[劇評]劇団ギルド「恐竜の息子たちへ-ロミオ&ジュリエット21-」@シアターモリエール

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全体としては、よくまとまっており楽しめた作品。出演者の数を考えるとそれだけでも驚異的な演出力があったというべきか…但し、2時間の長さは客席に優しいとはいえず、何故、わざわざ入れ子構造の二つのストーリーを並列させたか疑問が残る。

劇団 劇団ギルド
題名 恐竜の息子たちへ-ロミオ&ジュリエット21-
公演期間 2001/06/08~2001/06/10
高谷信之 演出 高谷信之
出演 小野千秋、手代木義之、岡田悟一、田口潤、佐伯綴流、永島広美、伊藤柘榴、吉田貴子、小松恵理香、岡村勝之、倉本展子、村上徹雄、志賀顕弐、大杉尚幹、加藤敦洋、早川由里子、長田啓、恩田江里子、加藤善丈、佐藤友香、伊藤大介、石井啓太、中谷守男、今井徳太郎、山本政広
劇場 シアターモリエール(新宿)
観劇日 2001年6月9日

<<ストーリー>>

 8人の老婆達は、面倒を見てもらっていた福祉院を抜け出し、山奥へ。そこで若さへの憧れから恋愛を疑似体験したくなり、ロミオをジュリエットを演じることになる。

 

<<感想>>

題名にもあるようにロミオとジュリエットがモチーフ…というか、ほとんどまんまロミオとジュリエットだった。一応、老婆達の福祉院の脱走話を基盤にした入れ子構造になっているが、芝居時間のほとんどは原書から今回新たに演出の高谷氏が訳しなおしたというロミオとジュリエットがそのまま演じられた。

このロミオとジュリエットの部分は、非常に楽しめた。訳がこなれていたということか、芝居の構成や演出が無難にこなされているおかげで、安心してみる事ができた。特に、ジュリエット役のほとんど(注.後述の理由によりジュリエット役は途中交代をする)を演じた永島さんの演技はなかなかかわいらしく、いわゆるジュリエット像をうまくこなしていたと思う。殺陣とか、シェークスピア特有の無闇に修飾詞の多いセリフ回しをうまくこなし切れずに、冗長な印象を与える役者もいたが、それも気になったのは前半だけで後半はそれなりにテンポがあって良かったように思う。

演出も、バルコニーのシーンの演出等はオーソドックスだが、なかなか胸に迫ってくる部分もありよかったと思う。また、かなり高い段のある舞台をうまく使っており演出の手練のようなものを感じた。(通常は、あれだけ高い段があると見ていてつかれるもんなんだが…適切な配分で高い段を利用していたように思います)

役者としても、ジュリエット役の永島さんだけでなく、乳母役の早川さん、神父役の今井さんなどの演技はなかなか安心して見られる演技で良かった。欲を言えば、少し原作の枠組みからはみ出してでも神父役はもっと色々やれたのではないかと思う。抑えすぎて型にはまっている気がして不満だった。
逆に、その他の役者さんは全体に堅いというか、のびのび芝居をまだ出来ていないという気がした。その結果が、特に長いセリフがあるときに見てる方がつらいという状況を引き起こしていたような気がする。

ただ、そういう問題よりも更に大きな問題なのは、この芝居そのものの全体構成。

どうしても理解できなかったのは、何故福祉院を逃げ出した老婆達が演じるものとしてこのロミオとジュリエットを語らなければならなかったのかということ。最後あたりに、老人達をもののように扱う福祉院の実態が明らかになったりするのだが、はっきりいって付けたしというか、ロミオとジュリエットの最後の余韻に浸るのを邪魔するマイナスの印象しかなかった。更に、この入れ子構造の為に、途中でジュリエット役の女優が交代するし、逆に芝居のほとんどをジュリエットだとか乳母とかモンタギュー/キャプレット両家の若者を演じる必要のある役者が老婆をやっててもちっとも老婆に見えないし….。

百害あって一利もない演出だとおもうのですが….。

シアターモリエールの椅子の座りごこちが良くないこともあって、二時間の芝居時間が結構長く感じただけに、この構成だけは首をひねらざる得なかった。(後、タイトルも意味不明だった)

 

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