本多劇場進出を果たした大森カンパニープロデュース作品は、一見、つながりのない様々な過去を持つ登場人物たちが、各々の内面をお互いにさらけ出し合うことで変わっていく物語が秀逸。笑いながら泣けるという稀有な経験ができる「人情喜劇」の面目躍如の舞台でした
劇団 | 大森カンパニープロデュース | |||||
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題名 | あじさい | |||||
公演期間 | 2019/02/20〜2019/2/24 | |||||
作 |
竹田哲史/大森博 | 演出 | 大森博 | |||
出演 |
坂本あきら:横やん(解体業の日雇い。足が痛い) 山口良一:カバちゃん(解体業の日雇い。昔は鉄道が好きだった) 天宮良:千葉ちゃん(解体業の日雇い。ギャンブルに狂った過去) 小浦一優:オギちゃん(解体業の日雇い。仕切り役。(=芋洗坂係長)) 大森ヒロシ:松ちゃん(解体業の日雇い。何故か良いスーツを持っている) 長峰みのり:史帆(あじさいで働く料理のできない元看護師。彩の姉) 杉本有美:彩(日雇いが集まる店・あじさいを切り盛り) 伽代子:タティアナ(近くのロシアンパブで働くベラルーシ人) 嘉人:後藤(近くの公園で佇んでいた男) 吉川友:鈴(ひょんなきっかけで「あじさい」を訪ねてくる女) |
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劇場 |
本多劇場(下北沢)
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観劇日 | 2019/02/24(マチネ) |
目次
ついに、本多劇場に人情喜劇が進出!!
僕が初めて見たのは、「あまから(2010)」なので、かれこれ9年前。最初は、中野のシアターBONBONでした
10年近くの時を経てついに、下北沢の演劇の聖地「本多劇場」への初進出作を見に本多劇場に伺いました
なお、再演作品なのですが、僕は初演(2015年)はみれていません
伏線が巧みにはられ、絡み合う人間模様
個々の過去をあまり語りたがらないような境遇である日雇い労働者たちの物語であるため、当初はお互いの過去に立ち入らないというスタンスで物語が始まります。
毎日のように顔を合わせ、仕事終わりに飲む間柄でありながら、お互いの深いところまで踏み込むことなくただバカ話をしてすごしている男たちは、境遇は違っても世の中にありふれた光景のように思います
この脚本は、そのバカ話の中に様々な伏線を散りばめておき、それが後でストーリーの非常に大きな役割を果たす仕組みになっていることです
だからこそ、観客の心が揺さぶられ、笑っていたはずのジーンとくるシーンにいつのまにか転換しているということが起こっています
いつものことですが、完全にやられました
ここからはネタバレします
あじさいは二度咲く
題名のあじさいは、男たちが集うお店の名前である「味彩」であると同時に、物語のテーマのひとつである「本物の花を咲かせる」という花の特徴との共通点を表しています
装飾花という見た目には花に見えていても、実際には花としての機能を果たさないアジサイの花の特徴とその中に隠れるよう咲く本物の花のように、彼らの内面の本物が現れます
回収しきれない伏線もあり
- 天宮さん演じる千葉ちゃんと、坂本さん演じる横やんの親子関係はあったのかなかったのか
- 嘉人さん、演じる後藤は、もとの会社に戻ってホッチキスとめつづけるのか?
- 山口さん演じるカバちゃんは、吉川さんえんじる鈴に名乗り出る日は来るのか
など、回収されるたびに新たに生まれる伏線のすべては回収されないままに終わります
それもまた、余韻を残す効果があるんだなと思います
沖縄設定だけが解せない
他の設定はだいたい伏線回収されるか、上記のように余韻を残す効果があったように思うのですが、嘉人さん演じる後藤さんが、沖縄から出てきたという設定だけなぜが浮いてるようにかんじました
会社に理不尽に転勤を言い渡された先は福岡だし、かれのしゃべり方以外に沖縄っぽさはありません
ただ、そのしゃべり方だったからこそ煮え切らない、話し下手で色々な誤解を招く後藤というキャラクターが成立していたのは事実なのですが。
他にもそういう人となりを示す演出や脚本はありそうな気がしたので、なぜ沖縄になったのかがちょっとひっかかりました
本多劇場は広かった…
終演後のなかなか鳴り止まない拍手を見てもこの舞台を観に来た人の満足度はとても高かったと思います
それだけに、土曜日の午後公演でありながら本多劇場の客席の2割くらいが空いていたのは残念でした
良い舞台であることは確かですが、5日間しか公演期間がないとさすがに始まった後で口コミで良さを広げるのは難しいものなのかもしれません
私自身は、間が空いてしまった時期はあるものの割と頻繁にかよっていたカンパニーで、実力も十分と思っていただけに、この客入りはちょっと驚きました
やはり長い公演期間を取って口コミで観客を集めていくタイプの劇団なのかもしれません
そういえば…
今回は、目立ったポカ(台詞が飛んでたり、謎の沈黙があったり)というのは余りなかった気がします
なんかちょっと期待していたこともあり、少しガッカリしたかも
いや、ないに越したことはありませんが
以上 大森カンパニープロデュース「あじさい」の感想記事でした
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