[劇評]東京芸術劇場「秘密の花園」@東京芸術劇場シアターイースト(池袋)

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東京芸術劇場の「秘密の花園」は、寺島しのぶさんや柄本佑さんのキャスティングの妙もあり、きれいにまとまりながらも、アングラな雰囲気もうまく残した舞台でした。この脚本の吸引力に惹かれて人生4度目の観劇。20年来謎だった物語解釈について自分の中で新しい発見がありました
劇団 東京芸術劇場
題名 秘密の花園
公演期間 2018/01/132018/02/04

唐十郎

演出 福原充則
出演 寺島しのぶ:いちよ/もろは
柄本佑:アキヨシ
玉置玲央:かじか
川面千晶:千賀
三土幸敏:医師
和田瑠子:女
福原充則:中年男
池田鉄洋:殿
田口トモロヲ:大貫
劇場
東京芸術劇場シアターイースト(池袋)
観劇日 2018年01月20日(マチネ)

あらすじ

当日劇場で配られた配役表より

日暮里にある古びたアパートの一室。この部屋に暮らすのはキャバレーのホステス「いちよ」とポン引きの夫「大貫」。この夫婦のところに店の客であった「アキヨシ」はもう二年もの間、毎月自分の給料を何の見返りも求めずに届けている。そんなアキヨシにいちよはよく「生まれる前の港で、契りを交わした」という話を語り聞かせていた

一方で、いちよは町の権力者「殿」の甥っ子である「かじか」から熱烈なプロポーズを受けていた。そのかじかにもらった婚約指輪がどうしても薬指から抜くことができない。いちよをめぐり、3人の男達の想いが交錯する中、アキヨシはいちよにある事実を打ち明ける。そこへアキヨシの姉「もろは」も現れ、日暮里の森がおおきくざわつきだす

気になっていた舞台に足を運びました

以下の記事で、過去のキャスト比較表を紹介しましたが、僕自身この舞台を見るのは演出/出演者を変えた過去の再演歴の中で、4回目になります

そういった意味では、自分の中でもかなり再演版を見ている舞台になります(これ以上なのは、多分「髑髏城の七人」くらい。)
再演を見始めると新作を見る機会が減ってしまうのも、悩ましいところなのですが、この脚本にはなんか不思議な魅力があり、4度目の観劇を決めました。

キャストは全体にとても良かったです

寺島しのぶさんのいちよ/もろははすごく良かった

私の中で、この「いちよ/もろは」役のベストは、初めて見た1998年版、1999年版の唐組女優の飯塚澄子さんなわけですが、寺島しのぶさんのいちよ/もろはは予想以上に良かったです

なんかお高くとまっている印象で、堂々とした女は演じられるけど、いちよのような場末のホステス感なんかだせるのかなぁという偏見を持っておりましたが、はすっぱな女性を演じさせても十分以上の色っぽさがあり魅力的な役でした

朝の連ドラ(NHK「あさが来た」)では義母と義理の息子という関係の柄本佑さんとの恋人という設定も、恋愛関係が成立するように見えるのかという不安を感じていましたが、まったく違和感がありませんでした

つくづく女性は年齢に縛られない存在なんだと実感しました

不安を感じた原因は、「いちよ/もろは」を三田佳子さん、アキヨシを松田洋治さんが演じた2006年版の感想があったからです。その不安は杞憂でした

池田鉄洋さんのあのメイクはどうした!!?

池田鉄洋さん、今回すごいメイクで出てきます。IndeedのCMの泉里香さんの→節分編のメイクとそっくりな赤白顔

実は公演情報が、発表された時、池田さんの役は、かつて唐十郎が扮した事がある「かじか」か、大久保鷹が上記のシアター1010版で演じた「殿」のどちらかだろうと想像していて、「殿」になっていたのは想定通りだったのですが、出てきた時のメイクにはびっくりしました!

