久しぶりに見ごたえのある舞台でした。
終って初めて2時間30分に渡る芝居であることに気づきました。それ程、テンションが高く、最後まで一瞬たりとも気を抜くことのできない舞台でした。
劇団 | 自転車キンクリートストア | ||||
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題名 | 第17捕虜収容所 | ||||
公演期間 | 1997/04/09~1997/04/20 | ||||
作 | DONALD BEVAN / EDMUND TRZCINSKI | 演出 | 鈴木裕美 | ||
出演 | 吉田朝、木下浩之、京晋佑、樋渡真司、及川以造、久松信美、藤本浩二、藤敏也、水下きよし、平良政幸、田鍋謙一郎、佐藤正宏 | ||||
劇場 | スペース・ゼロ(新宿) | ||||
観劇日 | 1997年4月17日 |
脚本もけして悪くないのですが、この芝居の良さは、間違いなく、どの一人をとっても見劣りすることのない役者達のぶつかり合いでしょう。特に、悪役とうか憎まれ役が板についていたセフトン役の吉田 朝さんは、印象に残りました。彼の悪役ぶりがこの芝居全体の対立をうまく引っ張っていたんだと思います。
他にも、看守のシュルツ伍長役の佐藤正宏さんは、いつも陽気な役をする印象があったのですが、今回のようなシビアな雰囲気を作れるというのは発見でした。
逆に普段があんなに陽気で、いざというときに恐いああいったキャラクターが、今回の芝居全体の雰囲気を代表しているような気がします。
他の役者さんも、個々に個性豊かで、一人一人が各々の領分を見事に演じきっ ていたなという印象でした。
唯一の苦言は、ラストのスパイがばれる所の仕掛けがあまりにちゃちなこと。 もう少し推理劇っぽくしてくれるとうれしかったな。あそこで、みんながセフ トンに対する疑いを一気にはらしちゃうというのはあまりにさみしい。まあ、それがこの芝居の主題ではないことはわかっているんですが。
芝居のラストで、ついさっきまで仲間だと思っていたスパイを銃殺されるとわかっている収容所の外に追い出すシーンは、さすが翻訳ものと言うべきか、ちょっと日本人的な発想ではああいうラストにはならないだろうなと思いました。 多分、このシーンに違和感があるのは、最初の暗闇のシーンで脱走する二人の捕虜に対する観客の思い入れが芝居の登場人物のそれとはかなりずれているからなのでしょう。芝居の登場人物にとってみれば、苦楽を共にした二人の脱走計画をもらされ銃殺された恨みがあるから、「スパイ=殺す」と言う図式が成り立っても、その二人が銃殺された後の物語を主に見せられている観客にしてみれば、その部分の共感を登場人物と共有するまでには至らなかったということでしょうか。
ま、芝居の構成上(脱走する捕虜役と、後から入る新入りが二役)、観客が死んでしまった捕虜に感情移入するようなシーンを作るわけにはいかないだろうし(そんなことしたら芝居が倍長くなってしまう!)やむ負えないのかなとも思いますが。
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