[映画評]北野武監督「アウトレイジ 最終章」@楽天地シネマ(錦糸町)

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シリーズ制覇している北野映画の最新作にして最終作「アウトレイジ 最終章」は、今までの作品の全ての決着をつける作品でした。北野映画特有の醒めた主人公の描写と、怖いけどその怖さが目に見えない独特なカメラワークは健在で、ちょっとさびしいけど最終章としてアウトレイジを十分に堪能できました。

題名 アウトレイジ 最終章

監督・脚本・編集

北野武
音楽 鈴木慶一
キャスト

大友:ビートたけし
西野:西田敏行
市川:大森南朋
花田:ピエール瀧
繁田:松重豊
野村:大杉漣
中田:塩見三省
李:白竜

白山:名高達男
五味:光石研
丸山:原田泰造
吉岡:池内博之
崔:津田寛治
張:金田時男
平山:中村育二
森島:岸部一徳

目次

悪いやつばかりが出てくる

北野映画の最新作とにかく、悪いヤツしかでてきません。今回に関しては、しいて言えば警察の丸暴担当で、最後に辞表を提出する松重豊さんがただ一人、一般的な基準で言うところの「いい人」です

が、印象にはほぼ残りません

後は、悪人しかいません

悪い人しかいないこの映画での見どころは、ピエール瀧演じる「しのぎ」での稼ぎはいいが、実はかなりのヘタレなヤクザの幹部です。

正直、ピエール瀧が、演じるこの花田という男が出てくると自然と笑みがこぼれてしまいます

今回の映画の中での全ての発端になる事件を起こすのも彼で、要所要所で彼がいることで話がややこしくなっていくのですが、とうとう最後まで悪い人に見えませんでした

塩見三省さん年取ったな

もともとは、舞台で見ることのほうが多かった役者さんです。僕が初めて彼を見たのは確か、平栗あつみさん主演の「幕末純情伝」

この時、土方歳三を演じる彼が、なんかかっこよくないけど(失礼!)、存在感のある役者さんだなと思いました

PARCO劇場「幕末純情伝(1989)」の劇評集 | 演劇感想文リンクPARCO劇場「幕末純情伝(1989)」の劇評集 | 演劇感想文リンク

よくみれば、20年近く昔の舞台。

そりゃ、歳を取るはずです。

すごく痩せていて、ちょっと心配になるくらいだったのが印象的でした。元来、そんなに怖くない顔なのだけど、サングラスで凄みを作っていたのかな

ホテルでのマシンガンによる大量殺人シーンは圧巻

ま、アウトレイジでは、お約束ですけどね

麿赤兒さんが、息子の大森南朋さんの目がいいという記事を読んでいたので注目していたのですが確かに虚無感のあるいい目をしてました以下の記事です

殺しまくった後のウチの息子(大森南朋/市川役)の顔なんて、怖かったよ。ものすごい虚無的になってんだ。普段は見たこともないような顔。こんな面を持ってるのかと思うとゾッとしました(笑)。そういう意味じゃ、普通の若い男の子だって、いつ変貌するかわからない

最近あった大量殺人事件で、途中で殺人に麻痺する発言をしていたようですが、この時の大森南朋さんの目はそういう達観を感じさせる目でした

以下の予告編の頭のところにあるシーンですね(本編ではもっと長くて圧巻ですが)

容赦ない暴力シーン、でもそれが投影されるのはスクリーンではない

目を覆うごとき暴力シーンの連続で、死体は次々につみあがっていきます

ところが、ほとんど目を覆う必要がないカメラワークが北野映画の真骨頂です

大杉漣さん演じる証券会社あがりのヤクザ組長の最後や、ピエール瀧さん、演じるSM好きの経済ヤクザの末路など、残虐な描写が多いのですが、それがカメラワークと演出によりほとんど映像化されていません

スクリーンに映らない観客の頭の中に残虐なシーンを投影しつつ映像にしないあたりが日本的なのかなとおもいました

俳句のようなこの省略の技法が世界の北野と言われる彼の映画の強みなのだと改めて認識しました

贅沢なキャスティング

結構重鎮がちょい役な感じででてきます。そこがまた贅沢

岸部一徳さん、原田泰造さんがびっくりするくらいちょっとしか出てこなかったり、存在感なかったり

北野映画特有の虚無感

誰に感情移入すればいいのかわからない映画です

たけし演じる大友が主役であることは間違いないし、彼の恩讐が、ストーリーの、基本になっています

それでも、彼の感情をほとんど表さない演出の為、彼に感情移入が出来ません

最後に大友が自分で最後のけじめをつけたときも大友よりも彼を見送った白竜にシンパシーを感じてしまいました

物語をみせられてるというよりも、事件をみせられているイメージです

それこそが北野映画の良さでもあるのですけど

以上 北野武監督の「アウトレイジ 最終章」の感想でした

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