せんがわ演劇祭参加の大阪の劇団の40分ほどの小作品。地球滅亡が確定的となったとき。二組のカップルの小さな物語。絶望的な状況のなかで物語の奥に様々なことがおきていそうな状況を少ないセリフと出演者で描く不思議な世界観が面白く、長尺の芝居も見てみたいと思いました
劇団 | コトリ会議 | |||||
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題名 | チラ美のスカート | |||||
公演期間 | 2018/07/14〜2018/07/14 | |||||
作 |
山本正典 |
演出 | 山本正典 | |||
出演 |
牛嶋千佳:1組目カップルの女性。彼氏に買ってもらったスカートを履いて彼氏の家に来る 原竹志:1組目カップルの男性。何かの研究者。ちょっとマッドサイエンティスト気 味 要小飴:ラジオ、あるいはラジオのアナウンサー 三村るな:2組目のカップルの女性。お風呂に入りたい まえかつと:2組目のカップル男性。女性の後をなかなか追えない 役者紹介がなかったため、上記間違いあるかもしれません |
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劇場 |
せんがわ劇場(仙川)
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観劇日 | 2018/7/14(マチネ) |
目次
せんがわ演劇祭にはじめて足を運びました
もう9回目とのことですが、場所が遠すぎて今までは足を運びませんでした。今回は、大阪の劇団コトリ会議を見るためにやってきました。うちから1時間半(往復3時間)
コトリ会議の舞台が40分だったことを考えると、少々無駄が多いと感じてしまいましたが、ちょっと前の東京公演を見逃してしまいましたので、次のチャンスがいつくるかわからないこともあり思い切ってでかけました
以下ネタバレあります
物語
当日配布パンフレットより
恐竜時代を終わらせた程の隕石が地球にぶつかる。どうする?隕石を爆破させるだなんてだめだ。地球をズラすのもだめだ。太陽系は絶妙のバランスで配置されているんだ。チラ美は今日、クレ−プ屋の面接に来ていた
地球滅亡の物語。それでいて、小さな人間の物語
時間が短いこともあり、上記の地球滅亡云々の話は、冒頭部分で、ラジオ役の要さんがアナウンサーとして語る「あと2週間で天王星が地球に衝突する」という情報以上に語れれることはありません
既に、地球人類全体は状況を悟った状態という中で、自分たちの残り時間の過ごし方を模索する人間模様がお話の中心です
ちなみに、クレープ屋は1mmも登場しませんでした。多分、脚本が変わったのだと思います
雰囲気的には、北村想さんの寿歌とか、シェルターを思い出しました。地球人類が大変な状況にあるなかで妙に日常的な会話が行われているからかもしれません
とはいえ、あっちに比べれば圧倒的に絶望的な状況なわけですが
そういえば、かつての演劇界(というかフィクション全般)は、人類滅亡のシナリオは圧倒的に「核戦争」だった(上記北村想作品は両方共そう)わけですが、最近は隕石がそれに変わった気がします(この作品だけでなく、先日映画化された漫画もラストシーンはそれでしたし)
やっぱり、アルマゲドンの影響でしょうか。ブルース・ウィリスすげぇな
いずれにしても、そんなどうしようもないSFチックな舞台設定の中、日常的なプロポーズだとか、お風呂に入りたいとか、月見をしようとかという会話がかわされるストーリーは(短さもあると思いますが)見ていて飽きないものではありました
出だしのカップルの会話が面白い
牛嶋さん(名前が呼ばれなかったような気がするのですが、題名からすると「チラ美」なのか?)とその恋人の科学者 原さんの会話が面白かったです
いちいち噛み合わない二人の会話の中で、突然のプロポーズ。そして、原子力発電所から盗んできた巨大なエネルギーを溜め込んだ小さなかわいい箱の正体を巡る二人の勘違いの応酬
スカートを巡る二人のカップルの思い違いあたりも、カップルあるあるです
牛嶋さんの存在感。セリフ回しのきれいさ
