[劇評]劇団☆新感線「けむりの軍団」@赤坂ACTシアター(赤坂)

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久しぶりに新感線のオールスターキャストが揃った舞台で新感線らしさを堪能。過去のある舞台との共通点を感じつつ、池田成志さんと古田新太さんの掛け合いに引っ張られる時間を忘れる舞台でした

劇団 劇団☆新感線
題名 けむりの軍団
公演期間 2019/07/152019/08/24

倉持裕

演出 いのうえひでのり
出演者 古田新太:真中十兵衛
早乙女太一:飛沢利左衛門
清野菜名:紗々姫
須賀健太:雨森源七
高田聖子:嵐蔵院
粟根まこと:残照
池田成志:美山輝親
右近健一:有玄
河野まさと:目良則治
逆木圭一郎:赤地屋馬之助
村木よし子:お萩/お藤
インディ高橋:澄岡繁蔵
磯野慎吾:仁助
吉田メタル:初山国助
中谷さとみ:千麻の方
保坂エマ:お百合
宮下今日子:長雨
村木仁:油の牛鉄/井塚松琳
川原正嗣:室本一虎
武田浩二:峰角
藤家剛:ヤクザ/家臣/酒場親爺/兵士他
加藤学:ヤクザ/家臣/浪人/兵士他
川島弘之:ヤクザ/家臣/商人/兵士他
菊地雄人:ヤクザ/家臣/商人/兵士他
あきつ来野良:ヤクザ/家臣/木こり/兵士他
藤田修平:ヤクザ/家臣/浪人/兵士他
北川裕貴:ヤクザ/家臣/浪人/兵士他
下島一成:ヤクザ/家臣/浪人/兵士他
鈴木智久:喜作/ヤクザ/僧侶/男衆他
南川秦規:ヤクザ/木こり/僧侶/百姓他
山﨑翔太:助松/木こり/僧侶/百姓他
米花剛史:常吉/ヤクザ/百姓/兵士他
渡部又吁:ヤクザ/家臣/僧侶/百姓他
見目真菜:女郎/百姓/女中/侍女他
小板奈央美:女郎/商人/女中/侍女他
後藤祐香:女郎/百姓/女中/侍女他
鈴木奈苗:女郎/芸人/女中/侍女他
劇場
赤坂ACTシアター(赤坂)
観劇日 2019/8/16(マチネ)

目次

初の中島かずきさん以外のいのうえ歌舞伎

新感線の舞台の中でも、いのうえ歌舞伎と呼ばれる時代物は結構で好きで、わりと足を運んでいるのですが、そういえば中島かずきさんが脚本を書いているものばかりで、今回の<亞>(Alternative)シリーズを見るのは、初めてでした。
結論としては、たしかに倉持裕さんらしさはあるものの、いのうえ歌舞伎のテイストはそのままで脚本家がだれかがあまり意識されないもんだなぁと思ったりしました

ここからはネタバレします

池田成志さんと古田新太さんの掛け合いが面白い

とにかく腐れ縁の盗人とそれを追いかける羽目になる素浪人というコンビが、人質として囚われていた城から抜け出したお姫様を無事に隣国につれていくという話の構造自体はありふれているように思いましたが、兎に角話を引っ張り続ける池田/古田の二人組コンビの掛け合いに終始わらわかされました

思えば、池田成志さんが新感線の舞台に登場しているのを見るのは、2年前の髑髏城の七人の「鳥」以来。あのときも、阿部サダオとのやり取りが広いアラウンドトーキョーの劇場が下北沢になったようなベタなネタの応酬でしたが、今回も二人が話している下りはなんか気の抜ける会話が多く、 緊迫感が着々となくなっていく様がお見事でした

阿部サダオさんとの掛け合いよりも安定感があるように感じたのは、やはり付き合いの長さでしょうか?
いのうえさんの演出で、はじめて池田さんの演技をみたのは多分、1999年のホリプロ主催公演の西遊記


なんと 20年前!!
当時は、あまり感想をしっかり書く気力がなかった頃なので、上記記事はめちゃくちゃあっさりしていますが、 筧さん共々新感線舞台に当時から馴染んでいたような記憶がうっすらあります
(上記西遊記は、元々劇団☆新感線で上演した作品の再演で、今の新感線の舞台を彷彿とさせるスターキャストを新感線の役者陣が脇を固めるというスタイルの舞台でした)
(同時期にみているまねきねこさんの記事によれば、古田さんは幻奘(割と悪役)で、池田さんは美喉王(確か悪役)という組み合わせだったはず)

話の趣向は面白いが、どこかでみたな…

けむりの軍団とは、実はいるようでいない大軍団に翻弄されて、高田聖子がバカ殿河野まことを支える目良家と粟根さん、右近さんコンビの歌って踊る一向宗寺院が疑心暗鬼で潰し合うというストーリー展開。

口先だけで、2つの勢力を翻弄していく古田さんの役どころが肝の話です

この口先でありもしない敵を作り出して仲間割れを促しつつ自分の都合の良い方向に話を持っていく主人公像、どこかで見たよなと思いながら見ていたのですが、途中でやっと思い出しました
現十代目松本幸四郎(当時七代目市川染五郎)さんが、主演した「朧の森に棲む鬼」に似ています

あの主役ライ(=嘘 市川染五郎さんの役)は、舌先だけで周りを翻弄し、陥れ自分が王となる話でした。そういった意味で自分が成り上がる為の、嘘を付く正真正銘の超悪役でした。
今回は古田さんの役は、舌先でありもしない軍団を作り出すあたりは似ていますが、自分のためではなくお姫様を助けるための割と正義のうそという違いがあります

そういった意味で適度の既視感を感じつつも楽しむことができました

久しぶりに新感線の主要キャストが揃った舞台を見たような気がします

豊洲市場前でくるくる回っていた2017年から2018年にかけては、どうしても新感線のみなさんが交互出演になっていたきらいがあり、粟根さんと河野さんが同時にでているのなんか随分久しぶりに見た気がします。古田さんも含めこういうメインキャラクターを新感線が固める舞台も、最近客演陣が目立つ舞台が多かった故に、とても新鮮でかつ懐かしく思いました

特にとぼけたバカ殿河野さんは、今回お気に入りのキャラクタでした

早乙女太一さんがまさかのお笑い担当

過去の出演作もそうですし、テレビのバラエティに出ているときもクールキャラか熱血キャラでどちらにしてもおよそお笑いの要素がなかった早乙女さんが今回はまさかの言語能力が著しく劣った説明下手の剣士というのはちょっと驚きの配役でした
この辺は、中島脚本ではなく倉持脚本であるがゆえの違いだったのかもしれません

最後の見せ場はさすがの殺陣で十分満足しましたが、笑いを取る方は、少々 キレが足りなかったかもしれません

通底するテーマとしての戦いへの虚しさ

ここらへんは中島かずきさん脚本ではあまり感じなかったことでしたが、劇中端々に戦うことの虚しさが語られているのは印象的でした
相手に攻め込まれる前にこちらから攻めようとすることさえも、「弱さ」と定義し、本当の強さをもったものはせめられることを恐れないがゆえに、こちらか攻めていくようなことはありえないというあたりは、現代にも通じるというか今の世相に対しての作者の思いを感じるところでした。

いずれにせよ久しぶりに回らない新感線十分堪能しました。

以上 劇団☆新感線「けむりの軍団」の劇評記事でした

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