[劇評]大森カンパニー「いじはり」@小劇場B1(下北沢)

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人情喜劇としての型は本当にキッチリできていて、期待通り笑わせてもらい、ぐっと来るシーンもありました。驚きのアクションシーンもあり、見どころは満載でした。出てきた瞬間客席が笑いに包まれる役者さんって得だなと思う一方で、演じる役がずいぶん固定化されているような気がするのが気になりました

劇団 大森カンパニープロデュース
題名 いじはり
公演期間 2018/11/072018/11/20

故林広志/大森博

演出 大森博
出演 坂本あきら:結城智有(三勇士の一人。結城組組長。3年間禁固刑に服役した過去)
山口良一:亀有達郎(三勇士の一人。昔は喧嘩っ早いが今はYESMAN)
大森ヒロシ:有原利樹(三勇士の一人。下町の風呂屋を守っている)
遠山景織子:平石涼子(7年前に風呂屋の前で震えているのを助けられた)
奥田一平:深瀬拓真(風呂屋で育てられた母子家庭の子供)
橘依里:大橋美鈴(風呂屋で育てられた元幼児虐待を受けていた子供)
横山清崇:鳳征也(新 三泉士の一人。風呂屋に思い出があるらしい)
岩田有弘:小佐野透(近所のスーパー銭湯の支配人)
小林大介:安西清司(結城組に因縁がある。しかし何故自分がその風呂屋のいざこざに呼ばれたか不明)
前田慎治:片山翔(安西と行動をともにするが、別に仲良くない。喧嘩っ早い)
三宅祐輔:桃山竹蔵(かつて風呂屋で暮らしていた。今は、日舞の家元)
伽代子:高谷小百合(江戸の風呂という雑誌の編集者。祭りで命を救われたことがある)
劇場
小劇場B1(下北沢)
観劇日 2018/11/18(ソワレ)

目次

2週間に渡るロングラン敢行!!

大森カンパニープロデュースの人情喜劇シリーズは、飛び飛びとはいえ結構昔から見ているので、小劇場でとはいえロングラン公演ができるまでになったのは素直にすごいなぁと思います

初めてみたのは、2010年くらいかもしれません。このブログの記事のなかで一番古い、2012年に見た「あおげば」の時の感想が以下。

「内容がいいのに客席が寂しい。今度はもっと口コミしよう」…とか言ってますが、ついにロングランをやったり次回は本多劇場でやったりと観客層が広がったのを感じます

私自身は、上記の決意にも関わらず必ずしもその後欠かさず見ているわけではなく、あまり観客増加に貢献できたとは思えません。m(_ _)m

ここからは、ネタバレします

アクションシーン多数。え、大丈夫!?

大森ヒロシさんのアクションシーンは、毎度のことなので驚きませんでした

しかし、割と最初の方に山口良一さんや坂本あきらさんの役が昔は腕っぷしが強くて町を守った英雄という設定だと聞いて、不安になりましたた

あの二人にアクションができるのか…というか、そういう雰囲気の山口さん、坂本さんって一体どんな感じで現れるのか…と不安な気持ちで舞台を見守っていました

お二人が相次いで登場してきた時に、舞台上の安西(小林)、片山(前田)の二人と同じくらい唖然として見ていました

見たところまるで迫力のない相変わらずの山口さんと坂本さんに肩透かしをくらいました(笑)

ちなみに、肝心のアクションシーンは圧巻の出来でした。山口さんも意外に体が動くのね。感動的でさえ有りました

坂本さんについては、やっぱりね…そうなるかと思いつつ、でも過去に見た大森カンパニープロデュースのどの舞台よりもアクションシーンが派手な舞台でした

笑えるのはいいのですが、反則ですよね

坂本あきらさんにしろ、三宅祐輔さんにしろ、出てきた瞬間に笑いが取れる役者さんってとても貴重な存在なのですが、ちょっと反則気味だなと思いました

明らかに坂本さんがセリフを忘れた(ロングラン公演の最後から3回目でどうなの…とか思うが)シーンがめちゃくちゃ面白かったり、いちいち動きが笑える三宅さんだったり、無用にダンスが多い横山さんだったりでめちゃくちゃ笑えます

それはは本当に楽しいのだけど、なんか芝居の本質でないところで笑いを取りに来ている感を今回はひときわ強く感じました

コント公演ならば、全然いいんだけど、喜劇としては、もう少し脚本の力で笑いを取りに来てほしいなとか思ったりしました

いや、笑えれば、それだけで舞台を見て幸せになれるのでいいんだけど。

特に、踊らなくてもかっこいい横山さんは、一度ダンスを封印した素の演技でじっくり物語を見てみたいと思いました

暗転の使い方が上手いなと感じました

暗転が多用される舞台はあまり好きではないのですが、この舞台でも暗転は何度かありましたが、あまり不快ではありませんでした

なんでだろうと思いながら、見ていたのですが暗転に入る時の「間」が絶妙なのだと思い至りました

色々と暗示するセリフを元に少しづつ昔起きた事件があらわになっていく構成の舞台です。

その何か暗示するシーンやセリフの後に暗転に入るため、暗転中で思わず「今のセリフの意味はなんだろう」と考えているうちに暗転が明けてしまいます

この繰り返しなのでほぼ暗転が気にならずに舞台をみることができました

小林さん、岩田さんの悪役ぶりが際立つ

花組芝居の小林大介さんと岩田有弘さんの悪役ぶりがとても良かったです

岩田さん演じるスーパー銭湯のマスター。「スーパー銭湯のマスターという役が悪役になれるのか?」とも思いましたが、岩田さんの演技が本当に嫌なヤツでかなり悪役ぶりが様になっていました

声の出し方とかも含めとても聞きやすくて、いい俳優さんだなと素直に思っていました

小林大介さんも、偏執的な悪役を臨場感を持って演じていました。カーテンコールで、「女性ファンがどんどん離れていく」みたいなことをおっしゃっていましたが、確かにちょっとヒクほど悪役がハマっていました。

カリンが憑依するシーンは、もう少しわかりやすくても

最後の見せ場は、死んだはずのカリンが美鈴の体を借りて銭湯を守るシーンなのですが、このシーンちょっとわかりにくいなぁと思いながら見てました

喋り方や表情が、カリンのときと、美鈴のときでほとんど変わらず、大事なシーンなのにもったいないと思いました

しいていえば、坂本さんを「おじいちゃん」と呼ぶか否かの違いがありましたが、目立つ違いではなく

勿論演技力で別人になりきれればベストとも思いましたが、例えば髪型を変えるとか憑依前と後で何か特徴的な動きの差があるとかあれば、わかりやすかったようにおもいました

ほとんど変貌の度合いがわからないカリンを見て、震えているという安西(小林大介さん)が、ちょっと滑稽に見えましたが、それもカリンの憑依がわかりやすければ納得感のある演技になっていたのかもしれません

来年は、2月に本多劇場に進出!

こちらも再演作品の「あじさい」になるそうです

更に、秋には、新作公演とのこと

「あ○○○」か「い○○○」と4文字の題名が特徴のこの劇団、次回新作公演の題名を予想してみたいと思います(当たらないけど)

「いいなり」・・・今回の山口良一さんが演じた世間の波にさらされて、YES-MANの境地に達した男を主人公になんにでも「いいなり」になる物語
「あれくさ」・・・ついにアマゾンのAIスピーカーを買った博多のおじさんたちが、使い方がわからずに困る話。普通に方言で「あれくさ」というと起動するAIスピーカーの恐怖….

いや、当てに行ってないなこれ。

以上 大森カンパニープロデュース「いじはり」の感想記事でした。

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