特に牛嶋さんの演じるなんだかホワんとした感じの独特の存在感は、印象に残りました
穿った見方すぎかもしれませんが、死を受け入れる達観した覚悟とか、感情を超越した落ち着きとかがうまく出ていました
突然のプロポーズに戸惑い、プロポーズに失敗したと思った男が、自宅にいるのに「帰る」と言い出すあたりも共感できるセリフ展開で、それをすっと落ち着かせるあたりの会話回しはうまいと思いました
こんな終末になってプロポーズをするなんて、本当にあるのかなとか思いました。昔読んだ筒井康隆の「霊長類 南へ」の中にやはり(核戦争で)滅びつつある人類の二人が、結婚を決めて区役所に駆け込むというシーンがありましたが、そのシーンを突然思い出しました
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スカートを巡る二人のカップルの思い違いあたりも、カップルあるあるです
タイムマシンがここで出てくるとは思いませんでした(そういう意味では、男の方は上記の「霊長類 南へ」のカップルよりも悲壮感のない中でプロポーズをしたことになりますが)
タイムマシンを使うことに対して、彼女が拒否ることが全く理解できない男の気持ちはとても良くわかりました
一方で、既に死を受け入れている彼女の気持ちもよくわかるような..この辺男と女の考え方の違いなのかな(男が焦り過ぎてた気がしましたが)
二組目のカップルは、対象的に絶望的な結末
物語は、この1組目のカップルの物語(結局男1人で過去に旅立ってしまう)と後半の崖の上のカップルの話に大別されるのですが、後半のカップルのはなしも構造的には前半と同じでした
死を受け入れている女と受け入れきれない男の違い
怖い話が嫌いな男と達観している女の会話は、崖上にいるという設定時点で終わりが見えているのですが、男の悲壮感と女の達観度合いの温度差が会話の面白さを引き出していました
このシーン、惜しむらくは女性の顔がまったく見えない照明だったことです
複数劇団が上演する演劇祭という場で、1本勝負の公演。けして準備時間が十分にあったわけではなかったのだと思います。そのため、おそらく照明の場当たりが甘くあんなシーンになってしまったのかもしれませんが、芝居を見せるという意味では結構致命的なミスだと思いました
照明の担当者は、夜のシーンに囚われず、スポットが当たらないならば、舞台全体の照度を少しあげるくらいのことをしても良かったと思います
正直、このシーンで女性の顔が見えないのはかなり致命的だったと感じました(僕は最前列だったので、僕が見えなかったということは僕以外誰にも見えなかったのだと思うし)
崖に飛び降りるシーンを、前転で表現するなど、斬新な表現の部分もあり、惜しいなと思いました
ラジオ役の女性の意外な美声
すみません。要さんが、最初に出てこられたときに頭に赤いラジオを載せてマイクを持った変な女という出で立ち(要はラジオ放送の比喩だとすぐわかりましたが)だったので、油断していました
ラジオアナウンサーとしての、ニュースを読む声の声調、声音含め完璧にアナウンサーっぽくてびっくりしました
この辺いい加減だと話そのものの臨場感がなくなるので、意外に大事な役だったなぁと芝居を見終わった後感じました
そういえば、彼女に限らず、<大阪の劇団なのにどの役者さんもほぼ標準語で演技だったのはなぜだろうよく考えたら、母親との会話シーンは関西弁だったので、全編というのは言い過ぎか
東京に合わせてくれたのか、もともとそうなのか。
次は長尺の本公演を見たい
今までにあまり見たことのない世界観でありながら、わかりにくさはなく感情を細やかに追っている脚本、それをきちんと表現できる役者さんを見ることができて40分ものとはいえ十分に楽しみました
最後のエピローグ的なエピソードも裏側にいろいろな物語が思い浮かぶいい終わり方でした。正直、このネタで長編やってくれても見れる気がしました
というわけで、次は長尺の芝居がみたいなと思いました。先日の東京公演「しずかミラクル」を見逃したのは今更ながら痛かった
以上 コトリ会議「チラ美のスカート」の劇評記事でした
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