[劇評]青年団「上野動物園再々々襲撃」@シアタートラム

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いつもの平田さんの演出とは一味違った演出で、劇的なシーンが印象的。個人的には、青年団の過去にみた芝居のどれよりも好きな作品。

劇団 青年団
題名 上野動物園再々々襲撃
公演期間 2001/05/23~2001/06/03
原作 金杉忠男 作・演出 平田オリザ
出演 篠塚祥司、猪俣俊明、大塚洋、志賀廣太郎、羽場睦子、大崎由利子、辻美奈子、山内健司、天明留理子、足立誠、和田江里子、松田弘子、安田まり子、谷本進、木崎友紀子、安部聡子、平田陽子、高橋緑
劇場 シアタートラム(三軒茶屋)
観劇日 2001/05/27(ソワレ)

<ストーリー>>

 同級生の葬式後に近くの喫茶店に集まったかつての悪がき達。既に中年すぎの彼らが、子供時代の話にもりあがっていると、ずっと連絡の取れてなかったマドンナ的な女性も顔を出す。思い出話は、やがてかつてラクダを盗み出すために忍び込んだ上野動物園の話になる…

 

<<感想>>

中村座も金杉アソシエーツも知らない私でも、今回の青年団の作品がいつもと少し違っているのは強く感じた。あくまでも平田さんの作品・演出でありながら、金杉忠男さんの作品からシーンや設定やセリフを借りる事で別の世界がその舞台の上に取り込まれ、ハイブリッドな世界が作り出されたような気がする。

平田さんの一流の構成力、演出力はその別の作品を取り込みつつもけしてチグハグな印象を与える事無く新しい世界を作り上げている。

今回とにかく驚いたのは、青年団の芝居でありながら、非常に劇的なシーンが多かった事。

いつもの青年団ならば、なんでもない日常のけして劇的でない一側面がたんたんと舞台上で進行して行き、舞台上にいる日常を送る人々の日常的な会話が繰り広げられるはずだった。舞台上にいる人たちが感情的に盛り上がることもあまりない。また、多くのシーンで舞台上の会話は複数の会話が平行して進行する

今回は、それが裏切られた。

舞台上の会話は、ほとんどのシーンで一つだけ行われている。舞台上の人たちは、少しだけ日常とは違う場面に立ち会っているから感情的にとても盛り上がる所が多い。日常には普通絶対に現れない幽霊が現れて会話する….

だからこそ、今回の芝居は他の青年団作品とイメージが異なるのかもしれない。

これほど、芝居で心を揺さぶられたのは久しぶりだった。感動した。芝居の主役が、中年以降の方々だからかもしれないが、父親に見せたいと思った芝居だった。

父親だけでなく、誰かに見せたくなる芝居だった。

 

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