劇団 | シアターコクーンプロデュース | |||||
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題名 | パンドラの鐘 | |||||
公演期間 | 2022/06/06~ 2022/06/28 | |||||
作 |
野田秀樹 | 演出 | 杉原邦生 | |||
出演者 |
葵わかな:ヒメ女(古代の女王) 成田凌:ミズヲ(古代の墓掘り) 前田敦子:タマキ(現代のピンカートンの娘) 片岡亀蔵:カナクギ教授(現代の考古学者)/狂王(古代の先代の王、ヒメ女の兄) 玉置玲央:ハンニバル(古代の女王の側近) 南果歩:ピンカートン夫人(現代のカナクギ教授のスポンサー) 大鶴佐助:オズ(カナクギ教授の助手) 柄本時生:イマイチ(カナクギ教授の助手) 森田真和:コフィン(古代の墓掘り仲間) 亀島一徳:リース(古代の墓掘り仲間) 山口航太:ハンマー(古代の墓掘り仲間) 武居卓:スペード(古代の墓掘り仲間) 白石加代子:ヒイバア(古代の女王の乳母) 内海正考、王下貴司、久保田舞、倉元奎哉、米田沙織、涌田悠 |
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劇場 |
シアターコクーン(渋谷)
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観劇日 | 2022/06/19(マチネ) |
目次
1999年の作品の再演作
1999年に天海祐希さん、大竹しのぶさんが各々、野田秀樹さん、蜷川幸雄さんによりほぼ同時に演出された作品です
僕の記憶が正しければ、蜷川さんが野田さんに脚本を書いてくれと頼まれていたのにいつまでも上がらず、「だったら野田が自分の劇団でやる脚本を俺もやる」って言って実現したとか….(自信ありません)
とにかく、そんな形ですし、天海祐希さんや大竹しのぶさんという人気女優が同じ脚本を競演するというのもなかなか見れない企画で、当時も大接戦のチケット争奪戦を勝ち抜いてようやくチケットを確保しみることができました。
昨年の再演を見逃してしまったため、代わりと言ってはなんですが、以下のようなキャスト比較記事を書きました(最近、今年のキャストもいれて再アップ)
モダンな演出、おしゃれ
劇場にはいったときに、舞台上のスッキリした装置をみて、ちょっと意外な感じがしました。
コクーンでの公演とということもあり、蜷川幸雄さんの演出を踏襲するのかなと無意識に思いこんでいて、結構重厚な装置(蜷川さんは、舞台上に被爆直後の長崎を思わせる装置が並んでいた)を想定していたのですが、とてもシンプルで、白と赤を基調にした舞台でした
そこでの演出も、能などを思わせるようなダンスがあったり、黒子っぽい人たちが躍動したり、何かモダンな感じで、若々しい印象をうけました。
登場するキャストも含め、とてもおしゃれな演出に生まれ変わったなと感じました
朝ドラ出演で顔と名前が一致した人が多いであろう成田凌さんと葵わかなさん
どちらも舞台では初見だったので、どうかなと思いましたが完全に杞憂でした
ヒメ女が愛らしい
特に、ヒメ女役が、葵わかなさんというのは少し不安を感じていました。というのも、前回みたときは天海祐希さんと大竹しのぶさんが演じた役。
当時の天海さんや大竹さんは、打ち出しの強い存在感のある女優さんです。重厚感があるというか….(けして、天海さんや大竹さんが大きいとか重いと言ってない🤪)
この脚本を知っている身としても、後半の重い展開に耐えられる女優さんを野田さん、蜷川さんが選んだと思っていました。
それ故に、天海さんや大竹さんとは印象が異なり、葵さんはかなり若くて、可愛い感じで少し心配でした(けして天海さんや大竹さんが….以下略🤣)。
しかし、14歳の若き女王役としては、前半はその愛らしさがとてもハマっていましたし、後半の展開で国家を支える女王という役割も、悲壮感を感じさせることなくその覚悟をきちんと演じきっていて物語を成立させてくれたと思いました
成田凌さんのミズヲ像が良い
ミズヲ役のあらくれな感じは、成田さんの演技にあっていました。23年前の劇評で、僕は勝村政信さんの演技が重苦しく、堤真一さんの演技が軽くて、勝村さん(ひいては蜷川さん演出)のほうが好みと書いてます。
僕にとってのクライマックスであった(おそらくは原爆の惨状)を表したシーンでの灼熱の業火の中で水を求め死んでいく人々を描写するシーンは、勝村さんほど重苦しくなかったのですが、しっくり来ました。(詳細を覚えているわけではないのですが)
話によれば、成田さんは初舞台とのこと。それを思わせない堂々たる演技で、舞台映えしていました。
原爆と政治批判描写が軽くなっている?
