小栗旬さんの初ミュージカルかつ主演舞台は、劇作だけでなく映像作家としても名高い福田雄一さんの作品。ミュージカルの常識を全て無視した破天荒な作りながら、完全にコメディミュージカルとして成立していて、終わった後に幸せな気分にさせてくれる良作。小栗旬さんが様々なとばっちりに耐えながら、引っ張る一方で、ムロツヨシさん好き勝手に動き過ぎです。だれか、止めてあげて(面白いけど)
劇団 | フジテレビ | |||||
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題名 | ヤング フランケンシュタイン | |||||
公演期間 | 2017/08/11〜2017/09/03 | |||||
作 |
メル・ブルックス |
演出 |
福田雄一 |
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出演 | 小栗旬:フレデリック ムロツヨシ:ケンプ警部 瀧本美織:インガ 賀来賢人:アイゴール 保坂知寿:ブリュッハ− 吉田メタル:モンスター 宮川浩:ヴィクター 瀬奈じゅん:エリザベス 遠藤瑠美子、可知寛子、香月彩里、小暮キヨタカ、小山侑紀、坂元宏旬、高原紳輔、竹内真里、常住富大、丹羽麻由美、伯鞘麗名、辺田友文、福田えり、堀江慎也、横山敬、横山達夫 |
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劇場 |
東京国際フォーラム ホールC(有楽町)
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観劇日 |
2017年08月11日(ソワレ)
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目次
物語
かつて、トランシルバニアにて怪物を生み出し、人々を混乱に招き入れたマッドサイエンティストのヴィクター・フォン・フランケンシュタイン博士(宮川浩)の葬儀からすべては始まる。若い頃にヴィクターが生み出したモンスターに襲われた過去を持つケンプ警部(ムロツヨシ)を含め、村人はみな彼の死を喜んでいたが、城を相続する孫息子の存在を知り、驚愕する。
その孫息子であるフレデリック(小栗旬)はフランケンシュタイン家の末裔であることを隠しながらニューヨークの有名な脳外科医として過ごしていたが、ある日祖父の城と遺産を継がなければならないことを知らされる。彼にはエリザベス(瀬奈じゅん)という婚約者がいるためニューヨークに留まりたかったが、しぶしぶトランシルバニアに行くことに。
トランシルバニアでは少し変わった風貌のアイゴール(賀来賢人)と、セクシーな地元の女の子インガ(瀧本美織)が助手として出迎え、屋敷では古くから勤める家政婦のフラウ・ブリュッハー(保坂知寿)が待っていた。
フレデリックは数日間この不思議な城に滞在するうちに、かつて祖父のヴィクターがモンスターを造り出した実験記録を読み、自分も同じように実験をしたいと思うようになってしまう。そして、実際にモンスター(吉田メタル)を生み出してしまったことで、村中を巻き込む大トラブルに発展し…(以上 公式HPより)
小栗旬初ミュージカル主演
先日の髑髏城の七人(花)の主演から間もないのに、再び主演作。前クールのドラマ「CRISIS」もかなり手間のかかった見ごたえのあるドラマだったことを考えると、ほんと一体いつ休んでんだろうと思わせるほどのでずっぱりの日々です。舞台の主役は何度もこなしている小栗旬さんですが、今回は、なんといってもミュージカル初挑戦。さてどんなもんかと思い観に行きました。
結果は、舞台でのハードな殺陣もいくつもこなしてきた上に、先日のドラマでもかなり厳しい格闘技を元にした殺陣を体得したということで、ダンスについては、体のキレもよく、様になっていました。一方で、歌はまだちょっと…という感じでしょうか?声がかすれたり、裏返ったりということがありました。
仕事人ぞろいのキャスト
今回は、ミュージカルとはいえ、演出の福田雄一さんからして、けしてミュージカル畑の人というわけでもないので、色々な分野から最近の流行りで言うところの「仕事人」キャストが、揃っています。凄く明確な役割分担があって、各々替えが効きません。ミュージカルであまりアテ書きとか聞きませんが、今回はキャストがアテ書きされているような感じがしました。
ムロツヨシさんの六役にわたる多彩な「キャラ芸」。最初の三十分くらい(感覚値)の間に次々に役が変わっていくので、これは三谷幸喜さんの作品「ベッジ・パードン」で浅野和之さんが見せた20以上の役をこなすのかな?と期待しましたが、途中からは、ほぼ警部に固定されました。
瀧本美織さんの馬鹿でセクシーな女の子役もしっかりこなしてました。歌も意外に上手くて、ミュージカル向きと思いました。(他のミュージカル経験もあるのでしょうか?)
