選挙が近づいています。小池百合子氏が立ち上げた政党希望の党の政策に「ベーシックインカム」が盛り込まれていたことから一部では話題になっています。希望の党そのものへの批判とあいまって、ベーシックインカム(BI)政策についても、「財源問題に答えていない」とかの批判がありますが、「坊主憎けりゃ袈裟まで....」的な議論でBIが貶められることがないよう、再度整理しておきたいと思います。
目次
注目を再び集め始めたベーシックインカム
先日こちらの記事に記載した「隷属なき道」の記事にそれなりにアクセスが集まってきています。ベーシックインカムについての議論は、そこここで見るような気がします。だからこその希望の党の政策へも盛り込まれたのでしょう。キャッチーなものに対しての鋭敏な感覚は流石と思います。
最近、フォローを始めた米村歩さんのツイッターでもこんなツイートがありました。
これ言うと批判されそうだけど、働きたくない人は生産性の観点からだけ見ると「いない方がマシ」だったりするから、ベーシックインカム等で最低限の収入保障して働きたくない人には無理に働かせないのが全体の生産性が一番良くなるような気がします。客先常駐にはいない方がマシな人がたくさんいる。
— 米村歩@日本一残業の少ないIT企業社長 (@yonemura2006) July 10, 2017
働きたくない人が、働かなくて良いようにという言い方もありますが、ベーシックインカムについての効用は様々にあると思います。
一方で、希望の党の政策について、自身経済通を持って任じる片山さつきさんは、以下のような発言を。
昨夜の番組の楽屋で「AIで人間の仕事が殆どなくなるような未来でもない限り、ベーシックインカム現実味ないわね」と希望の党代表に冗談ぽく言ったら、今日の党首討論で、本当に小池党首がそう言ったとか!まあ確かに、経済学を英語で勉強した人だったら、絶対にユリノミクスと命名しませんよ(笑) https://t.co/UZ13lmOrAg
— 片山さつき (@katayama_s) October 7, 2017
フィンランド、オランダあたりでは既に社会実験が始まっています。まさか、片山さんがご存知ないというわけではないと思うのですが。
ベーシックインカムは、社会福祉の切り札とも、カネのバラマキとも言われ賛否が分かれてきたが、欧州では実際に2017年からベーシックインカムの社会実験が相次いて始まる。今、最も注目を浴びているプロジェクトは、フィンランド政府によるベーシックインカム制の施行である。来年から、無作為に選ばれた2000人から3000人のフィンランド国民(成人)が月額560ユーロ(約6万4000円)を支給されることになる。支給における条件は皆無だが、この手当は失業手当等の現行の公的手当に取って代わるものとなる。
〜中略〜
フィンランド政府の意図はまず、社会福祉等の手当の支給システムを単純化することにある。「援助金受給資格があるかどうか」「申請に不正がないか」といったことについて、絶えず監視している現行のシステムから、無条件に一定額を毎月支給し、貧困レベルからの救済を保証するシステムに変更するのが目的。
問題は、財源問題?いや違います。所得再分配なので、新たな財源が必要なわけではありません
この問題を素人が考えるとそもそも財源はどこから出るのかというところに意識がどうしてもいってしまいます。財源論については、いくつかのエントリがあります。
こちらは、月8万円。全国民に配布。所得税45%
国民総収入(GNI)を元にするのは、筆者も樹にされているように、少々乱暴な気がしますが、税率をあげても、収入が少ない人には悪いインパクトはないことが明確にわかります。(その代わり、高収入者はインパクトを受ける。再配分だというのはこういう考え方による)
こちららは、月10万円。18歳以上に配布。所得税40%。
子供を対象外にするのは、ちょっと首肯できませんが、確かに考え方としてはありかもしれません。
消費税の増額を中心にした財源論の議論が深い。(wikipedia)
少子高齢化で、そもそも働ける層が減少していくことを前提にした場合、上記2案の所得税だけで賄う案は、将来的に税金を負担する層が減ることが想定されるためにリスクが高く、消費税と貯蓄税(貯蓄資産に対しての課税)を組み合わせる事で賄うべきという議論になっています。(それ以外の様々な案が想定されていますが)
例えば、月8万円(年間96万円)を1億2675万人(平成29年人口推計)に毎年配布するための予算は、ざっくり126兆円。
- 所得税40%(各種控除廃止)した場合、207兆円の給与総額の40%=82兆円。但し、現在は17兆円を所得税として徴収しているので、差額の65兆円。
- 雇用保険の24兆円の歳入(平成26年度決算(労働保険特別会計雇用勘定)
- 老齢基礎年金支出額20兆円(平成27年度特別会計歳入歳出予定額各目明細書)
- 生活保護事業費3.8兆円(生活保護費負担金(事業費ベース)実績額の推移)
ここまでで、65+24+20+3.8=112.8兆円。
あと、13.2兆円足りません。ここは消費税増税等を考えないといけないと思います。
ただ、まったく財源の目処がたたないというレベルではないと思います。
財源問題より大事なこと
現在の生活保護でも、貧困ビジネスと呼ばれるような生活保護を受給する必要があるホームレスを集めて、生活保護をピンはねするようなビジネスをする方がいます。
ベーシックインカムを抵当に入れての借金等をする方が出てくるのを防ぐ必要がありそうです。
法律による規制も必要ですよね。以下のような制約はかけたいです。
- 日本国籍を所有していること
- 日本国内に居住していること。(せめて6割以上国内に居住していること)
- 本人以外が受領しないこと(障害者、病人、子供などは検討が必要ですが)
三番目の受領の方法は、マイナンバーの活用なども含めた総合的な対策が必要に思います。
希望の党は実現してくれるのか?
僕は、10年前に以下のようなエントリーを書きました。
勿論、いままでも政策公約にベーシックインカムを掲げた党はありましたが、今回程得票数を伸ばしそうな政権政党がベーシックインカムを掲げたのは初めてかもしれません。
というわけで、私は今回は「希望の党」へ投票を….しません。
10年前は若かったと言ってしまえば、それまでですが、「実現」してくれそうな気がまったくしない政党にいれてもしょうがないなぁというのが今の偽らざる気持ちです。
ただ、これをきっかけに、ベーシックインカムの議論が起きてくれるといいのだけどと期待をしています。
コメントを残す