[劇評]トム・プロジェクトプロデュース「芸人と兵隊」@東京芸術劇場シアターウエスト

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古川健さん、日澤雄介さんの劇団チョコレートケーキのコンビの作品でありながら、柴田理恵さんという劇薬との化合によりチョコレートケーキとはまったく味の違う独特なものでした。その新しい化学反応が心地よく笑いながら、考えさせられる印象にのこる舞台になっていました。


劇団 トム・プロジェクトプロデュース
題名 芸人と兵隊
公演期間 2019/02/13〜2019/2/24

古川健

演出 日澤雄介
出演 柴田理恵:花畑良子(桂銀作と夫婦漫才)
村井國夫:桂銀作(花畑良子と夫婦漫才)
カゴシマジロー:春田左近(右近の弟弟子だが、漫才コンビをひっぱる)
高橋洋介:柳屋亀鶴(ただ一人の慰問団の経験者。落語家)
向井康起:春田右近(桂銀作の一番弟子。漫才師)
滝沢花野:祇園桜子(三味線を弾く端唄の女芸人)
劇場
東京芸術劇場シアターウエスト(池袋)
観劇日 2019/02/17(マチネ)

久しぶりの古川さん/日澤さんコンビ作品

結構気に入っていると公言しておきながら、最近気付くと見逃しているチョコレートケーキの舞台

昨年も結局見逃してしまい、最後に見たのは以下のマコンドープロデュースの作品(演出は日澤さんではありませんが)

劇団チョコレートケーキの公演情報に気づくのが遅く、気づくとチケットが取れないということが続いていたのですが、外部の公演ならばとチケットゲットしてみました

というわけで、今回も本公演ではなくプロデュース作品を見に伺いました。トム・プロジェクトプロデュースの「芸人と兵隊」です

ここからはネタバレします

柴田さん、村井さんが本当にお父さんお母さんみたい

芸人による戦地慰問団を描いた当作品は、夫婦漫才を行う桂銀作(村井さん)/花畑良子(柴田さん)の二人を中心に結成された慰問団の物語です

史実でも(この物語のベースは後述する史実)、団長として大陸に渡ったみたいですが、村井さんと柴田さんの夫婦漫才コンビが、慰問団の若者たちの両親のように見える作劇は良かったです

悲惨な戦争という現実の中にあっても家族の物語として見えるが故に身近な世界を感じることができました。

特に頑固でも責任感と優しさを持つ父親的な役割の村井さんと、気遣いと明るさの母親的な役割の柴田さんが舞台上のすべての人を包み込む様子がとても温かいものを感じさせてくれました

笑いながら泣くような舞台で印象に本当に残る

チョコレートケーキにしては、笑いが多い舞台でした。舞台の登場人物のすべてが芸人という設定であるため、芸を披露するシーンは勿論、その物語内の日常もいつも笑顔が溢れています

誰一人お笑い芸人のいない座組ですが、各々が披露する漫才、端唄、落語は本格的で聞かせてくれます

柴田さんと村井さんの漫才なかでもよくできていて、懐かしい感じの話芸でありながら笑わせてもらうことができました

そういった笑いがあるからこそ、合間に挟まれる戦争を感じさせる哀しいエピソードが、ひときわ感情を波立たせてくれます

特に、高橋さん演じる落語家亀鶴が語る戦死した弟弟子の才能を悔やみ、村井さんに諭されて自分がその思いを嗣ぐと決心するシーンは感動的でした

ちなみに数少ないながら古川さん、日澤さんの舞台にしては笑いが多いと感じていましたが、舞台後のアフタートークによると柴田さんは人生で一番笑いの少ない舞台だったとのこと。確かにワハハとは違うなぁ。

暗転の使い方がうまい!でも多い!!

場面転換が多く暗転を多用しているのは、ちょっとなぁとか思っていたのだけど意外に集中が切れない。
不思議に思っていたのが、途中で理由がわかりました

場面転換はイコール慰問先から慰問先への移動ということで、常に暗転中はトラックでの移動音が流れてます

よくある芝居の暗転は、音楽かなにかをかけて物語そのものの進行を止めていますが、この演出だと暗転中も慰問団の移動を想像しながらまちますし、結果として物語に対しての集中力が切れませんでした

考えてみれば、暗転の前後のセリフの中で、移動を暗示するものが含まれていたこともそういった効果があったと思います。

あい変わらずの緻密な脚本と抑えた演出に満足しました

そんなにたくさん作品をみたわけではないので、えらそうですが期待どおりの緻密な脚本とそれを活かした抑えた演出に満足しました

戦争が題材の舞台でありながら、戦争の影をすこしだけ感じる程度でとどめていたことが想像力を膨らませました

そして、プロデュース公演ならではの醍醐味ですが、ワハハ本舗の柴田理恵さん、村井國夫さんという方とこの脚本との出会い/融合は本当に良かったです

アフタートークで実話が元になっていると知りました

実は、この慰問団の話をまったくといっていいほどしりませんでした。

アフタートークで村井さんが、この話の元になった桂金吾・花園愛子の話をしてくれて元ネタがあることを知りました

柴田さんの役どころだった、花園愛子さんは、享年36才とのこと。劇中より若い感じもしますが、桂金吾さんが団長だったのは事実のようです

笑いについての会話が演劇を思わせる

形のない笑いが観客の心に残るというコンセプトが何回か繰り返されます

戦死した落語家の話であったり、村井さんが語る芸人の醍醐味についての会話だったり。

舞台上からこの言葉を聞く僕の中では、「笑い」が「演劇」に変換されていました

形のないものを観客に贈って、形のないものを観客から受け取る芸人としての喜びを、語るシーンはそのまま「ナマモノ」である演劇の世界と同じだと感じていました

勝手な思いですが、この劇作をしていたすべての人がそのように感じながら作っていたのではないかと感じていました

以上 トム・プロジェクトプロデュース公演「芸人と兵隊」の感想記事でした

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