男優陣にあまりミュージカル畑の人がいないせいか、ミュージカル界の二大勢力宝塚と四季から来た二人の女優さんはこれでもかというほどの美声を競います。
二人とも独唱があって、これがコーラスのほかのシーンよりも印象に残る出来。保坂知寿さん演じるブリュッハ−夫人は、なんか只のおばさんという役回りから、実は先代のフランケンシュタイン博士の愛人であったことを告白する独唱は、迫力と美しさ+ちょっと可笑しさも兼ね備えた圧巻の歌いっぷりでした。
ちょっと、やりすぎじゃないかと思ったのも事実ですが(他の歌のシーンとあまりにも出来が違ったので…)
賀来賢人さんは、あんなお馬鹿な役というか、コメディタッチの振りぬいた演技が出来る人だとはじめて知りました。僕の見るドラマではどっちかという若手のエリートサラリーマンとか先輩にがむしゃらについていく若手弁護士的な役ばかりだったので(ほぼドラマ特定してますが)、かなり意外な側面でした。(今回の舞台演出と同じ福田雄一さん演出ドラマは見ていません)
新感線の吉田メタルさん。稽古場日記的なツイッターを毎日あげていらっしゃるのを見て、今回の舞台への期待を膨らませてきたのですが、まさかの見せ場が最終盤。そこまでとのギャップが面白かったですね。
常識外れなのにしっかりミュージカル
とにかく何でもありの演出です。
異種格闘技戦というか、サッカーのフィールドで、バットとグローブ持ってきて試合やっているような違和感が随所にありました。特にムロツヨシさん!に好き勝手にさせすぎです、だれか止めて!!(台詞ため過ぎだし、舞台上で牛歩戦術使うし、しゃべり原宿調だし、警部の威厳が一ミリも感じられません。おかげで、最後の絞首刑のシーンの緊張感が吹っ飛んでいました)....念のため言っときますが、ムロツヨシさんを褒めてます。
ばくり?フィーチャリング?
記憶力の関係で、2幕の方しか覚えていませんが、モンスターを探してるとピカチュウとかスライムのきぐるみきた人が舞台上をうろちょろし始めるし、エリザベスとモンスターがいい関係になり始めて「美女と野獣ね」という台詞を吐くと、カップ、キャンドル、ケトルという例のコンビが舞台上を走り抜けます。(流石に踊りださなかった)
終盤何故か、シャンデリアが落ちてくるオペラ座の怪人演出まで出てくる。(あ、この時怪人もやってからムロツヨシは七役だ!)
あげく、豊田真由子議員の「このハゲー」発言までで出てきます。 着ぐるみがあんなに登場するミュージカルも、時事ネタが組み込まれるミュージカルも初めて見た気がします。
下ネタも容赦なし
実は、今回の舞台を見たきっかけは、福田雄一さんのドラマにハマっている中学男子の為にチケットを確保したご夫婦と一緒でした。中学男子の都合がつかなくなったため、彼の代打でチケットを譲ってもらいました。
というわけで、舞台を見始めた時は、中学生男子の気持ちで見始めてみました。無理ありすぎて、すぐ放棄しましたが(笑)。
結構、下ネタ多めで、保坂知寿さんも胸を強調してみせたり、瀧本美織さんがモンスターのあそこの大きさを想像してうっとりしたり、小栗旬さんが「役の上で」童貞であることをいじられたりしていて、これ中学生男子に見せてよかったんだろうか?とちょっと思いました(まわりにまったくそういう年代のこどもがいないのでよくわからないのですが)
楽屋落ち多数。座長も容赦なし
奥さんからのテレビ電話の話をばらされたり、藤原竜也の物まねさせられたり、ちょっと頭がやられて異常になった時に、女性にだれかれ構わずキスしようとしていた姿を「20代の頃の小栗旬みたいだー」とか言われたり、楽屋落ちが多数あります。
ていうか楽屋落ちの被害はほぼ小栗旬さんが被ってる気がします。座長は辛い…
ダンスは美しい
今回は三階席だったおかげで舞台はちょっと遠いですが、俯瞰で見ることができました。(そういえば、東京国際フォーラムのCホールの3階席は初めてだったかもしれません。
その御蔭で、群舞のシーンの美しさが印象に残りました。最初の雨傘を使ったオープニングシーンや、貞操感の強いエリザベス(瀬奈じゅんさん)に一指も触れることが許されないフレデリック(小栗旬さん)が、二人の別れを惜しんで手さえも触れ合わないままソーシャルダンスを踊るシーンも、周りのカップルを巻き込んだ当たりから印象的な群舞になりました。個々が独立しているのに、ペアがあるという感じはちょっと不思議なダンスシーンでした。
全般の振り付けが、個々の役者の高い身体能力を必要としない(超早い動きがない、足が高く上がらないなど)振りになっていながら、統一感のある動きができていて、ダンスシーンとしての完成度は高くなりそうに見えました。(初日なので、若干乱れを感じる部分もありましたが)
