[劇評]東京ヴォードヴィルショー「明日を心の友として」@東京芸術劇場小ホール

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再演ということもあり、時代設定/ギャグ共に古い感じが否めない。
話は重層的で、どこか芥川龍之介の「藪の中」を思わせるような構造で面白いのだが、大爆笑という形にはならない。ほのぼのとしたいい話にしては、毒があるし…ちょっと見方に困った

劇団 東京ヴォードヴィルショー
題名 明日を心の友として
公演期間 2001/11/14~2001/11/25
松原敏春 演出 松原敏春/添田忠伸
出演 地上げ屋・桐島八郎・・・佐渡稔
ラーメン屋店主・今泉勝太郎・・・佐藤B作
その妻・節子・・・あめくみちこ
ラーメン屋店員・山之内・・・大森ヒロシ
出前持ち・・・たかはし等
若い男・・・能見達也
ラーメン屋の客・・・劇団員一同
劇場 東京芸術劇場小ホール(池袋)
観劇日 2001年11月23日(マチネ)

<<ストーリー>>

気の弱い地上げ屋の桐島は、突然体がねじれるという奇病を抱えていた。

その桐島が、立ち退きを迫りに来たラーメン屋はまるでやる気のないラーメン屋で自分らの食事さえ、他のラーメン屋から出前を取る始末。

ラーメン屋の主人は、「ちょっと出かけている妻が帰ってきたら、立ち退きましょう」と地上げ屋を喜ばせるが、その妻が5年前に出て行ったっきり帰ってきていないことを知り、毎日のようにラーメン屋に通い一緒に妻を待つようになる。

妻の出て行った事情は、店主と店員の話で食い違い、最後には事実は更に食い違うことが判明する。
そのとき、桐島は思わず…

<<感想>>

松原敏春氏は、ヴォードヴィルの脚本やテレビの脚本を多く手がけた方らしい。今年の新作も彼が執筆予定だったということ….享年53歳 本年2月6日に死去。

残念ながら、松原氏の脚本を見るのは今回が初めて。1987年初演ということもあり、舞台設定に古さがある。今の時期って、バブルの時期以前よりも、バブル絶頂の時期の方が時代設定の古さがより際立つなぁと今回改めて感じた。

ストーリーは喜劇でありながら、何か考えさせるものがある作品で、素直に笑えない所がそこここにある。芥川の「藪の中」を思わせる、「愛妻が家を出て行った」という事実に対しての何層もの残ったものによる説明が物語の構造を作っているし、全般にあまり明るい雰囲気でないのもつらい。

追悼公演で喜劇という状況に、うまく僕の心がなじむことが出来なかっただけかもしれないが、心から大笑いすることができず、かといって(若干不条理劇を思わせるストーリー展開があることもあって)うまく芝居の世界に集中もできず、非常に中途半端な印象が残りました。

 

ここの役者の方の力量は、もう文句がつけようがない芸達者ぶりなのですが、なんか作品世界の枠の中でそれほどはみ出せていないというか、魅力が充分に伝わっていないんじゃないかという不満が心中にくすぶりつづけました。

B作さんの演技が、今回特に暑苦しくてなんかちょっと浮いてた気がしたのは気のせいでしょうか?

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