日本の劇団による『その鉄塔に男たちはいる』を観劇しました。今回はシリーズ第3弾で、土田英生さんによる日本オリジナル脚本。出演はわずか5人ながら、それぞれのキャラクターが際立ち、緊迫感と笑いが交錯する会話劇に引き込まれました。さらに「シャッフル公演」という独自の試みにより、毎回異なる組み合わせで上演されることも大きな魅力。戯曲の緻密さと俳優陣の演技力を堪能できた舞台でした。

劇団 | 日本の劇団 | ||||
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題名 | その鉄塔に男たちはいるという | ||||
公演期間 | 2025/9/03~2025/9/9 | ||||
作 | 土田英生 | 演出 | 土田英生 | ||
出演者 |
おおたけこういち:上岡雄吉(きっちししたい) 沼田星麻:笹倉万次郎(だらだらしたい) オオダイラ隆生:小暮要(やっぱりきっちりした方が良い) 田中博士:吉村陽乃介(階段マイムが得意) 佐々木穂高:城之内誠治(追ってきた兵士) |
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劇場 |
シアターブラッツ(新宿三丁目)
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観劇日 | 2025年9月6日(マチネ) |
目次
シリーズとの出会い
日本の劇団を観るのは今回が2回目。過去には『第17捕虜収容所』を観て、その迫力に圧倒されました。第2弾『11人の怒れる男たち』は見逃してしまったものの、今回の第3弾『その鉄塔に男たちはいる』でシリーズの魅力を再確認しました。多数の男性俳優が集まり、力強い舞台を生み出す点は健在です。
シャッフル公演の魅力
今回の公演は、各劇団から1人ずつ俳優が集まり、総勢10人が参加。5人のキャストは、全員がダブルキャストで、しかも「同じ組み合わせが二度とない」シャッフル方式で行われました。カーテンコールではおおたけさんが「毎回が初日で楽日のよう」と語り、演じる側も観る側も新鮮さを楽しめる試みとなっていました。私は1回のみの観劇でしたが、複数回足を運ぶ観客には格別の体験になったはずです。
戯曲と脚本家への期待
脚本を手がけたのは、京都の劇団MONOを主宰する土田英生さん。劇団MONOは1989年に結成され、関西を拠点に活動を続けてきました。僕がこのタイトルを知ったきっかけは、2020年に行われた結成30周年記念公演のニュース。当時はコロナ禍の真っ最中で、上演に踏み切ったこと自体が話題となり、印象に残っていました。
今回、ようやく舞台を観ることができましたが、期待通り緻密で完成度の高い戯曲でした。なぜ多くの役者に愛されてきたのか納得すると同時に、東京では上演機会が少ない作品に触れられたことを貴重に感じました。出演者の中では小暮を演じたオオダイラ隆生さんの演技が印象的で、所属する劇団6番シードの舞台もいつか観てみたいと思いました。
物語の舞台設定
脚本は1990年代に書かれ、当時話題となったカンボジアPKO派遣や海外派兵問題を背景にしています。物語は、ある国のジャングルで駐留する日本軍を舞台に展開。慰問に来たパントマイム集団が重苦しい戦場に耐えられず鉄塔へ逃げ込む場面から始まります。
会話劇の妙
軽妙な会話が続き、軍服姿の城之内が現れるまで軍隊の影は薄く、奇妙に楽しい時間が流れます。しかしやがて緊張が高まり、限られた鉄塔の上での会話劇に移っていきます。「三人寄れば派閥ができる」という言葉通り、5人の間にも対立や派閥が生まれ、それぞれの立場が際立ちます。
笹倉の「きっちりしたことはやりたくない」姿勢と、上岡の「きっちりしなければ生き残れない」という対立が物語の軸となり、他の3人が翻弄される構図は、観る側に自分の立場を投影させる面白さがありました。
全体の感想と次回作への期待
5人だけの芝居ながら、キャラクターの立ち位置が明確で、俳優の力量が試される舞台でした。緻密な脚本と俳優陣の熱演によって、少人数ならではの濃密なドラマを体感できました。
劇団MONOと土田英生作品に触れられた今回の観劇は大きな収穫でした。今後も新しい挑戦的な演出や作品に出会えることを楽しみにしています。
また、東京の様々な劇団から男優が参加する座組である日本の劇団も良い作品を生み出し続けていると思うので、今後もぜひ見てみたいです。
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