ただ、見ているうちにだんだんメイクの理由がわかってきました

池田鉄洋さんの「殿」の迫力がイマイチなのです。不気味な町の実力者、無理を通して周りがついてくる狂気のようなものを身にまといきれていません

その為、出落ちとさえ言えるあのメイクでその辺を補完していたのかなと感じました。うーん、もうこうなると古田新太さんくらいつれてこないと「殿」が出来る人はいないのかもしれません

若くてかっこいい「かじか」は新鮮でした

「殿」の権力をカサに着て、無理やり婚約を迫ってくるかじかをイケメンの玉置さんが演じたのも、新鮮でかつ当たりだったと思いました。変な話、こんな好青年ならいちよも、かじかを選んでもいいんじゃないのと思わせるくらいです(それが、脚本意図とは異なるのもわかりますが)

正直、テレビで何度か拝見はしたことがあるものの、がっつり演技されている玉置さんを見たのははじめてだったのですが、とてもエネルギッシュな演技で他の舞台も見たくなりました

柄本佑さんは、はまり役でしたね

唐組版(1998年、1999年版)を見た時、飯塚澄子さん(いちよ/もろは)と稲荷卓央さん(大貫)の迫力に押されて、そもそもアキヨシがこの物語の主役だと思わなかったくらいだったのですが、今回の舞台では非常にわかりやすく柄本佑さん演じるアキヨシが主役を演じていました

血のせいだとは思いませんが、やはり過去に見たどのアキヨシよりもアキヨシらしかったように思います

適度な狂気と生真面目さの共存する演技は、さすがでした

一方で、田口トモロヲさんは、「いい人」すぎて、ちょっと違和感がありました。狂気が足りないという感じです(こっちの方が気持ち悪さがもっとあれば物語に深みが増えたのにとおもいました)

演出は、しごくシンプルで、物語の核心をうまく浮き彫りに

遊びの少ない演出だったように思います

かつて見たバージョンでは、夢に出てきそうな大久保鷹さんの看護婦がついてくる医師の役とか、殿の暴走とかもっと激しかった気がしたのですが、今回は主要なキャスト(いちよ、アキヨシ、大貫)の物語に焦点があたっていて、脇道にそれることが少ない演出でした

(4回見てわかるというのもどうかとは思いますが)

すべてはアキヨシの心象風景の芝居なんだと今更気づきました

観劇後に、ロビーでぼーっとしていた時にたまたま隣にいた二人の年配の女性の会話が耳に飛び込んできました

「なんか難しいお話だったわね」
「結局、いちよは死んだの、生きてたの?」

確かに、わかりにくい話でした。特に、途中で寺島しのぶさんが、いちよともろはを行ったり来たりする当たりは、何が何やらという感じになってしまいます

物語の中で、すこしづつわかってくるのは、アキヨシが姉「もろは」に持っている屈折した思いであり、「いちよ」に対しての無償の愛情は、彼の屈折した姉への愛情の裏返しなのだということです

現実世界では、「もろは」と「いちよ」はまったく似ていないのかもしれないというとこまで今回気づきました

途中、大貫に対してアキヨシがもろはといちよがそっくりだと主張しつつ、それを聞き流す大貫の姿でそれを確信しました

観客は、アキヨシ同様にいちよともろはがそっくりに見えます(二役なので当たり前ですが)。でも、それはアキヨシの視点で世界をみさせられていることの証左でもあるのでしょう

この作劇方法は、昔見た三谷幸喜さんの「ペッジバートン」に似ていると思いました。浅野和之さんに、主要なキャスト以外のすべての登場人物を演じさせたこの舞台で、主人公である夏目漱石(野村萬斎さん)に、「全員が同じ顔に見える」と言わせた時に、浅野和之さんのキャスティングの意図がわかりました

あれに近いものをこの脚本は目指していたんだなと(本当に今更ながら)気づきました

そして、そう考えた時、この舞台上で起こっているすべての事が、アキヨシの妄想なのかもしれないとさえ解釈できてしまいます

話のどんでん返しの多さにハラハラさせられる展開

だからこそ、観客はずっと舞台上で起こる出来事に驚かされ、翻弄されていきます

その辺をすごくうまく誘導してくれた演出はよかったと思いました

音楽の使い方(ブラームスってなんであんなに劇的展開に合うのでしょう)や、本水を大量に利用したアングラさながらの演出と、どぎつくならない照明効果と小綺麗な舞台装置の融合も、うまいこと両方のいいところどりをしていました

ラストシーンは、こういうアングラ系芝居をみるといつも釈然としないのですが、それはしょうがないですね(多分、屋台崩しされないとなっとくできないような気がします)

以上 東京芸術劇場で上演された「秘密の花園」の感想記事でした

過去の秘密の花園の観劇記録

しかし、最初に見たのが20年前って…観劇の感想があまりに簡単で逆に自分でわらってしまいました。

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