[劇評]劇団桟敷童子「しゃんしゃん影法師」@中野光座

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初日をみたのだが、初日とは思えないほど完成度が高い。ストーリーとしては、前回見た「かわいい千里眼」の方が好きだが、前回同様芝居への熱気のようなものを感じられ、期待が裏切られることはなかった。唐組以来のファンだった飯塚澄子さんの復活がうれしい一作。

劇団 劇団桟敷童子
題名 しゃんしゃん影法師
公演期間 2004/10/31~2004/11/07
サジキドウジ 演出 東憲司
出演 原口健太郎、外山博美、川田涼一、桑原勝行、東憲司、山本あさみ、小野瀬弥彦、もりちえ、飯塚澄子、稲葉能敬、池下重大、川原洋子、鈴木めぐみ、ヨネクラカオリ、板垣桃子
劇場 中野光座(中野)
観劇日 2004年10月31日(ソワレ)

【ストーリー】

神隠しの伝説のある村。伝説だけでなく、妹を失った男が村に帰ってきた。また、妻と夫を神隠しで失った二組の夫婦の間にも愛が生まれつつあった。どちらも、新たな神隠しの予兆と他の村人は、その再現を恐れる。そこに、妹を失った男の妹そっくりの女が現れ….

【感想】

芝居を見に行くときの楽しみは、役者であったり、ストーリーであったりする。

この劇団は、世界を見に行っている気がする。

最初に見た舞台から一貫して、この劇団が作る世界が心地よい。誰か役者を誉めるというよりも、できあがっている世界を共有するのが気持ちがよく、つい次の舞台も見に行ってしまう。

けして新しいものではない。しいて言えば、古臭いといっても過言ではないほど、オーソドックスな(僕の思っている)アングラ演劇っぽさを持っている。

ある意味、映画の「犬神家の一族」で見たような家柄とかに拘る田舎の一族にいじめられる主人公の兄妹という話はある意味ありがちで、作り方によってはまったく陳腐な芝居になってしまいかねない。しかし、この劇団は今のところそういう風になっていない。

今回は、仕事も忙しくて、唐組と桟敷童子の二者択一になってしまったのだが、こちらを選んだ。それを後悔する気持ちは一点もない。そのくらいこの舞台には満足している。
ただ、前回見た「かわいい千里眼」に比べると僕の中ではこっちの方が見劣りがしてしまう部分がある。主人公のかっこよさである。
僕は、男が、何かを捨てて何かを乗り越えるというストーリーが好きで、今回の主人公(同じ池下さんが演じているが)の女々しさみたいなものがイマイチ好きになれなかった。(千里眼の時の役の方が好き。完全に好みですが)

ちなみに、俳優さんが魅力的でないといっているわけではない。唐組以来のファンである飯塚澄子さんの復活はうれしかった。しかも、相変わらず綺麗で最前列で見た甲斐がありました。(そういえば、「風呂泥棒」という公演の時にアンケートに「女優としては復活しないのでしょうか?」と書いたがその甲斐もあったのだろうか)

また、前回見た公演では少し人間離れした役だったのでいまいち、そのきれいさが目立たなかった板垣さんも、今回は素に近いメイクで充分、際立っていました。ともすれば、池下さん、原口さんという男優の熱演がひかりがちな舞台において、このお二人の女優の印象が強いのは芝居としての完成度を更に高めることに一役買っていたと思います。

前回見たときのキーワードは「千里眼」。今回は、「神隠し」。なにかそういう民話とか伝承とかというネタを扱うのは外連(けれん)味を出すという意味では良いと思うが、そのうち飽きちゃわないか不安。でも、次は何で来るの?という楽しみがあるのも事実。

今回は、アンケート記入用に手作りの画板(っていうのかな。ようは書きやすいようにアンケートの下に敷く厚紙)が渡された。今まで、そういう配慮を見たことがなかったがうれしい。画板がうれしいというより、この劇団の制作のこういう気遣いが、全般に聞いているような気がする。人気劇団になってもこの配慮の気持ちを忘れないでくれるとうれしい。
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