劇団 | 唐組 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
題名 | 吸血姫 | |||||
公演期間 | 2018/05/05〜2018/06/10 | |||||
作 |
唐十郎 |
演出 | 久保井研/唐十郎 | |||
出演 |
銀粉蝶 :高石かつえ(国際劇場で歌うことを夢見る看護婦) 大鶴美仁音:海之ほおずき(謎の引っ越し看護婦) 大鶴佐吉:袋小路浩三(愛染病院若院長) 全原徳和:花形(歌謡界の鬼) 久保井研:中年男(ある時はバーテン、ある時は男のなかの男) 福本雄樹:肥後守(天職を探す少年) 藤森宗:旦那(妻を追って、愛染病院を探す) 藤井由紀:ユリ子(さらわれる人妻) 清水航平:さと子の父 岡田悟一:看護婦長(愛染病院の婦長) 加藤野奈:看護婦1(高石かつえに反抗的) 福原由加里:看護婦2(いいわぁしか言わない) 大嶋丈二:謎の海パン男 河井裕一郎:看護婦 大澤宝弘:看護婦 | |||||
劇場 |
雑司が谷鬼子母神境内(雑司が谷)
|
|||||
観劇日 | 2018年05月19日(ソワレ) |
目次
13年ぶりの唐組。若手俳優が増え、すっきり爽やかな劇団になっていた!
すみません。本当にご無沙汰しておりました
自分のブログ(全ての観劇記録は1997年以降につけている)によれば、以下の2005年「カーテン」以来訪れました
すでに、13年前にいた役者さんは、看板女優の藤井由紀さん、演出の久保井研さんを残すのみ
なんか、別の劇団を見に来たような気分です(いや、紛れもない赤テントで見る以上、別の劇団ということはありえない訳ですが)
若手の役者さんが重要な役を占めているせいか、単純に演出が変わったからか、随分と歯切れのよい演技をする役者さんが増えました
イケメンも増え(昔いなかったわけではない)、なんか爽やかな印象が残りました
一度見たはずなんだけどなぁ。結構知らないシーンが多い
この作品は、2000年に新宿梁山泊版を見ました。好きな作品で、キャストの比較を含め紹介記事を以下のようにまとめました
というわけで、それなりに分かるつもりで見に行きましたが、結構知らないシーンが多数ありました
勿論、前回見たのは2000年の新宿梁山泊版で、18年前なので台詞や場面を覚えていないのは当たり前です
以下 ネタバレがあります
最初に屋体崩しされてる問題
銀粉蝶さん演じる高石かつえのシーンは、今回はとても楽しみにしていたシーンでした
期待に違わぬ派手派手シーンで、前半を完全にひっぱっていて、銀粉蝶さんの演技には大満足でした
が、個人的な思い入れが大きいと思いますが、屋体崩しは最後にして欲しい
最初からやられるとかなり冷めてしまいます
狭い空間に閉じ込められた劇場演劇の空間が最後に解放開放されるすがすがしさがテント芝居の真骨頂と思えるのだが、それを減殺された印象
若手役者の台頭も、少し歯ごたえがない
重要な役は、唐さんの長男長女である佐助さん、美仁音さんを始めとして多くの若手が担当しています
フレッシュなのですが、テント芝居特有の怪しさが弱まった気がします(若手だからではないと思います。過去に若手が居た時とは違うので)
全原さんの演じた花形も、何か迫力がかけていたような気がします
銀粉蝶さんと四ツに噛み合うシーンも含め、結構重要な役なのですが、どうも台詞が肉体から出てきていない
抽象的な表現で申し訳ないのですが、上滑りしていてこちらに台詞が響いてくることがありません
美仁音さんは、なぜより目なの?
私自身は、客席に顔を向けた時に目が合わない「寄り目」の演技が基本的には嫌いです
今回は、多くのシーンで美仁音さんは、寄り目で演技をされていて、そのシーンでは演技にノれていないように思いました
おそらく、「さと子」と「ほおずき」の使い分けをしていたのだと思いますが、ほおずきのシーンが多いだけにちょっとつらかったです
どうも、お人形さん見たいな演技でした
今回、つくづくこの役の難しさを実感しました。変幻の多いこの役は、美仁音さんをもってしても難しいのだと思いました
一方で、素に帰りさと子に戻るあたりから美仁音さんの演技はのってきたのも事実です
美人で、立ち姿も美しく、声も通る
この役をやるための凛とした存在感と不安定さが、彼女には出せるのではないかという期待値があります
今のところ、この役に適役な女優さんは、確かに彼女だと思えるだけにその辺少し残念でした
佐助さんは、存在感あり器用!
唐さんの長男佐助さんは、今回始めてみました
噂通りお父さんにそっくりで、麿赤兒を始めとした曲者の俳優さんが演じてきた「浩三」役を、まったく新しいアプローチで演じられていました
なんか悪徳医師というよりも、単なるわがままなボンボンという感じで、こういうのハマるな(ボンボンだしな)
なんか、前に見た梁山泊版より、出演シーンも多くなったような気がします
まだ、荒削りではありますが、存在感ありましたねぇ
これからの成長が楽しみです
話はわかりやすくなったなぁ。演出の力ですね
前に見た時は、江ノ島の愛染病院、関東大震災の上野、浅草の風呂屋、大連へと続く時空を超えるスペクタクル劇という印象だったのですが、今回はわかりやすい心象劇になっていました
単に前に見たときに理解力がなかっただけかもしれませんが
引っ越し看護婦「海之ほおずき」の正体が、前回はわからなかった(大連や上野の景色に惑わされた)のですが、今回は、素の部分である「さと子」のところがしっかり描かれていたので、そこを中心に話を理解することができたように思いました
父親に犯されて身ごもった娘って
さと子の役どころである父親に犯されて身ごもった娘という話、どこかで聞いたことがあるなと思いましたが、学生時代の憲法の授業で聞いた話だと思い出しました
以下の事件です
法学部の学生であれば、(多分)必ず聞くことになる刑法の尊属殺人条項を無効とした事件。発生が1968年で、この脚本が書かれたのは1971年
まったく関係ないかと思っていましたが、当時はきっと騒がれた事件でしょうし、この事件が吸血姫のさと子にインスピレーションを与えたんだなあと思い至りました
そのセンセーショナルな事件の渦中にあった女性が、現実から逃避する中で生まれた引っ越し看護婦という人格だからこそ、強く/凛とした存在感が必要なんだなぁと思いました
そして、非現実的な物語が彼女の中で生まれ…とこの物語の構造を今回は理解することができました(多分….)
終わった後の開放感は、テント芝居の醍醐味だなぁ
久しぶりの赤テント、なんか余韻にひたりました
以上 47年ぶりの再演作唐組「吸血姫」の感想でした
2001年新宿梁山泊版の感想は以下
[…] 清角克由(2018/05/19) […]