちがいた。この女性たちは、日本軍とともに移動させられた、自分の意思で行動することはできなかった。

以上です…いや、葉書200枚だすほどのことか?

勿論、朝鮮を植民地と表記したり(併合したのだし、植民地という表現には違和感はあります。)、河野談話を全文載せてたりします。

しかし、河野談話については、きちんと注釈で現在の政府見解も載せていますし、何よりも今でも中韓とのニュースで度々話題になる河野談話を中学の歴史として教えるのは悪いことではないと思います。

でも、概ねそれだけです。その他の部分で言えば、極端に偏った教科書ではないというのが率直な感想です。少なくとも、産経新聞が一部記事で報じたような「どこの国の教科書?」的な表現をこの教科書に当てはめるのは、違和感を感じます。(検定前がひどかったという記事は読みましたが、学校が選定したのは検定後の教科書なので、それを批判しても始まらない)

今の教科書はこうなのかな。読みやすい教科書です。

私自身が、歴史の教科書をちゃんと手にするのは、それこそ30年以上ぶりなので、全体としては非常に読みやすい教科書だと感じました。以下の記事でも言及したことがありますが、世界史と日本史を別々に教えていた学校教育については弊害があると思っていました。ところが、この本は日本史と世界史をとても、うまくミックスした教科書になっています。

見開き2ページでワンテーマを扱う構成、各章毎に世界地図があって、その時の日本だけでなく世界で何が起こっていたかを(どんな国があったか)を一目瞭然でわかる構成など、学生時代に使いたかったなと思わせる作り方がされています。

上記の「謂れのない圧力の中で」のエッセーの中で、和田さんは以下のように述べている。

担当教員たち の 話 で は 、この教科書を編集したのは現役の教員やOBで、既存の教科書が高校受験を意識して要約に走りすぎたり重要語句を強調して覚えやすくしたり しているの に対し、歴史の基本である読んで考えることに主眼を置いた 教科書 、写真や絵画や地図など を見ることで疑問や親しみが持てる教科書を作ろうと新規参入したとのことであった。これからの教育のキーワードともなっている「アクティブ・ラーニング」は、学習者が主体的に問題を発見し、思考し、他の学習者と協働してより深い学習に達することを目指すものであるが、そういう意味ではこの教科書はまさにアクティブ・ラーニングに向いていると言えよう。

アクティブ・ラーニングは、学校教育だけでなく企業教育にも取り入れられている最近の教育方法のトレンド。それを取り入れるための教科書と言われれば、確かにそうかと思わせる。

また、名門校の採択が多かった理由も、同文の中で以下のように推測されているが、それも納得感があります。

逆に高校入試に向けた受験勉強には向いていないので、採択校の ほとんどが、私立や国立の中高一貫校や大学附属の中学校であった。それもあって、先ほどの葉書のように「エリート校が採択」という 思い込みを持たれたのか もしれない 。

扶桑社の歴史教科書のときと同じで無駄な活動

抗議をした方は国を思ってのことだろうが、この教科書も、扶桑社の歴史教科書(借りて読んだ)も、基本的にはまともな事がまともに書いてあるだけで、教科書としてはちゃんとしてい

ると感じました。なんか、こういうことを利用して抗議活動をすること自身、相当バカバカしいと感じました。

杉並であった騒動もバカバカしいと思いました、今回の抗議運動も相当バカバカしい。

杉並区歴教科書採択騒動−wikipedia

こういう抗議活動をする方は、まずものをちゃんと読んで自分の判断をして欲しいとつくづく思いました。

ダブルスタンダード…じゃないよね。

朝日新聞の立場は、微妙でちょっと気になりました。まずは、直近の「学び舎」の教科書に対する記事(AERAだけど)

抗議をした人たちは、教科書の記述を問題視しているが、そもそも学び舎の教科書は、学習指導要領に従って、文部科学省の教科書検定を通ったものだ。文科省の担当者も「通説的な見解のない事項については、通説的な見解がないことを明示して、生徒が誤解する表現をしないよう求めています。検定を通過した時点で、教科書はその基準を満たしている」と話す。

伝聞の形式をとっていますが、教科書検定を通過した教科書は問題がないという立場に立っています。

一方で、「新しい歴史教科書」が検定を通過しようとした時には、以下のような社説を書いています。(ネットから拾ってきましたが、出典を書いてあるので、それほど外れてはいないと思っています)
朝日新聞のダブルスタンダード
(ちなみに、上記のページの主張のダブルスタンダードという意味と、この文章のダブルスタンダードは別です)

歴史教科書――検定の行方を注視する      (2001年2月22日朝日新聞社説)

〜中略〜
文部科学省に提出され、検定を受けている教科書の内容は公表されていない。検定の過程では多くの修正を求める意見がつけられており、最終的にどういう表現で決着するかも明確ではない。
 だが同省は、どの教科書でも、歴史的な事実関係の誤りなどがない限り合格させる方針という。そうなれば、「つくる会」が主導した教科書には、中心メンバーのこれまでの主張が色濃く反映されるだろう。

 「自虐史観」などと攻撃し、過去の植民地支配や戦争を肯定的にとらえようとする。それは、当時の日本の国民の苦しみや、侵略を受けた人たちを無視した一方的な解釈である。こういう歴史観を教室で教えることが、次代を担う子どもたちのために本当によいことなのだろうか。疑問を禁じえない。

文部科学省の検定方針に異議を唱え、教科書を作ったメンバーの思想が色濃く反映されたものであったとしたら、検定を合格していても適切ではないと読み取れます。

個人的には、朝日新聞のダブルスタンダードには、懲り懲りなので今更驚きませんが、2001年に文部科学省の検定教科書に対して疑問を呈した以上、今回同様の行為をした人々を揶揄したり、批判するだけではなく、そう考える立場の方々に対しての理解も表明して欲しいと思いました。(新聞に中立を求めてはいけないと最近は悟り始めた自分もいます。)

広告

広告

-書評
-,


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

no image

【書評】デュランれい子「地震がくるといいながら高層ビルを建てる日本」

外国人にとって日本の満員電車がどんなふうに見えるかは、「地震がくるといいながら高層ビルを建てる日本」という本の中で著者の友達の日本在住外国人が話している部分があって興味深かった。居眠り、「痴漢は犯罪で …

[書評]ダン・シモンズ「ハイペリオン」 

電子書籍化されたのを機に、ダン・シモンズのハイペリオンシリーズを再び読み終えました。 いやぁ、いいですね。電子書籍。あの大部の本(僕は単行本が出た時に、文庫ではなく単行本で読んだ)が手のひらサイズのタ …

【書評】G.パスカル・ザカリー「闘うプログラマー」

最近久しぶりに読んでいる。 仕事が、プロジェクトの終盤で、タフな環境にあると20年以上前のこの話に似たシチュエーションが何度も訪れる。 主役のデビット・カトラーは、今の僕よりもう少し年上、その他にも僕 …

[書評]スティーヴン・バクスター「タイム・シップ」

タイム・シップ〔新版〕 (ハヤカワ文庫SF) posted with ヨメレバ スティーヴン・バクスター 早川書房 2015-05-22 Amazonで購入 Kindleで購入 楽天ブックスで購入 7 …

[書評]ケヴィン・ケリー「<インターネット>の次に来るもの ―未来を決める12の法則」

完全に、ジャケ買いならぬ、タイトル買いしました。非常に示唆に富んだ文章が続くが、情報量が多いので、休み休み読んでしまいました。ワクワク読み進められる本ですが、意外に賞味期限は短いかもしれません。 〈イ …

2017年9月
« 8月    
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930