唐組の稲荷卓央さんを主演に持ってきた不条理劇。
ふつうの男が通り魔殺人立てこもり事件をおこした実際の事件にいたるまでの心情変化が伝わってくる。
不条理劇の枠組みの中で、かつ、生気のない登場人物の中で、一人だけ内部からあふれだすエネルギーのままに舞台を暴れまわる稲荷さんに釘付けになる事が多々あった。
脇を固める方々も印象深い人が多かったが、女性の役者さんはやりにくそうな感じだった。
劇団 | オフィスコットーネ | ||||
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題名 | 密会 | ||||
公演期間 | 2014/08/14~2014/08/18(全8回公演) | ||||
演出 | 日澤雄介 | 作 | 大竹野正典 | ||
出演 | 稲荷卓央、清水直子、岡本篤、内野智、蒻崎今日子、宇田川さや香、ヨコタシンゴ、西山聖了、藤井びん | ||||
劇場 | ザ・スズナリ(下北沢) | ||||
観劇日 | 2014/08/02 |
目次
■日澤雄介✕稲荷卓央のタッグに注目!
今年注目をしている劇団チョコレートケーキの演出家、日澤雄介さんが、唐組の稲荷卓央さんを演出するという企画趣旨に惹かれてチケットを購入しました。
逆に、作家の大竹野さんについては、主に大阪で活躍されていたということで、存じ上げませんでした。そのため、ほとんど作品についての基礎知識なく、劇場に向かいました。
■特徴的な美術、不条理な会話劇に戸惑う。
始まって少し「しまった」と感じました。あまり得意ではない感情がのっていない会話劇が始まってしまったからです。(公衆電話とベンチが、天井や壁から生えている舞台美術はユニークだと思いながら、少し
不条理劇は嫌いじゃないのですが、なんというか心の準備ができていなかったのです。
ただ、その中で主役の稲荷さんだけが、良い意味で浮いていて助かりました。稲荷さんに集中することで、話の流れを上手くつかむことができました。
■脚本の巧みさ。演出の丁寧さ
見ているうちに、実在の事件を題材にした舞台であることがわかってきました。ダイレクトにその事件をドキュメント風に扱うのではなく、その事件の関係者が、一旦は何も関係ない個々の生活を語り、お互いの関係の薄さを
少しづつ全貌がはっきりする脚本構成の巧みさや、その脚本意図を巧みにに舞台上にのせている演出に感心しながら見ました。
■表情豊かな稲荷さんに釘付け
百面相の如く、シーンによって感情表現を表情で変える稲荷さんにほとんどのシーンで目をやっていました。よくもまぁ、こんなに表情をかえられるなぁと。両目の開き方や、目の下シワの有り無しを自在にコントロールし、若々しい時もあれば、ひどく年老いた感じになる時もありました。唐組で、若干暗い照明の下で長年やってきた強さかもしれません。
純朴だった青年が少しづつ都会に染まり、染まりきれないが故に壊れていく様が伝わってきました。真剣なかおで薬物中毒特有の妄想を語るさまは、あまりにも普通でそのために、余計に怖さを実感出来ました。
つくづく、役者を選ぶ役で、この稲荷さんのバージョンを見てしまった身として、他の役者さんがするのがちょっと想像できない感じです。ベストキャスティングであり、稲荷さんののめり込み方もすごかったと思いました。
なんといっても、物語中盤にくる自分の将来の人生を勝手に妄想して感情を爆発させるシーンはとても印象的でした。
■ やりにくい役だったであろう女優陣。演出の工夫も少し感じた。
当初から、なんでこんなに平板にやるんだろうと思っていたのですが、芝居の終盤で、彼女たちが全員、被害者という役だったからだとわかりました。繰り返しの多いセリフも、人生が断ち切られた被害者の直前の思いが残っている事の象徴なのかなと思いました。
セリフを話すときのトーンや話し方は変わっていて、そのへんは演出としての工夫なのかなぁと思いました。
逆に、男優陣は生きている人だからか、いきいきしてました。藤井びんさんのお父さん、なんかほのぼのしてました。千葉/茨城の人あんなになまってないとおもったんだけど、関西人の見た関東のイメージも入っているのかなぁと思ったり。
題名は、この安部公房の作品からとったみたいですが、結局題名以外の部分はなくなってしまったとのこと。(まねきねこさんのレビューより)
この戯曲は、以下の書籍に収録されています
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