| 劇団 | 劇団桟敷童子 | ||||
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| 題名 | 一九一四大非常 | ||||
| 公演期間 | 2025/11/25~2025/12/8 | ||||
| 作 | サジキドウジ | 演出 | 東憲司 | ||
| 出演者 | ■方城炭鉱会社 中野英樹:吉村(坑内主任) 原田大輔:柴(会社職員) 吉田知生/span>:五十嵐(会社職員) 前澤亮:田所(会社職員) 原口健太郎:小野寺(現場坑長) ■炭坑労働者・一番方 長嶺安奈:ハル(妊婦) 稲葉能敬:金太郎(ハルの夫) 瀬戸純哉:鶴八 もりちえ:カツノ(鶴八の内縁の妻) 柴田林太郎:彦兵衛 川原洋子:キワ(彦兵衛の妻) 井上莉沙:オミツ(彦兵衛の姪) ■炭坑労働者・二番方 大手忍:ソラ(ハルの妹) 藤澤壮嗣:タスケ(ソラの許婚) 加村啓:新太 増田薫:登喜恵 ■村人 山本あさみ:高松(三人の息子の母親) 鈴木めぐみ:ツネ(元炭坑労働者) ■尋常小学校 三村晃弘:藤崎(校長) 板垣桃子:梁瀬アサヲ(教員・梁瀬農園の娘) ※炭坑労働者・村人・会社職員・子供たち…全役者陣 |
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| 劇場 |
すみだパークスタジオ倉(本所吾妻橋)
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| 観劇日 | 2025年11月28日(マチネ) | ||||
目次
作品について
本作は、1914年(大正3年)12月15日に福岡県田川郡方城町(現・福智町)の三菱方城炭鉱で起きた日本最大級の炭鉱爆発事故を題材にしています。福岡出身の東憲司さんが独自に取材を重ね、脚本に仕上げました。公式発表で671名が犠牲となった「方城大非常」と呼ばれるこの事故。実際にはさらに多くの方が亡くなったとも言われています。
公演は11月25日から12月7日まで、すみだパークシアター倉にて上演されています。
「蝉追い」との繋がり
今年の夏に観た同劇団の「蝉追い」と繋がりがある作品でした。「蝉追い」は現代に近い福岡の元炭鉱街が舞台ですが、本作にはその主人公一家の先祖にあたる人物が登場します。初見の方にも楽しめる舞台ですが、劇団を追い続けているファンには嬉しい仕掛けが込められていました。
演出の特徴
暗転なしのノンストップ2時間という構成です。歴史的事実を扱うため説明的な台詞は多いものの、一気に駆け抜ける展開のおかげで長さを感じませんでした。
物語は三つの視点で描かれます。坑内で事故に遭った人々、救出に向かう救助隊、そして地上で見守る家族たち。それぞれの立場の人物がしっかりと描かれていました。
役者陣の熱演
多くの役者さんが参加した群衆劇です。一人が二、三役をこなしているため、実際の人数以上の登場人物がいるような錯覚を覚えるほど緻密な舞台でした。
特に印象的だったのは、もりちえさんの演技です。この劇団を見始めた頃からいらっしゃる役者さんですが、今回は身の毛がよだつほど力のある演技をされていました。体の奥底から溢れ出るような表現に引き込まれました。
坑内で事故に遭う妊婦ハル役の長嶺安奈さんともりちえさん(カツノ役)が脱出を図る場面は、映画「ポセイドン・アドベンチャー」を思い出しました。右へ行くか左へ行くかの緊迫した選択、反目していた人々が助け合いながら逃げ道を探す姿、金属を叩いて生存を知らせる場面。大好きな映画と重なり、登場人物たちに感情移入してしまいました。
救援部隊を演じた原口健太郎さんや中野英樹さんの熱演も素晴らしかったです。中野さんは追い詰められた救援隊長の役で、その苦悩の演技が胸に迫りました。中野英樹さんは客演ですが、この劇団への客演も初めてではなく、このような桟敷童子にとって異質の作品だからこその信頼されての出演だったのだなぁと実感しました
板垣桃子さん、大手忍さんといったいつもの俳優陣も良い演技をされていました。板垣さん、大手さん、もりちえさんの三人が並ぶ場面では、この劇団を代表する女優さんたちだと改めて感じました。
時代背景と物語の展開
物語は1914年の炭鉱の何気ない日常から始まります。今から111年前、大正時代。まだ貧しい人も多く、子どもたちさえも炭鉱で働かされていた時代です。小学校の先生や、妊婦、女性たちが坑内に入っていく姿が描かれます。
そんな日常が突然崩れる大事故。原因は結局わからないまま、多くの命が失われました。助けようとする人々、生き延びようともがく人々、家族を待つ人々の姿が胸を打ちます。
大正天皇からの勅使や、三菱の岩崎家の男爵が現場に来る場面も描かれていました。(舞台内では、ぼやかされていましたが…)
良かれと思ってのことでしょうが、こういう時にはかえって大変だったのではないかという皮肉も感じました。
舞台装置
舞台装置も素晴らしい作り込みでした。炭鉱の迷路のような坑内を、材木を組み合わせた足場で表現しています。作るのがどれほど大変だったか想像できます。
舞台上には落下物がたくさん落ちてくるのですが、暗転がないのに気づけば片付けられている。劇団員たちのフォーメーションと舞台転換の技術に感心しました。演出と稽古にどれだけの時間をかけたのか、恐ろしくなるほどです。
まとめ
当時の事件を細かく取材し、2時間のドラマに凝縮した緻密な舞台でした。人が生きるための戦いへのメッセージを感じることができます。
平日夜のチケットがまだ余っているのはもったいないと思います。福岡で上演すれば多くの方の心に響くでしょうが、この舞台装置を他の劇場に持っていくのは難しそうです。
映像作品として残ればいいのですが。ここ最近の劇団桟敷童子の舞台の中でも、特に印象に残る作品でした。

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