劇場クラスターが発生、観劇者としてできること

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観劇をする者の一人として、当該の公演を「特別なもの」として他の舞台と一線を画するものして切り捨てることはしたくない。この経験をもとに舞台公演がより安全なものにできる方法を模索する一助になってほしい

目次

劇場クラスターが発生。観劇がリスクのある趣味に!?

「全観客800人を「濃厚接触者」と認定 劇場観客16人がコロナ感染」

東京都新宿区の劇場「新宿シアターモリエール」で6月30日から7月5日まで行われた舞台「THE★JINRO-イケメン人狼アイドルは誰だ!!-」の主催者は13日、これまでに観客16人から新型コロナウイルスの陽性反応が出ていることを明らかにした。保健所から全12公演の観客約800人全員が「濃厚接触者」と認定されたという。主催者は、観客に対して近くの保健所などに相談するよう呼びかけている

公演実施側もさることながら、舞台を見る観客の立場としても、このニュースは衝撃的でした

あまり芝居を見ない人からみると観劇行為が、危険を犯しているようにみえるのは辛い事態です
今回のクラスター発生劇団の観劇者は、濃厚接触者として指定されています。結果、芝居を見に行ったことで、会社への出勤ができない人がでてきているはず

会社員として勤務している身としては、出勤できなくなるリスクを犯すのは怖い
というのが、正直な感想です

観劇がかつてないほどリスクの高い趣味になってしまっている

実際、今回の舞台の状況を報道等で知る限り、観客として当該舞台に行った時にその危険性を把握するのは困難で、リスク回避のためにできることは少ないと感じています
今回の劇場のクラスターは、報道等を見る限りにおいては、以下のような状況だったようです

  • 劇場のキャパの半分程度(181→100)に座席を減らしてソーシャルディスタンス(SD)を保った状態
  • 入場時非接触型の検温器で体温測定
  • チケットの入場時のもぎりは、係の方ではなく自分で行う
  • 最前列は、フェイスシールドが配布されていた

この状況で、観劇時に「この制作は、感染対策が甘い 」と 判断するのは困難です

一方で、今回の場合、以下のような部分が感染対策として不十分であり、感染の要因であったと言われています

  • 観客席と舞台との間が2メートル離れていなかった
  • 公演中マスクをしていない客がいた
  • 公演中換気のための窓を途中で締めた
  • (未確認ですが)客席で演者が芝居をするシーンが有った
  • (禁止はしていたが)出待ちをした観客に応えた
  • 公演前に出演者が、ファンミーティング/ライブ等への出演をしており、蜜な状態だった
  • 公演期間中、出演者に体調不良者がいたにも関わらず公演を強行した

これらのことは、劇場に観客として訪れた時点で知ることはほとんど不可能ですし、もし途中で上記の状況が発覚しても劇場をあとにすることはできないでしょう。(しかも、多分途中で劇場を出ていても、「濃厚接触者」ということにはなるような気がします)

観劇者のできることは、信頼できる制作を選び続けること

結果として、観劇をする際に我々ができるのは、制作がしっかりしていると信頼できる舞台を見に行くしかないなぁという当たり前の行動しかできません

もちろん、自分の体調の確認は必須で、自分が体調不良のときは絶対に劇場に足を運ばない

そして、 信頼している制作の行う判断を全面的に支持していくしかないということです

制作は、大胆な判断を求められる

というのも、現状では今までの常識に沿った対応では、演劇公演の安全性を守れないと思うのです。
例えば、以下のようなツイッターがありました


医療関係の方のツイートで、たしかに正しい。ただ、 「体調不良な人を出演させない」=「公演を中止する」ということになるとなれば、即座にその判断をできる舞台関係者は多くないのではないでしょうか?

また、それがわかっているから、出演者も体調不良を言い出しにくくなるだろうし、制作の判断も揺らぐ。

それでも、これからは体調不良の出演者を舞台にあげない判断をしなくてはならない

だからこそ、観客は制作の判断を支持するしかない

観客は、そういう理由での公演中止の判断に対して、批判をするべきではないと思う

私見ではありますが、チケットの払い戻しについてもある種の天災扱いで全額払い戻しをしないという判断も許容して良いように思います(異論あるだろうとは思います)

演劇の灯を消さないために

新型コロナウィルス感染症の流行は、僕の大好きな演劇という世界は空前の苦境に立っています


東宝やホリプロといった大資本の演劇関係さえもこの状況ましてや、小劇場の世界はもっと大変です

小劇場公演の大事な拠点がここにきて相次いで閉館を発表しています

演劇という文化がなくなるとは思っていません。しかし、大事なものを失いつつあるのは確かです

失敗を排除するのではなく、糧として立ち向かう

劇場と違って目に見えにくいのですが、今回の件でもう一つ大事なものを演劇界は失いつつあるように思います

寛容さです

僕が演劇が好きな理由は、その自由さであり、あらゆるものを受け入れ、実験し、未知なるものに出会える懐の深さです

しかし、今回の件についての批判の中で、「対応がひどい」「うちとは違う」的な発言が見られたのは哀しいことでした

また以下の記事では関係者も「 今回は舞台公演といっても実際はイケメンを集めて女性ファンを喜ばせるという内容。ホストまがいのイベントだ 」という発言をしていたりしますが、そういうことを言うこと自体、演劇というものの裾野を狭めていると思います。

演劇関係者の方は、この舞台の経験を共有し、新しい公演様式を早急に組み上げてほしいと思います
僕らはそれを信じて、劇場にまた足を運びたいとおもいます

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