[劇評]絶対安全ピン「斬新トロール」@萬スタジオ

広告

脚本が未整理で、見ていて舞台上で起きている事が何一つ客席と共有することができない。 舞台上が客席と遠く離れた所で空回りしている印象。舞台に関係しているあらゆる人(役者やスタッフ全て)が芝居のコンセプトを共有していないのではないかという印象を強くもった。 (極端な話、当の脚本/演出を担当した黒田氏さえもこの芝居で何を表現しようとしているのかをつめきれていないまま上演のこぎつけたのではあるまいか)

劇団 絶対安全ピン
題名 斬新トロール
公演期間 2001/03/23~2001/03/27
黒田圭 演出 黒田圭
出演 高野梓、石井崇、黒田圭、岩月邦彦、笠島清剛、長野由布、山田裕子、船串奈津子、魚返洋平 高橋牧、武藤陽子
劇場 萬スタジオ(大塚)
観劇日 2001年3月24日

<<ストーリー>>

永遠の命を持つ砂の海の底に暮らす蛇の皇女が、人魚姫のように人間に変えてもらって地上に出る。地上で、砂の海から髑髏を釣る漁師と暮らす事になるが….

<<感想>>

何も先入観を持たずに見に行った劇団。

舞台装置は水準以上のインスタレーションになっているが、いかんせん芝居の内容となんら関係ない作りになっていてものすごく気になった。異世界なり砂の世界がこの芝居の舞台のはずなのに、(僕の想像力のなさからか)舞台装置は何ひとつそういうものを感じさせない。客席に最初座った時に装置のあまりにちゃんとした出来の良さから「もしかしたら」と思わせていたものは、芝居が始まって10分もしないうちに裏切られた格好。装置だけできが良くても、芝居とあってなきゃ全然だめという見本みたいなもの。

衣装も同様の事を思った。なんか和風な感じの衣装なんだけど、この芝居の衣装としてこれがあっているという感じはまったく感じなかった。

音響も統一感がなく、意味不明。照明もロスコーを多用している割には効果的に使われているとはいいがたく、暗転の使い方もいまいち。

役者にいたっては、ほとんどが好き勝手に(いいかたを変えると、なんら方向性に統一感がない演技を)やっている感じがして見ていてつらい。舞台上と客席の距離をものすごく遠く感じた。

めちゃくちゃ言っているような気がしますが、シーンによっては「お!」と思うシーンがないではない。特に砂の海に出て漁師が魚ではなくどくろを釣るというシーンとかはシーンとしてのイマジネーションは荒削りながらかつての遊眠社を彷彿とさせるものもあった。ただ、無理やり最後にその世界についての説明を加えるようなシーンが要らない。

とにかく脚本が未整理で、脚本を書いている最中の途中稿をそのまま舞台にしたような印象。それでも役者や演出がやりたいことを理解して役者スタッフが一丸となっていれば、もう少し勢いのある舞台になったような気がするが、それも出来ていないんじゃないだろうか?

役者として気になったのは、高野梓さん。ちょっと変わった雰囲気を持っているし、場さえ与えられれば面白くなるかもしれないと感じた。逆に、どうしても演技が好きになれず出てくる度に苛立っていたのが、蛇の王をやっていた黒田圭さん。彼が、作演出だと芝居が終わった後に気づいて、なんとなく全てを納得。

 

広告

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です