鈴木聡さん脚本、鵜山仁さん演出という組み合わせは、東京ヴォードヴィルショーにとってお初の組み合わせだそうです
ラッパ屋のサラリーマンの悲哀を描く物語にしっかりとヴォードヴィルショーの方々がハマっていてそれでいていつものヴォードヴィルショーとはまたちょっと違う面が見られたように思いました
最後のあたりの演出は、文学座っぽいかなぁとか思いながら見ていました
劇団 | 東京ヴォードヴィルショー | |||||
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題名 | 終われない男たち | |||||
公演期間 | 2018/09/14〜2018/09/23 | |||||
作 |
鈴木聡 |
演出 | 鵜山仁 | |||
出演 |
佐藤B作、大迫右典、佐渡稔、山口良一、綾田俊樹、まいど豊、桜一花、大森ヒロシ、石井愃一、山本ふじこ、市瀬理都子、平田美穂子、京極圭、玉垣光彦、たかはし等、村田一晃、市川勇、斎藤清六、木村靖司、福本伸一、弘中麻紀、石倉三郎、あめくみちこ、瀬戸陽一朗、中田浄、石川琴絵、喜多村千尋 (詳細の配役は記事の最後にあります) |
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劇場 |
本多劇場(下北沢)
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観劇日 | 2018/9/23(マチネ) |
目次
東京ヴォードヴィルショー☓ラッパ屋☓文学座
東京ヴォードヴィルショーは、過去に何度も見に行っている劇団です
佐藤B作さんを始めとするおじさんたちの演技が作者や演出が違っても、いつも同じ演技でそれがある意味とても安心感のある劇団です(褒めてます。念の為)
初めてみたのは、1998年の「アパッチ砦の攻防」
ラッパ屋も僕が東京で演劇を見るようになった割と初期(1997年に東京に二度目の上京をし、演劇をたくさん見るようになった時期)に初めて見ています。「エアポート97」
どちらの劇団とも20年近いお付き合い(一方的ですが)
どちらも好きな劇団で、全作品とは言わないまでも機会があれば伺うようにしている劇団です
そんな2つの劇団の初の邂逅となる舞台はどんなものになるのかなぁと思いながら、劇場に伺いました
期待通りのサラリーマン喜劇でラッパ屋メンバーも加わった良質のコメディでありながら、やはり東京ヴォードヴィルショーの皆さんの演技は変わりなく、確かに東京ヴォードヴィルショーでしかできないサラリーマン喜劇になっていました
楽しい化学反応を感じる舞台でした
ここからはネタバレします
人生を一日に例えると19時30分くらいの物語
先日、ツイッターでとても気になるツィートを見つけました
【あなたは今、何時ですか?】
人生を80年間と仮定して、その80年を24時間で例えてみると、0時:0歳
3時:10歳
6時:20歳
9時:30歳
12時:40歳
15時:50歳
18時:60歳
21時:70歳
24時:80歳
と表せます。あなたは今、何時ですか?
