[劇評]大森カンパニープロデュース「いきどおり」@小劇場B1(下北沢)

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カンパニーの常連役者が見事に各自の役割を果たし、笑えて泣ける人情喜劇の期待を裏切らない出来。特に、主人公にあたる姉妹を演じた二人の女優さんの演技のうまさと存在感を感じ取ることができた。また、カンパニーのコアメンバーである山口さんと大森さんのシンクロ率の高さに感嘆
劇団 大森カンパニープロデュース
題名 いきどおり
公演期間 2019/11/272019/12/04

大森博

演出 大森博
出演者  山口良一:結城孝史(父親)
 杉本有美:結城優香(姉)
 依里:結城百香(妹)
 伽代子:本谷香奈(おば)
 中原果南:佐伯響子(孝史行きつけの喫茶店主)
 大森ヒロシ:城崎彰吾(葬儀屋専務)
 岩田有弘:野島慎治(優香の元彼)
 横山清崇:池田孝次(百香の元担任の先生)
 佐久間哲:辰巳秦孝(葬儀屋社員)
 坂本あきら:宮下幸造(優香の元上司)
劇場
小劇場B1(下北沢)
観劇日 2019/11/30(土曜日)

大森カンパニーの新作

コント集「更地」シリーズも好きですが、この人情喜劇シリーズもかなり好きな舞台です
初めて出会ったのは、「あまから」という2010年の作品でした( ブログ書いてない….)
あれから、10年。色々な作品は、「あ」で始まる題名から、「い」で始まる題名になりましたが、内容的には常に、笑って泣ける人情ものです。

ここからはネタバレします

シンクロする二人

私が見たすべての作品には、カンパニーの主催者である大森ヒロシさんは勿論、山口良一さんも必ず出演されています
今回は、このお二人が突然なくなって娘を残した父(山口さん)とどうやらイタコの才能がある葬儀会社の社員(大森さん)という役柄で出演しています
そして、後半の山場はまさかの同一人物にシンクロするという場面。
客席には見えているが、舞台の登場人物には見えていない山口さんが話す言葉、口パクで伝える舞台の登場人物には見ている大森さんが伝えるというシーン。

どちらの表情も娘を気遣う父親の顔になっていて、心情がシンクロしているのが伝わってきます。

山口さんと大森さんは舞台上で、僕の見た角度からだと、上手側から山口さんがしゃべり、でも出演者たちは下手側から話す大森さんのほうを全員みていて、表情は大森さんを観ているという趣向です。
グッと客席の心を掴みに来るシーンで、客席の涙腺崩壊が起きたシーンでした

今思うと、全員が自分でない出演者に向かってセリフを話す山口さんは、ものすごくやりにくかったんじゃないでしょうか。 ちょっと可哀想

女優さんは、いずれも出色の出来

依里さん、最初子供の役かと思ったのですが、発達障害(正式な名称を忘れてしまった)で、単に成長が遅いという子供の役。
こういう役って自分の中にないものを出さなければならず、難易度がかなり高いと聞いたことがあるように思います。
そんな難しい役を見事にこなしていました。
割と前からこのカンパニーで見ている女優さんですが、なんか成長したなぁと(上から目線ですが)今回一番感じた役者さんでした

「あさがお」では しっかりものの妹役だった杉本さんですが、今回はしっかりもののお姉さん役です。
今回は、舞台が近かったせいか、美人だなぁと改めて嘆息。喪服を着ていると女性が美人に見えるという喪服補正かかったのでしょうか?( ←多分違う)
そもそもどういう人なの?と今回ネット検索して初めて、モデル/アイドルという活動を経て女優をされているとのこと。 美人はなはずです

無名塾所属の中原さんは、気品のある演技でとても印象に残る女優さんでした
落ち着いた演技と感情を爆発させる演技に落差があり、とても上手い役者さんだと感心しながら見ていまいしたが、無名塾に所属されていると知り、なるほどと思いました

勿論、すでに常連となっている伽代子さんも、いつもの何故か自分が美人であるという自信満々な演技と豪快なキャラクタ(既に、素なのかどうかの区別がつかない)が笑いを誘い、コメディ部分を一手に担っていました。

泣いてますねぇ。観客席

いつもの通り前半は、様々な出演者同士のドタバタな行き違いや思い違いから起こるコメディの定番的な展開で笑いが絶えない舞台でしたが、後半の上記の大森さん、山口さんのシーンあたりから客席は一気に 涙腺崩壊状態になりました

が、私はそこまでいきませんでした。うるっとするくらいは来たのですが、今回は涙腺崩壊とまではいきませんでした

親が子を残す悔しさを悲壮感ではなく、ひょうひょうとする会話が、山口さん演じる父親の人間性を示していて、とても胸に響くシーンだったのは間違いありません。
そろそろ慣れてしまったのかもしれません、大森さんの脚本に。

なぜ「いきどおり」?

題名+お葬式という芝居の始まりから、もっと凄惨な事件とかの話なのかと始まった瞬間に想像していたのですが、どうもそんな感じの話ではありませんでした(お父さんのなくなった理由は普通の病死ですし)

いつもは、結構題名と内容の関係についてしっくり来ることが多いのですが、今回はなんかしっくり来ませんでした

勿論、中原さん演じる恋人に最後を看取らせずに逝かれた思いや、エピソードとして語られるオレオレ詐欺(お母さん助けて詐欺だっけ?)の被害に傷心した母親の話とか、怒りを感じさせる話はあったのですが、自分の中で感じる「いきどおり」という言葉の表す感情とは少しリンクしませんでした(メインテーマでもなかったし)

いつもの4文字しばりを外してまでついた題名だったのできっと余程内容とリンクしているのだろうと 期待しすぎたのかもしれません

そのひっかかりが、終わった後の「もやもや」感を自分の中で生んでしまい、 すっと胸落ちするラストになりませんでした。ま、勝手な僕の思い込みが原因なのですが。

以上 大森カンパニープロデュースの「いきどおり」の劇評記事でした

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