パンドラの鐘として、舞台上に現れるそれは、明らかに長崎に落とされたファットマン(原子爆弾)を思わせるフォルムです。
これに限らず、上記のミズヲのシーンでも、原爆をイメージする台詞回しでした。
ただ、音効や照明効果はわりとそういう描写を弱めるような感じだったように思います。
蜷川版で瓦礫の舞台だったことを考えれば、のっぺりした舞台装置もそうです。
爆発を思わせる効果音もありませんでしたし、ミズヲのセリフのシーンも、1999年版では真っ赤な印象的な照明だったのですが、今回はセリフ通り太陽を思わせる黄色っぽい照明でした。
最後の方で出てくる「王がいるならば、太陽が落とされる前に自分を埋める」というセリフも、原爆が落とされる前に戦争を止められなかった天皇陛下への怒りのようなものを感じることが出来ませんでした(1999年の芝居を見たときはその比喩はとてもわかり易く伝わってきたように思いましたが、今回はあまりそれがイメージさせるような感じではなかったように思いました)
この辺は、演出的にそういったものをあまり感じさせない衣装や装置の力があったのではないかと思います
ヒイバァが女性である影響
もともと、女性の役ですが、野田版、蜷川版ともに男性が演じたこの役。
野田さんはともかく、蜷川さんも男性にあてたのは、この役のあるシーンが男性的だったからではないかと思います
僕の印象に残っているのは、ハンニバルが行った革命が失敗に終わり、拘束されるシーン。
今回は、白石加代子さんが配役されたことで、226事件の印象的なセリフが全カットになっていたような気がします(ま、雪が降った日にクーデターと聞けば、226事件がモチーフにあることはわかると思いますが)
自分の劇評によれば、1999年版は、ここでヒイバァが突如男性的になり、226事件の際の反乱軍人に対しての投降を呼びかける当時のセリフをそのままはなしたようです。
こういう部分も、政治的な部分を減らす演出の一つなのかもしれません。
前半で、「7回にわたって演出云々」というのセリフがあります。野田さんがやったときには、なんか舞台の演出を兼ねていることによる一ギャグあった気がしますが、さすがに関係ないせいか笑いはおきず。
逆に今回の舞台で「演出」を強調しているがゆえの空回り感を僕は感じてしまって、少しクスリとしていたりしたのですが、ある意味内輪受けですね。(多分、今回の舞台だけ見た人にとっては笑いどころではなかった気がします)
大鶴佐助さんってこんな役もできるのね
唐十郎さんのご子息の大鶴佐助さんは、今回、ストーリーの重要なキーパーソン「オズ」を演じていました。
前回見たのは、確か吸血鬼だったと思います。
エキセントリックな医者役をやっていたときも印象的でしたが、今回の役はかなり難しい役でしたが、非常に印象的になってきました。
上記の記事では、「成長が楽しみ」とか偉そうなことを書きましたが、しっかり成長した姿を見ることができました。
(個人的には、唐十郎さんのご子息や柄本明さんのご子息が、野田秀樹さんの舞台に出るというのはなかなか感慨深いものがあります)
以上 どうしても初演作と比べてしまう2022年版「パンドラの鐘」の感想でした。
1999年に見た舞台の感想は以下です(冒頭で記載していますが、当時、蜷川版1回、野田版2回見ているのですが、個別に書かずまとめて印象を記載しています)
今回初めて見たので、99年版の評と合わせて読ませていただきました
オズ役の方のお名前、大鶴 佐助さんです
C様
コメントありがとうございます。オズ役の大鶴さんの名前、ご指摘ありがとうございます。修正いたしました