[劇評]劇団桟敷童子「飛ぶ太陽」@すみだパークシアター倉(とうきょうスカイツリー)

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珍しく実在の事件を題材にした物語は、その語り方も含め今までに劇団桟敷童子でみたことのない話でした。個人的には、普段目立たなかった役者さんの活躍があったことで、非常に印象深い舞台作品になっていました。

劇団 劇団桟敷童子
題名 飛ぶ太陽
公演期間 2021/11/262021/12/08

サジキドウジ

演出 東憲司
出演者 古田知生:松尾与市(復員兵)
鈴木めぐみ:松尾トワ(与市の母親・農作物行商人)
稲葉能敬:松尾昭一(与市の叔父・行商組合長)
川原洋子:松尾ミネ(昭一の妻・農作物行商人)
羽田野沙也香:松尾ユキ(昭一のミネの娘・農作物行商人)
板垣桃子:澤西典子(農作物行商人)
宮地真緒:澤西文子(典子の妹・国民学校教員)
原口健太郎:奈佐達蔵(添田署駐在所巡査部長)
山本あさみ:奈佐千寿(達蔵の妻)
柴田林太郎:奈佐孝則(達蔵の父親)
瀬戸純哉:田崎岩吉(町役場警防団員)
三村晃弘:赤石静馬(彦山駅駅員)
大手忍:中村富子(地方記者)
斉藤とも子:簗瀬タケ(単行付属病院医師)
増田薫:古賀ケイ(看護婦)
もりちえ:岩倉一枝(元従軍看護婦)
劇場
すみだパークシアター倉(とうきょうスカイツリー)
観劇日 2021年11月27日(マチネ)

ちゃんと観に行っている唯一の劇団になりつつある

桟敷童子は、観に行っている劇団の中でもかなり古くからの付き合いで、今も舞台に出演しつつも制作的な役回りを果たしている鈴木めぐみさんからのメールがきっかけでした。
当時は、まだ小さな劇場で演じる役者さんたちの集団で、それでもその小さな劇場に収まらないようなスケールの舞台装置とケレン味あふれる物語に心を奪われました。


20年前の舞台ですね

今回は、史実に沿った題材の舞台

今回の舞台は、戦後すぐに日本で起きた悲劇を題材にしている桟敷童子には珍しい社会派(?)な物語でした

旧日本陸軍の無責任な行動、それに比するほどの進駐米軍のいいかげんな対処によって起きた恐るべき悲劇です。
一時期福岡に住んでいた身でしたが、この事件のことは初めて知りました。
近場にいくための鉄道駅もすでになく、現場に足を踏み入れることはできそうにありませんが、いつか近くに行ってみたいと思いました。
ここからはネタバレします

骨太な物語の展開にいつもと違う桟敷童子を見た気持ち

倒叙式というか、最初に事件の悲劇を伝えるスタイルも珍しい
史実だからでしょうか。まずは事件の大きさを伝えられたことで、その後に続く戦後の日常がより大事なものに感じられました
そのため、いつもは物語終盤に崩れる舞台装置が名物のようになっていますが、なんと開演早々に舞台背景の橋が崩れ去り、そのまま終盤までいってしまいました
実は、どこかの暗転で戻るのかと密かに期待していましたが、さすがに無理だった模様(笑)

役者の演技もいつもと違う

史実を伝える必要があるためか、説明ゼリフがいつも以上に多い
それを誰かがまとめて語るのではなく、すべての役者が分担して語る形式。悲劇がより、客観的に語られることにより悲壮感がましたように感じました

斎藤とも子さん、宮地真緒さんの客演陣の演技も適役で、印象深いものでした
鈴木めぐみさんの息子役を演じた丸々さんは、これまで割と目立たない役が多かったのですが、今回は印象深い語り部役でした。

今回は、なんといっても鈴木めぐみさんの演技に目を奪われた

遅くにできた息子を思い、村落の中で孤立しつつも母性愛に満ちた振る舞いや、両手を失ったがゆえに絶望し、死のうとするシーンは本当にジーンと来ました。この舞台で最も印象に残ったものでした
この劇団との出会いのきっかけを作ってくれた鈴木さんの素晴らしい演技を見れたことで、今回は特別印象に残る舞台になったように思います。
いつもは、制作的な役割を果たしていることから、カーテンコールのアナウンスも鈴木さんがやることが多かったのですが、今回は大手さんが担当。そうだよねと思ってしまいました。

日本人ってやっぱり真面目だなぁと思いました

物語の後半を見ていて、進駐軍や日本政府にここまで虐げられたにも関わらず、被害者たちがくじけずに法廷闘争を続けるという部分を見てつくづく感じ入りました。
他国であれば、それも戦争直後でまだ血気もある人々であれば、テロ行為に走りそうな案件な気がします…ていうか、直近で世界で起きているテロ事件ってある意味、こういう不満の鬱積が原因だと思っているのですが、日本人はあくまでも、くじけずに法廷闘争という遵法行動で異議を唱え続けるというのが、さすがだなと。

常に日本人が正しいとかそういうつもりはなく、こういう日本の占領政策を成功例として、アメリカが他の国の占領政策に最近片っ端から失敗しているのを見ると、そのへんの分析をちゃんとしないといけないんじゃないかなと思いました。

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