[劇評]インヘリット東京「永遠の一秒」@南大塚ホール

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eternal-second昨年の池袋演劇祭 優秀賞作品を見ておきたいと思い、二週続けて大塚の南大塚ホールへ。
結論として、何がしたいのか(何が伝えたいのか)わからず、見どころらしいところがあまりない作品でした。残念。

劇団 インヘリット東京
題名 永遠の一秒
公演期間 2016/09/232016/09/25
作/演出 畠山貴憲
出演 大宮英機(特攻隊員):中野大地
石井義貴(特攻隊員):西間木猛
細野十郎(特攻隊員):小川裕輔
原口千里・過去(特攻隊員、怪我のため生き残る):篠崎大輝
原口千里・現代:副島国広
邦子(特攻隊員の一人と恋をしていたが、託され原口と結婚)/江間絢香(原口/邦子の孫 居酒屋でバイト): 村田綾
江間茂(原口/邦子の娘の夫):天崎明
江間優子(原口/邦子の娘):安野由記子
江間香(茂/優子の次女。現代っ子):山本桃々子
坂上幸助(居酒屋のファンキー店長):白石哲也
劇場 南大塚ホール(大塚)
観劇日 2016年9月25日(ソワレ)

目次

■物語

第二次世界大戦末期、宮崎の特攻隊基地から、飛び立った3人の特攻隊員は、沖縄沖で米軍に特攻、命を散らしたはずだった。が、彼らは何故か現代へ。彼らを怪我のため見送った元同期の家族の元に偶然訪れることに。特攻隊員たちは死者の国を巡る六道と思い込み、迷い込んだ居酒屋では非行少年に間違えられるという行き違いにあいつつ、彼らは何故か71年後の未来に来ていることに気づき、残した元同期の家族に、その祖父の話を聞く

■感想

■これが優秀賞だったというのがにわかに信じられない

昨年版と配役や演出が異なるのかもしれませんが、脚本だけ見ても、見るべきものは何もなかった印象です。チラシをみると1999年から何度となく再演を繰り返し、何度か賞を受賞している作品ですが、そういう脚本の持っているパワーを感じることは全くありませんでした。説教臭いというか、魅力に乏しいストーリーでした。

我々日本人にとって特攻隊というテーマは、消して忘れてはいけない記憶であり、そういうテーマを扱うことの大事さは理解していますが、だからといって話としての出来が悪いのでは逆効果だと思います。

なんか、学校とかで授業の一環として見せられそうな舞台だなぁと思いました。そして、その舞台を見た子供はけして舞台作品にいい印象を持たない気がします。

■キャラ設定の意図が不明

話の奥行きがない割に、キャラが多すぎる。特攻隊3名、生き残った男一人と託された女。その家族。個々の描き分けがなされていません。なんの役割で、その役があるのか、わかりません。

生き残ることにより、血が繋がり、家族が増えていることが言いたい(会場で配布されたパンフにもあったし)のかもしれませんが、それなら、更に後に続く世代を予感させる(娘の一人のお腹にさらに子供がいるとか。。。)ような展開があってもよかったのではないでしょうか?なんか中途半端だと感じました。

過去の特攻隊の人物像も、現在の人物像も当たり前すぎて、印象に残らない。どちらもいい子すぎるし、波乱がない。
よって印象に残るキャストが誰もいませんでした。

■一瞬、面白くなるかなと思ったタイミングもありました。

タイムスリップものでありがちな、タイムスリップした人(今回の場合は特攻隊員)が、どうやってその世界を理解するのか?というあたりで、仏教の三途の川を渡るための手続きと居酒屋のバイトの面接がごっちゃになって錯綜するあたりは面白くなるかなとちょっと期待しました。

お互いの思い込みで、喋っているのに何故か話が噛み合ってしまうという会話が続けば、面白い話になるかなぁと思ってました。そういうシーンは、一瞬で終わってしまいましたorz

■音楽効果が最悪の部類

スメタナとか手垢のついたクラシック曲の使い回しが耳につきすぎます。使い方としては最悪だと思いました。
中島みゆきの曲がでてくるのも意味不明。(歌詞も、けして話にあってないし)。
そのくせ、音量が高めで、押し付けてくる感が半端ない。
演出が、音楽に頼ろうとしているのが見え見えで、その上、選曲がポロポロで、すべてのシーンが陳腐にしか見えない

久しぶりに悪い意味で音楽効果が印象に残る舞台でした。

■演出に芸がなさすぎる。

最後にナレーションで言いたいことを言うとか、記録映像で最後締めるとか本と演出に工夫がなさすぎて嫌い。
(まさか、肝心の題名にあたる一言をナレーションで語らせるとは思わなかった。そんなことなら、題名を舞台にのせる必要はなかったと思う。しらぁーと感情が冷めていってしまいました)

相対的には、装置は、悪くないと思いました。使いまわしも綺麗でしたし。

ただし、最近の自分の劇評を読み返して気づきましたが、スクリーン兼用の半透明なパネルが活用されてれば条件反射的に良いと思ってしまうだけで、すでに常識的な使い方になっているに過ぎないかもしれません。

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