一方で、タップダンスシーンは、ちょっと不満が残りました。練習が必要というよりも、今回のような座組で、メインキャストがやる必要があるのか、疑問をかんじました。上手い下手が出やすいもののような気がして(かつ、観客的には上手い人の技巧に触れる機会の多いダンスであることを考えても)中途半端にやるなら、やらないほうがよいのではないかと感じました。
意外にローテク
新作だし、SFホラーものだし、もっと最近の技術を多用してくるかと思っていましたが、あまり使われていなかったのは意外でした。
例えば、プロジェクションマッピングとか使えば、森での探索シーンや、モンスター誕生シーンのあたりももっと真に迫った演出になったきがしましたが、そういうのはほぼなし。
フレデリックが、祖父のフランケンシュタイン博士(ヴィクター)を悪夢で見るシーンがあるのですが、その中で出てくる巨大フランケンシュタイン・モンスターが、昔「8時だよ全員集合!」で見たジャンボ・マックスみたいな巨大操り人形だったのには笑いました。
見る人を幸せにするコメディミュージカルとしての完成度の高さ
たしか、シェイクスピアの喜劇は必ず結婚式で終わります。この舞台もラストシーンで、主人公達がちょっとビックリな組み合わせで結ばれるシーンがあります。
こう言っては何ですが、これだけ掟破りをしておいて、最後にこんなベタな終わり方で終わるあたり、思わずアイゴール /インガの二人のノリで「素直か!」と突っ込みたくなってしまいました
ただ、こういう終わり方をすると、観客を幸せな気分にさせてくれますね。結果的には正解の終わり方だと思いました
衝撃的にムロツヨシの歌がうまい件
今回の舞台では、ムロツヨシさんの出番がやたらあります。後述する理由もあるのでしょうが、今回の舞台においては彼は本当にキーパーソンで、彼が出てくるだけで、観客の体感温度が0.5度くらいあがります。(だから、調子にのる。劇の最中にいきなり、2階席とか3階席煽るのは、やりすぎな気がします)
その中でも驚かされたのは、2幕の半ばで見せた彼のハイトーンも含めた独唱です
こんな面白い上に、こんなに歌が上手いんじゃ、ムロツヨシさん、これからミュージカル界からも声がかかんじゃないの? やべ、小栗旬さんよりうまいよ。うわー、どんだけ多才なんだよ。大河でているのはダテじゃないな(関係ないけど)。NHKの「Life」でミュージカルネタのコントやってくんないかな
とか、感心しながら聞いていました
その直後衝撃の懺悔があるまでは。
ミュージカル舞台で口パクするなぁー!なんか舞台袖で別の役者さんがムロさんの口に合わせてアテレコしていた模様。
アテレコをしてくれた高原紳輔さんをやたら宣伝してましたが、観客は覚えてないと思います。あんな素敵なことしてもらったんだから、ムロツヨシさんが、彼のチラシを、帰りのお客さんにくばるべきじゃなりでしょうか?
ご本人は、千秋楽までには、フルコーラス自分で歌えるようになると宣言していました。誰か、千秋楽近くに見に行った方、どうだったか教えて下さい。
文化がちがう?
演出の福田雄一さんは、舞台出身(ブラボーカンパニー,U-1グランプリ) の脚本家さんではありますが、テレビドラマの「勇者ヨシヒコ」シリーズや「スーパーサラリーマン佐江内氏」のような作品でマニアなファンの多い作家さんのようです。(勇者ヨシヒコ …なんどかチラ見たことがあるのですが、RPGをほぼしない私には肌にあわず通して見たことがありません)
そのせいか、ムロツヨシさんや賀来賢人さんが出てくると会場の一部が妙に盛り上がります
笑いのポイントも、会場全体とズレてるように感じたのは僕の気のせいでしょうか?あまり、演劇慣れしていない観客の方が多かったのではないかと感じました。勿論、そういうきっかけで観客が増えるのは喜ばしい限りです。
ただし、マナーは守ってほしかったです。僕の後ろの客がうるさかった。てれびじゃないんだから、舞台中にコメントを隣の人と話すな!( 怒)
どこまで原作なのか、ちょっと気になる
元々は、メル・ブルックスの映画が原作のこの物語ですが、どこまで原作なのか気になりました。たとえば、フレデリックが最初は嫌がっていたモンスターづくりに着手するきっかけとして、祖父(ヴィクター)の悪夢を見るというのが、ありました。
そのなかで、フランケンシュタイン家の家業がモンスターを作りだから、それを継げという台詞があります。家業だから継げという理屈がとても日本的な気がしたのですが、これ原作なのかなぁ?
ほかにも、フランケンシュタインが最後に頭がよくなるの?わけわかんない脳内物質の名前を口走ってましたけど…とか、気になるところがたくさんありました。原作見てみたくなりました。
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