年に1度くらいの頻度で行われる、小劇場で行う野田芝居。
結論からいうと、出演者が少ないにも関わらず、誰かにうまく感情移入をすることができず楽しむことができなかった私。やはり、難解ゆえに何回も見ないと分からないのか?(いや、ダジェレじゃなく…)
劇団 | 野田地図 | ||||
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題名 | 農業少女 | ||||
公演期間 | 2000/09/08~2000/10/09 | ||||
作 | 野田秀樹 | 演出 | 野田秀樹 | ||
出演 | 野田秀樹、松尾スズキ、深津絵里、明星真由美 | ||||
劇場 | シアタートラム(三軒茶屋) | ||||
観劇日 | 2000年9月30日 |
■物語(野田地図公式サイトより)
日本のとある田舎、農業という名の駅があった。その駅のホームには、いつ立てられたとも知れぬ、由美かおるの 全身でいっぱいの金鳥の夏の看板があった。この村には、そんな看板が一杯あった。
大村昆のオロナミンC、誰だか知らない和服の女のボンカレー、どれもこれも、その製品は今でも売られているけれど、そんなコマーシャルはもうない。看板は錆びている。
ブリキに描かれたその絵は剥がれかかっている。その看板の足元に雑草が生えて駅のホームとの境を曖昧に している。
そして、その看板の傍らのベンチに一人の少女が座っていた。どこにでもある日本の田園の、長閑と言えば長閑、 退屈と言えば退屈、さして美しくもないその田園の景色を 目の当たりに、彼女は思った。
「このまま東京に行ってみようかな。
のうぎょう、とうきょう、
そんなにコトバの響きは変わらないのに、
東京は農業から遠い。」
そう思いながら東京行きの切符を手にいれた少女と共に、20世紀に置き忘れようとしている、日本人の本音を書いて みようと思う。
■感想
最近の野田さんの芝居は、少し主張がわかりやすく表面化しすぎている気がします。あるいは、わかりやすく表面化している主張の奥に別の主張があるのか?そんなことを考えているうちに芝居が終わってしまいました。(深津絵里さんの胸に目を奪われたという説もあるが…あの胸は一説によればアンナミラーズのウェイトレスト同じような方法で形を作られていたとかいないとか…)
最初に、初老の男(野田秀樹)と少女(深津絵里)の関係が、「キル」の時と同じと思い出したあたりから、見方がうがったものになっていったのかもしれません。コケティッシュな悪女を演じる田舎から出てきた少女にも、その少女に振り回される男にも感情移入を完全にすることができない。ましてや、男の影のような松尾さんや、少女の影のような明星さんにも共感する事ができず、ただ、目の前をストーリーが流れていってしまいました。
ただし、野田演じる初老の男を見ていて、少女というか若い女性のわがままに振り回されたい男の気持ちに少し共感を感じてしまった。僕も年をとったのか?…
演出のうまさ、舞台装置の素晴らしさはいつもながら目をみはりました。こういう小さな劇場の方が、野田さんの演出は冴える気がします。特に脚本とあいまって劇中劇というか回想シーンの作り方は秀逸で、あそこまでうまく処理された演出は、過去に見覚えがないような気がします。途中で、見せたセピア色のシーンは忘れる事ができません。また、客席が両側から見下ろす舞台は、客席をも舞台の背景としてみせる手法が見事でした。
戦争とスポーツの観戦における熱狂を皮肉った途中の松尾さんの科白は、オリンピックに盛り上がる自分に照らして少し胸が痛かった。
また、明星さん特有の芝居がなく、もったいなく感じた。もっとあくの強い役者さんだったと思っていたので、ちょっと残念でした。。(そういう意味で、4人芝居なのに2.5人分(野田+深津+0.5×松尾)の役者同士のぶつかりしかなかった気がします。)
[…] [劇評]野田地図「農業少女」@シアタートラム […]