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私だと田中角栄が首相だった時代よりも、この舞台にある影響力を徐々に落としていく時代が記憶に残っている。その記憶と物語が相まって、舞台上で繰り広げられる以上の臨場感と奥行きを感じながら当時の政治状況に思いを馳せることのできる舞台でした
僕よりもお若い役者のみなさんが、記憶の中にある当時おじいさんにしか見えなかった政治家と重なり合うことでどんどん重厚感が増していくのが不思議な感覚でした

劇団 JACROW
題名 常闇、世を照らす
公演期間 2023年12月8日~2023年12月17日

中村ノブアキ

演出 中村ノブアキ
出演者 狩野和馬:田中角栄
谷仲恵輔:中曽根康弘
小平伸一郎:福田赳夫
福田真夕:山東昭子
江口逢:辻眞佐
川田希:田中眞紀子
井口睦恵:辻和子
小林あや:佐藤昭
青木友哉:朝賀昭
山森信太郎:二階堂進
岡本篤:金丸信
菊池豪:小沢一郎
菅野貴夫:木村武雄
内田健介:大平正芳
今里真:竹下登
劇場 東京芸術劇場シアターウエスト(池袋)
観劇日 2023年12月17日(マチネ)

目次

迷った挙げ句に単品の鑑賞へ

田中角栄さんを主人公にした舞台作品があることは前々から知っていたのですが、なかなかタイミングが合いませんでした。今回は新作に合わせ、過去作も含めた一挙上演の企画
一挙上演(約9時間)か、新作の単発上演のどちらに伺うか迷った挙げ句に、新作の単発上演に伺いました(体力が….orz)
他作品を結局みていないのでなんとも言えませんが、自分の記憶にある角栄さんの晩年と重ね合わせながら見ることができて、1作選ぶとすれば一番楽しめる時代の作品だったのかなと思っています

役者の方が徐々に本物に見えてくる

実在の政治家に模した俳優さんが演じる舞台としては、僕のなかで真っ先に浮かぶのは、ニュースペーパーさんの舞台です
しかし、あちらはコメディというかコント仕立て。まず見た目でその政治家を連想させることを前提に少し極端なメイクや所作で政治家を形作っています(あれはあれですごいのですが)

今回は、役者さんは出てきたときにはさほど記憶にある政治家の方と似ているというふうに感じませんでした
例えば、田中角栄役の狩野さんも、チラシ、ポスターのビジュアルはそれほど田中角栄さんに似ているわけでもないかなと思っていましたが、芝居の進行に応じて喋りを聞いているとやはりそう見えてきて、役者さんってすごいなと素直に感じ入りました。

田中真紀子さん役の小林あやさんも、最初でてきたときは普通の主婦でそれほど似てないなぁとかおもっていたのですが、芝居の進行につれすっかり真紀子節が様になる政治家になっていっていて、真紀子さんの演説を聞いているような気分になってきました。
最近、本物の真紀子さんを久しぶりにテレビで見たばかりだったこともあり、臨場感をより感じることができました

ここからはネタバレします

物語に現れる錚々たる登場人物たち

基本は田中角栄さんの周囲の人物を描いているだけなのに、錚々たる方々た登場してきます
当時、マスコミあたりでよく「キングメーカー」という言葉がもてはやされていた記憶がありますが、ようやくその意味に合点が行きました
福田赳夫さんや大平正芳さんといった首相の就任経緯(デフォルメはあるにしろ、福田さんも大平さんもイメージが変わりました😂)も面白かったです
僕の子供の頃の大物政治家といえば、中曽根康弘さんというイメージが強かったのですが、この物語においては田中角栄さんの力(及び田中派の力)を借りまくっていて
これまた大幅にイメージが変わった方でした。

一方で、その後に政権を取る竹下登さんは、気のいいおじいさんイメージが強かったのに、この物語の中ではかなりの切れ者で、首相になるということの重みを改めて感じました

政治家ってやっぱり損な仕事だよなぁ

と、この物語をみてつくづく思いました。

田中角栄さんを始めとする登場人物の政治家やその周囲の方々は、本当に優秀な方々です。おそらく、他の分野に行けばきっと大成功間違いなしでしょう
特に、田中角栄さん本人の頭のキレ、人心掌握力、実行力、構想力は只者ではありません。他の分野でなら大成功をしたことでしょう。なのに、政治の世界に行った
ばかりに、最後にここまで失意の中で人生を終えることになるとは….
勿論、事実関係はわかりませんし、犯罪に手を染めたのならやむなしというのもわかりますが、それほど損な役回りを自ら請け負う人への尊敬を感じざるおえません

人物の語り口のうまさ

登場人物が初めて出てくるところ各々が地元土産を持ってくることで、説明せずともその登場人物の出身地がわかるという工夫はさすが。
なかでも、竹下登さん初登場で、お土産で出身地を示すだけでなく、他の登場人物が田中角栄さんにしかお土産を持ってこなかったのに、彼だけ全員分のお土産を持ってきて、配るということで彼の性格まで一瞬で分からせるあたりすごく納得感のある演出だった
(事実であるかどうかはさておき)

ただ、小沢一郎さんが何でも壊しちゃうというのはさすがにわらっちゃいましたが。別に彼はぶきっちょな物品破壊魔ではないような気がします。
小沢一郎さんも、最近の強面のイメージが強かったので、この物語の中のなんかおちゃめなキャラクターというのも意外感があってよかったのですが。

奥の字幕でシーンを落とす演出は面白いのですが….

後日談などをふくめ、奥の字幕でそのシーンのネタを落とすという演出が多々有り、それでかなり笑わせてもらいました
が、座席の関係もあって、奥の字幕が見えにくいことが多々有りました。ナレーションいれるとイメージ変わっちゃうのかなぁ。正直、よく見えなかったがゆえに客席の
笑いについていけない哀しいシーンもちょくちょくあったのが残念でした

以上 JACROW「常闇、世を照らす」の感想でした

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