[劇評]劇団桟敷童子「風呂泥棒」@西新宿成子坂劇場

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元唐組、元梁山泊の面々が旗揚げした劇団。両劇団の特徴であるケレン味のようなものを色濃く感じる事ができ、かつ全般に両劇団より若いメンバーが作っているせいか、勢いがあり非常に面白かった。特に主役の二人の存在感はかなり良く、見ていて安心していられる。今後が本当に楽しみな劇団

劇団 劇団桟敷童子
題名 風呂泥棒
公演期間 2001/11/03~2001/11/11
サジキドウジ 演出 東憲司
出演 原口健太郎、池下重大、稲葉能敬、板垣桃子、東憲司、塚本健一、外山博美、荻野航、鈴木めぐみ、米倉香織、川田涼一
劇場 西新宿成子坂劇場(TJPスタジオ)(西新宿)
観劇日 2001年11月10日(ソワレ)

<<ストーリー>>

海から遠く離れた田舎町の一軒の家に、風呂泥棒が入る。風呂泥棒とは、家人のいない間にものを盗み、ついでに一風呂あびるという輩。家人の海野は、その風呂泥棒を捕まえようとするが、そこになぞの男興櫓木が現れる。興櫓木も、その風呂を探し歩いてようやくその風呂にたどり着いた。その風呂は、興櫓木の家族を乗せて沈んだ船の残骸で作られており、家人の海野こそその時の船長。興櫓木と海野の闘いは果てることなく続く。

<<感想>>

ケレン味というものが、正確にどのようなものかは説明しようがないが、確かに今回の舞台には、それがあったような気がする。

衣装、装置に手抜きがなく、役者のパワーもある。芝居のテンポもしっかりしており、見ていて小気味が良い。ひさびさにアングラっぽくってかつ気持ちのいい芝居を見た印象

狭い小屋での公演ということもあり、舞台との距離が近かったのも良かったのかもしれない。

 

同じようなシーンを繰り返す事により、感動的なシーンを作り出す手法も見事。興櫓木の「勝てるかな」といいながらこうもり傘を開くシーンの繰り返しは、序盤では笑いを後半では感動をうまく観客から引き出していたのではないだろうか?(僕の好きな「今を生きる」という映画でも台詞の繰り返しで、同じように感動的なシーンを作り上げていたのを思い出した。)

マトリックスの音楽がかかるとうきうきするのは、僕だけかもしれないが、うまく使っていると思った。(恐らく、この曲の印象深さも手伝ってこの繰り返しシーンがより印象深いものとなり、後半での感動につながったのではないだろうか?)

 

舞台を揺らすという装置も見事。既に見飽きた感がある(でも好きだけど)屋台崩しよりも、よほど新鮮で楽しかった。ただ、惜しむらくは、これよりも印象的なシーンが、ラストになかったこと。途中で、あれだけ大掛かりな仕掛けを見せられると終わりでは更に大掛かりな仕掛けを期待してしまうのは、観客のわがままだろうか?

それが、無理なら、あの舞台揺らしを最後に持ってきてほしかったなぁ。その方がよほど気持ちよかったような気がする。

 

役者に関しては主役二人を演じた原口さんと池下さんは、共に甲乙つけがたいくらい、力があると思った。また、風呂泥棒の一団の群衆シーンもよく演出されていて見ていて気持ちがいい。群衆シーンがこんなにうまく演出されている状況は、唐組や梁山泊でも最近見ていない気がする。

 

難を言えば、女優にまだパワーがないのかもしれない。(脚本としてあまり女性キャストが目立つ脚本ではないものだが、逆にいえば女優のパワーがないが故に、こういう脚本になったのではないかと思った)

ちょっと、気になったのは「マンタ」と「海の牙」をやった板垣桃子さん。実は、開演前の観客に向かってのお願い(例の「携帯電話を切ってください」とか「間もなく開演いたします」というアナウンス)をやった時から、声が好きで気になっていたのだが、あまり見せ場が無くちょっと残念。もうちょっと、演技を見たいところだった。

 

 

まったく芝居の本題とは、関係ないのだが….唐組で見なくなって以来久しく行方がわからず、ちょっと心配していた「飯塚澄子」さんの名前をこの芝居の音響操作担当して発見!?もう舞台には立たないのだろうか?

 

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