— マノマノ⭐オーガニック伝道師⭐ (@manomano_farm) September 20, 2018
なんか色々納得してしまうツイートで、自分の年齢がちょうど午後3時でおやつの時間と思うとちょっとおかしくなったり、色々考え込んでしまったり…
今回の物語の主人公たちはほぼ65歳という年齢設定(一部もっと上の人もいるけど)
上記の1日で例えれば、19:30から21時にかけての時間帯の人々の物語です
働き方改革とか言われて、最近の若者世代にとっては、当然仕事を終えてプライベートを楽しむはずの時間帯ですが、僕も含めてバブル世代の人間にとっては、まだまだ終わりきらない仕事に追われているような気になる時間です
そして、物語の主人公たちもちょうどそんな世代が、そんな時間帯にあたる人生の節目でやり残したことがあるような気がしてダラダラと会社のデスクで帰るかどうかを迷っているような話でした
物語の流れは、広告代理店勤務経験のある鈴木聡さんらしい、バブル時代の夢を引ずる弱小CMプロダクションの社長が若い頃の夢をもう一度と目論むサラリーマン喜劇であり、舞台も現代の新宿です
新宿に勤務する私から言わせてもらいますが、あんな町まだあるかぁ?という疑問はありますが
その主人公たちに共通する根底の心持ちは、上記の19時30分くらいに帰るかどうか迷っているおじさんたちと同じのような気がしました
佐藤B作さんって本当に変わらない!!(いい意味で)
この舞台の主役は佐藤B作さんなのですが、本当にこの人は変わらないと改めて思いました
そして、代替が効かない役者さんの一人だなと思いました
彼の演技は本当に泥臭くて、しつこくて、ギラギラしている男を演じさせると右にでる人が思いつきません
この舞台においても、鈴木聡ワールドでありながら、今までラッパ屋にはけして出てこなかったキャラクターを演じていると思いました
無茶を無茶で通すバブル時代のCMプロデューサーという役柄で、まわりを無理やり引きずり回し、最後に町を巻き込むライブをやってしまうという物語の強引さも、彼のキャラクターなしには消して成立しない物語なのだと思いました
あと、いつも驚嘆するのですが、なぜあの発声方法で2週間に及ぶ公演期間が乗り切れるのかは謎です(どうでもいい話ですが、あんなだみ声を毎日出してたら、普通3日くらいで声は枯れるとおもうんですが….)
器が小さくて、いやらしくて、ダメな男でありながら、なぜか愛される役がやれるって本当にすごいと心底思います
….ここまで読み返して、ディスっているような文章になっていますが、上記全ていい意味で書いてます
人生語りはちょっとウザかったかもしれない
物語のテーマ的にも各々のキャラクターが何かやり残した事があるような気がする心の中のモヤモヤが表現されないと深みが出てこないのもよく理解できるのですが、それを各々の身の上話で全部客席に聞かせるという脚本はちょっと安易だなぁと思いました
魅力的な役者陣が揃っている上に、豪華客演陣が揃う舞台であり、各々の役者さんの見せ場が欲しいというのは、観客と役者両者の利害は一致していると思うのですが、それでももう少し工夫がほしかった。
私は、過去に見た舞台の色々な劇評で書いていますがこういう出演者の各々に見せ場を作るためのシーンが羅列されるタイプの芝居が嫌い
そういう好みの問題はあるのは否めませんが、もう少しモノローグで進むシーンを減らして会話やイベントでそういう背景が伝わるような脚本であればもっと楽しめたなぁと思いました
そもそも客演が多すぎるのかもしれない
(記憶が確かならば)東京ヴォードヴィルショーの母体である東京乾電池からの客演である綾田俊樹さん、斎藤清六さん、石倉三郎さん、桜一花さんなどの客演陣は皆様素晴らしい存在感を示していました
申し訳ないのですが、今まで名前さえ存じ上げなかった元宝塚の桜一花さんは、とてもかわいらしくて(公演後にWikipediaで年齢見て仰天した)、ミステリアスで明るいというとても素敵な女性を演じていました
また、綾田俊樹さんの謎のかるい演技も、不思議な上品さを併せ持つが故に脚本の最後のどんでん返しを納得させてくれました
石倉三郎さんもしかりで、威厳があるんだかないんだかわからない演技に僕自身は最後まで脚本の罠にハマってみてしまっていました
斎藤清六さんは、久しぶりに見ましたが出てきただけで客席から拍手が湧く愛らしさは健在です
それでも、できれば上記の役はヴォードヴィルショーの方々に演じてもらいたかったなぁというのが、長年見てきた観客としての正直な思いでした
