[劇評]まごころ18番勝負「汝、公正たれ Let us see YOUR own justice」@シアターバビロンの流れのほとりにて

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まごころ18番勝負の「汝、公正たれ」は、演劇という範疇に収まっていない新感覚のライブエンターテイメントと呼んでも差し支えないほどの不思議な経験をさせてくれる舞台です。
劇団 まごころ18番勝負
題名 汝、公正たれ Let us see YOUR own justice危険運転致死傷罪
公演期間 2017/10/312017/11/05

待山佳成

演出 待山佳成
出演 宮木秀明:吉沢光男(被告人)
中村圭佑:弁護士
田中慎二:検察官
岡本弘実:高島聡美(検察側証人)
鳩岡大輔:西岡弘樹(弁護側証人)
小竹浩平:刑務官
ゆきを:裁判長
小池ウラン:裁判官
どんぐりマミー:裁判官
木村優希:裁判官
角田志おり:裁判官
福原佑樹:裁判官
安原拓海:裁判官
富山貴記:裁判官
野村美優:裁判官
狩生士文:裁判官
たみやすともえ:裁判官
劇場
シアターバビロン流れのほとりにて(王子神谷)
観劇日 2017年11月3日(マチネ)

観客参加型演劇としては大成功

観客参加型の芝居は、失敗例しか思い浮かばなかったが、この芝居は大成功だとかんじました。既に、演劇という枠を超えた別種のライブエンターテイメントです

はっきり言ってくせになる体験です

公演期間がもっと長く、時間があればもう一度くらい行きたい舞台でした。そもそも今回も再演だった様子ですが、また再演があれば行きたい舞台です

アイデアとそれを実現させた演出?制作の勝利といえるでしょう

なお、既に公演が終了しているので以下はネタバレありで記載しています

入場すると客席に当たる場所には丸テーブルが7つ並んでいます。各々のテーブルに色が割り当てられており、座席に応じて番号が割り振られます

この当たり陪審員ものの舞台「十二人の怒れる男たち」「十二人の優しい日本人」なんかを見た身としては、それだけでテンションの上がる設定です

開演直前に公判の概要を示した書類が、示されます。正式名称は忘れましたが、そこに記載されているのは検察側から示された事件の概要です

これを読むだけだと争点が見当たらないもう有罪確定と言った感じです

客席のどこから「これ、すげーひどいやつじゃん」的な声が聞こえてきます。僕も同感でした

読みながら残念ながら自分は十二人の怒れる男の「陪審員8号」にはなれないなぁとか考えていました

始まった瞬間から頭はフル回転。悩みまくり

ところが、冒頭の被告人による証言からいきなり、上記の確信がゆさぶられます。弁護士の発言も「えっそうなの!?」という発言が続きます

証拠書類は、検察側が用意したもので、当然犯罪(この場合危険運転致死傷罪及び殺人罪)を立証するもののはずなのですが、それが必ずしも信用出来ないのではないかと思わせる発言が続きます

だからこそ開演前とは違う結論に誘導されてしまいます。舞台の構成として、検察側による冒頭陳述、被告人の罪状認否、弁護士の弁護を一通り聞いた後で、1日目が閉廷

テーブルで、その内容について議論するのですが、開演前とは打って変わって、被告人サイドにみんな立ってしまっています

重要な決断や台詞を話すのは観客?

弁護士や検察も最初から全ての情報を開示していないことが途中でわかってきます。最初の冒頭陳述や証人尋問等いわゆる、劇としての台詞で賄える部分に必ずしも、事件の全容が語られていません

まったく語られてなかった重要な情報が裁判員(観客)の質問をきっかけに語られたりして、僕自身も他の観客の質問の回答で確信しかけていた結論を見直さなければならなくなったり

そんな、重要証言が出てくると、ざわざわと他のテーブルでも証拠書類(結構大量‼)をまさぐる音がしてきて、それもまた臨場感を高めています

証人尋問は、テーブルごとに裁判官が観客のかわりに質問をしてくれるのですが、最後の被告人質問は裁判員=観客が、次々に質問をします。

上記のように、この質問で結構重要事実が明らかになってくるものだから、だんだん観客側も熱が上がってきて、質問も矢継ぎ早におこなわれていきます

結局誘導されてたの?

後から考えると、各テーブルで議論のまとめ役をやってくれる裁判官役の方に結構誘導されていた所もあった気がします。とはいえ、芝居の最中はあまりそれに気づくことなく、自分で考えついたもんだと思って質問をしていたりして。その質問に対しての被告の答えが結構重要な点をついていて判決に影響を及ぼしたりします

そういう上手さが、随所にみられ、それでいて観客(裁判員)のいろいろな角度からの質問に矛盾なく答えて破綻なく話として成立させている。驚くべき構成力です。いったいどういう練習をしてこの舞台は作成されたのだろうかと思いを巡らしてしまいます

他のテーブルの議論も気になる

最終的には、再び各テーブルごとに話し合って、罪状及び量刑をテーブルごとの多数決で決めます

これが予想以上にバラバラでした。僕が座っているテーブルではほぼ反対者がいない状態で罪状の決定がなされたのに、その罪状が全体では少数派。同じ話を聞いてたのになんで?と正直びっくりしました

他の観客も同様の感想だったようで、各テーブルの評決が発表されるたびに思わず声を上げてしまう人多数(僕もそうだったかもしれない)

同じ証言を聞き、同じ証拠を見ているのにどうして出す結論がこんなに違うのかにすごく興味がわいてしまいます

とはいえ、自分のテーブル以外の議論を見聞きすることができないというのが、この舞台の宿命です。ちょっと歯痒いものをかんじました

マルチエンディングなんだろうな

最後の容疑者の台詞は意味深でした。おそらく、回によって(結果によって)台詞は変わっているのだと思いますが、台詞内容を勘案すると僕の判断は間違っていたのだなぁと感じたり

そういった意味では、とても衝撃的なエンディングでした。シーンとしてはとてもあっさりしたものだったのですが

終わった後、疲れてました

観劇とは違う頭の使い方をしました。演劇と言っていいのかとちょっと迷うほど異質の演目

舞台上の物語であるということを忘れて、メモを取り、証拠を何度も見直し、質問に耳を傾け、議論をしました

心地よい不思議な疲労感でした

平成21年にはじまった裁判員制度。それに参加したとすれば、裁判はこんな感じなのかなと感じさせるような臨場感がありました

導入当初から、いつか郵便受けに裁判員の指名の連絡が来ていないかと期待し続ける日々です。そんな夢がちょっとかないました

実際の裁判員裁判についてどのくらい調査されて作られたのかわかりません。でも、相当真実味を帯びたつくりです。

終わった後もすぐには現実世界にもどれず、役者の方々の虚構だとなかなか受け入れられないほどの臨場感のあるぶたいでした

まったく新しい体感型のエンターテイメントではないでしょうか

チケットシステムも斬新でした

ネットで申し込んでメールでチケットが届く仕組み

当日申し込みだったのですが、午前中に前売りを購入することができました

↓このサービス

こういうのが進んでくれるといいな。チケットなくしたり忘れたりが激しい私としてはうれしい仕組み(この間も以下の芝居で失くしたorz)

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