[劇評]広島アクターズラボ「かえれない家」@山小屋シアター(横川)

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縁があってお誘いいただいた広島の演劇。プロとは呼べない役者さんによる舞台でしたが、1時間弱という短い上演時間にぎゅっとメッセージが詰まっており、演出の巧みさもあり楽しむことができました

劇団 広島アクターズラボ
題名 かえれない家
公演期間 2024/3/30~2024/3/31

藤井友紀

演出 澤雅展
出演者 江島慶俊:長男
落合晶子:長女
宮地里奈:次女
篠田杏那:三女
長女、次女役はダブルキャストで私の見た回以外では、各々を後白早智子、井田真裕 が演じた
劇場 山小屋シアター(広島・横川)
観劇日 2024/3/30(マチネ)

目次

舞台の位置づけ

アフタートークがありました。私は、その後の予定があったため最後までいられなかったのですが、広島アクターズラボという演劇スクールの受講生による舞台だったようです
過去のその手の舞台は何度か見たことがあり、もれなく、いまいちだったという記憶があったのですが、今回については京都の有名劇団「烏丸ストローク」の澤雅展さんが演出されるという情報もあり、ある程度なんとかなるかなぁという読みで伺いました

その想定は正しかったようではあります

ここからはネタバレします

言葉狩りと意識の変化

男1人と3人の姉妹という出演者の中で、男性が姉妹に対して話す言葉の端々に女性の役割を強調する言葉を散りばめる
それに対してのやりとり。「女のくせに」とか「女なんだから」とかそういった発言をする長男に対しての姉妹たちの苦言

最近見ていたドラマの「不適切にもほどがある」でも扱われたテーマではありますが、特にここ数年間で本当に急激にこの辺の意識の変化が起きてきています

言葉狩りとさえ思えるジェンダーの役割についての言葉への反応が、テレビをはじめとする日常の中に溢れ出しています。
舞台上でも、おそらく僕より20歳以上若い主人公の男性さえも戸惑うその状況は、おじさん世代の僕らだけでなく意外と普遍的な違和感なのかもしれないと感じました

必要な変化であるとしても、その変化を受け入れるための苦悩がテーマの一つであったように思いました

出演者はすべて見どころありました

次女(まり)役宮地里奈さん

いわゆる引きこもりで、だいぶはすっぱな印象の演技をうまくされていました。

長女役落合晶子さん

苦労人な長女役を抑えめの演技でされていたのが印象的でした。惜しむらくは、目が特徴的なかただったので、もっと表情的な演技があるかと思いましたが、そちらも抑えめ。少しもったいないかなと思いました(顔芸をしろと言っているわけではありませんが🤣、小劇場で表情まで見える劇場だと、そういうのも期待しますよね)

三女役篠田杏那さん

最も若い役(高校生か中学生)で、多分役者さんも若いと思うのですが、脚本のせいもあるかもしれませんが若さゆえのいらだちの表現が結構弱く、他の役者さんとの対比が弱いと感じました。もっと若さを全面に出したわがままぶりを演じられても良かったかなと思いました

長男役江島慶俊さん

出てきた瞬間に得体のしれない存在感がある方でした。
初めて見る役者さんだったので、芝居中はそれが素なのかと思っていましたが、アフタートークに出ていらして喋りだすとまるで別の普通の人がそこに現れました。
得体のしれない存在感が演技だとすると、とてもうまい役者さんだなと思いました

ちなみに、上記の姉妹に対してのジェンダー役割固定を促すような発言の数々の裏に、彼自身が職場で抱えるセクハラとそれを静止しようとしたがゆえのいじめ被害という問題を吐露する場面の空虚な表情がたまらなく良かったなと思いました

全編広島弁!

いや、広島で広島の人が演じるわけですから当たり前なんですが….
私は、1997年まで福岡で暮らしていて、演劇を見るようになったのも福岡でした。当然、福岡で地元劇団を多数見た記憶があるのですが、そのころに博多弁で上演されていたという強い記憶はありません。
しかし、今回、全編広島弁で上演されている舞台を見て、とても印象に残りました

「いや」とか「違和感がある」という意味ではありません。舞台上の景色がなにか物凄く鮮明度があがったような、親近感がいつにもまして強まったような...

この舞台特有のものだったのか、広島生れの私の特有のものだったのかわかりませんが、そういった意味でとても記憶に残る舞台になりそうです

全編広島弁の舞台といえば、昨年広島で見た「」と一昨年東京で見た「広島ジャンゴ」もそうだったんですが、あっちは事前情報で広島弁であることが、特徴として語られいたので、構えてたんですよね。今回は不意打ちを食らった感じです

以上 広島アクターズラボの公演「かえれない家」の感想でした

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