そうすることで、もっと若手が活躍し、シャープな物語展開になったように思います
脚本に完全に騙されました
私が単純なだけかもしれませんが、最後まで石倉さんが社長という設定を疑っておりませんでした
劇中の登場人物とほぼ同じ気持ちで、騙されておりました
この辺の仕掛けづくりはさすが鈴木聡さんと感服しました(本物の社長だった綾田俊樹さんにも騙されていたわけですが)
最後の演出は、文学座的なのかな
全てが終わり、結局、みんな終われる状態にもならず、相変わらずジタバタし続ける日常が続くんだろうなというラスト
セリフも終わり、脚本的にも終わっているんだろうなというシーンの中で出演者たちが町の中を無言で歩きながら空を見上げるというシーンは印象に残りました
今までのヴォードヴィルショーとはちょっと違う終わり方だなぁと思いました
これは鵜山仁さんの演出の効果なのかなぁと思ってしまいました
鵜山仁さんの演出といえば、昨年こまつ座で「円生と志ん生」を見ていますが、どこか共通点があるようなないような…(わかっていない)
配役表
何故か、チラシと一緒に配られた当日のキャスト/スタッフ表には配役が記載されておらず「困ったなぁ」とか思っていました
そして、開演前の開場で、劇団スタッフの方が「パンフレットにはネタバレがあるので、見ないように」という注意を盛んに言ってらっしゃいました
この時点で、配役にネタバレがあることには気づくべきでしたが、鈍い私は上記のように劇中で完全に騙されていました
というわけで、終演後購入したパンフによりわかった配役は以下のとおりです
佐藤B作:原田美輝(原田フィルム社長)
大迫右典:小暮隆志(原田フィルム社員)
佐渡稔:港洋一(港プロダクション・社長)
山口良一:堤俊夫(CMディレクター)
綾田俊樹:中川大輔(中川酒造・会長)場末の居酒屋で知り合った高田繁夫に名刺を貸す
まいど豊:吉岡(中川酒造社員)
桜一花:久里子(スナック「小指」臨時ママ)
大森ヒロシ:佐伯(同店・バーテンダー 渋くママを支える)
石井愃一:しょうちゃん(ゲイバー「しょうちゃん」ママ 和服姿で怖い!)
山本ふじこ:福子(中華「満福」店主 劇団員にやさしい)
市瀬理都子:やよい(小料理「やよい」店主 月と星両方に優しい)
平田美穂子:晴子(バー「新劇」バイト兼客 客も演劇関係でバイト代が安い)
京極圭:松尾(バー「新劇」バイト兼客 テレビに出たいが出方がわからない)
玉垣光彦:水野(バー「新劇」バイト兼客 餃子好き)
たかはし等:月松五郎(月組組長)
村田一晃:三平(月組組員)
市川勇:星城之介(星組組員)
斎藤清六:太郎(流しのギター弾き)
木村靖司:うまちゃん(ゲイバー「うまなみ」ママ(西通り組合))
福本伸一:マイケル(ロックバー「マイケル」マスター(西通り組合))マイケル・ジャクソン好き。マキと昔付き合っていた
弘中麻紀:マキ(フォークスナック「若い広場」店主(西通り組合))マイケルとは音楽性の違いで別れた
石倉三郎:高田繁夫(隠居老人)来週末に高齢者住宅に引っ越し。中川大輔の名刺を持って豪遊
あめくみちこ:高田美智子(繁夫の次男の妻)原田に心のドアをノックされて揺らぐ
瀬戸陽一朗:野田(街の客・サラリーマン)手提げかばんを持って町をうろつく
中田浄:池田(街の客・サラリーマン)リュック姿で町をうろつく
石川琴絵:あみ(街の客・昭和好き女子)学生時代にブラスバンド部
喜多村千尋:なつき(街の客・昭和好き女子)
ちなみに
今私が読んでいる本の一節に以下のような文章があります
Google ベンチャーズというグーグルのベンチャーキャピタルのCEOで今生命科学分野にガンガンお金を注ぎ込んでいるビル・マリスの言葉です
マリスは2015年1月のインタビューで、「500歳まで生きることは可能かと今日訊かれたら、私の答えはイエスです」と述べている。
500歳…舞台上のみなさんも僕もまだまだひよっこですね。
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以上 東京ヴォードヴィルショー「終われない男たち」を見た感想記事でした
PS.出演者の弘中麻紀さんがツイッターにて千秋楽の写真を共有されていました。僕も観客席の端っこの方に写ってました(笑)
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