[劇評]劇団やりたかった「ねぇ、お化粧して首に境目で来ているよ」@参宮橋トランスミッション

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浅草の路上で、主宰の木下さんからチケットを手売りされたのが縁で見に行った舞台。販売方法の特異さからもっと不思議な舞台を想像していたが、思った以上にオーソドックスな人情喜劇。バランスは良いものの、全体として技倆不足が気になった


劇団 劇団やりたかった
題名 ねぇ、お化粧して首に境目で来ているよ
公演期間 2019/01/17〜2019/1/29

かぐやまふたみち

演出 YammarSunshine
出演 木下咲希:四女さくら()
三浦涼子:三女うめこ(東京で売れない女優)
鈴木佳:次女きょうこ(とりあえず色気をふりまく)
佐々岡美幸:長女めぐみ(母の介護に集中していた)
仁木ろはん:文房具屋(八百屋ときょうこを奪い合い)
金子正憲:八百屋(文房具屋ときょうこを奪い合い)
尾崎楓:三城さん(うめこさんと因縁の関係)
田村康太郎:葛城健一(東京の演出家)
火山功士:後藤くん(今はさくらの彼氏。前は…)
有木太郎:道場(めぐみの彼氏。京都在住)
劇場
参宮橋トランスミッション(参宮橋)
観劇日 2019/01/20(マチネ)

目次

浅草の路上で買った手売りチケット

この劇団、知りませんでした
飲んでた浅草でたまたま一人芝居でチケットを手売りしていた劇団主宰の木下咲希さんに出会い買いました

別に酔った勢いというわけではないですが、こういうきっかけで芝居を見に行くのもたまにはいいもんです

笑ってかつほろっとさせる人情喜劇的な作り

上記のような不思議な出会い方をした劇団ですし、主宰が一人芝居で手売りをしているというスタイルなので、正直芝居の中身はまったく想像できていませんでした

頼りの演劇感想文リンクにも、僕が見たのと同様の下北沢の路上で木下さんがやっていた一人芝居についてのまねきねこさんの感想が載っているのみ

ちょーアングラとか、ちょー不条理劇とかそういう芝居だったらどうしよう…と思いながら行きましたが、意外にも先日見た大森ヒロシプロデュースを思い出させるような人情喜劇的な作り

逆に普通過ぎてちょっと肩透かしを喰らいました(いや、アングラや不条理よりは良かったのですが 笑)

四姉妹と….流行っているのか?

いや、きっとそんなことはないと思いますが、姉妹がいてその各々の男がダメでっていう構造は、昨年末見た根本宗子の舞台そっくりの構造でした

また、四姉妹が葬式でという話は、見ていませんが昨年末のONEOR8のゼブラを思い出させます

流行っているはいいすぎかもしれませんが、意外と物語が作りやすい構造なのかもしれないなとか思っていました

ここからはネタバレします

一点突破型のストーリー展開で、なんとか乗り切った?

芝居をみている最中は、わりと「これどうやって最後収拾つけんだろう?」と思いながら、先の見えないというか割とダラダラとした物語を眺めていました

ちょっとホロッとさせるところとか、にやにやだったり、ハハハだったりの笑いがあるので飽きるわけではないのだけど印象に残るシーンが最後近辺までなくて…と思っていたらラストシーンに向けていきなり伏線の回収が始まった感じでした

まさか、みんなで売れない女優のやった過去の舞台を再現し、しかもその謎の決め台詞をみんなで言うというのがラストシーンになるとは思いませんでした

完全にうめこ役の三浦涼子さんの演技が観客をノせないと成立しない終わり方で、最終的に彼女の演技が良かったから、僕的にホッとして見終えることができた舞台でした

三浦さんの演技は、実は相当にシツコイ感じが強くて、芝居の前半はまったく受け付けず他の役者さんに目をやっていたのですが、後半、虚勢を張っているのがバレてきて本音が垣間見える辺りの心の動きが見えてきた辺りからようやく感情移入をして見ることができるようになりました

その変化がなければ(それが演出プランだとすれば術中にハマったわけですが)、最後のシーンを見てもすごく白けた印象で終わってしまったと思うので、今回の舞台の成否は完全に三浦さんの力に寄っていたと思いました

バランスは取れているが、力不足を感じる

最初に書いたように、非常にオーソドックスな作りの物語で、俳優の方もどなたもちょっとずつおかしな人をうまく演じているので、全体にバランスが良いなと思いながら見ていました

一方で、印象に残りにくい役者さんが多く、結果としてすんごい良かったにならなかったと思いました

また、90分という上演時間は、見ている側からすると助かる適切な長さなのですが、一方で個々のシーンは妙に長くて「ダラダラ」とした会話や繰り返しの多いセリフが多かった気がしました

結果として、90分の芝居にしては、印象が薄い物語になってしまったのは残念で、もっとシャープに削るべきところは削りつつ、話を作り込まれていればまた印象は違ったのかもしれません

結論としては、知り合いの芝居を見に行ったというスタンスで見ると上出来の部類に入ると思うのですが、良かったよ−と人に勧められるかと言われると、今作だけでは判断できないという印象を持ちました

観客は入っているが、制作努力がほぼ見えない…

これは、芝居の内容にはまったく関係ない話ですが、当日配布されたチラシ類にも誰がどの役という配役表はなく、カーテンコールで役者紹介もなし。

また、せっかく来ている観客の名簿を作るためのアンケートさえ配らないというのは、潔いといえば潔いですが、一体どうやって観客を呼んでるんだろうと不思議に思いました

ロングラン公演の割に、観客席はほぼ満席で、これだけのお客をまさか主宰の手売りだけで呼んだとは思えず、一方でせっかく来た観客に次回公演の案内を送るためのなんらかの活動をされておらず…なんかミステリー。

上記のように、今作だけではこの劇団の評価は下せないなぁと思いつつ次回作の予定を知るすべがないのが気がかり。また、路上で木下さに出会う日を待つしかないのか?

以上 劇団やりたかった「ねぇ、お化粧して首に境目で来ているよ」の感想記事でした

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