[劇評]渡辺源四郎商店×おきなわ芸術文化の箱「ハイサイせば〜Hello-Goodbye〜」@こまばアゴラ劇場(こまば東大前)

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初めて足を運んだ渡辺源四郎商店の「ハイサイせば〜Hello-Goodbye〜」は、方言の豊かさのあるこの国の幸福を感じ、戦争と沖縄が置かれた(置かれ続けた)本土との確執と差別の現実にこの国の不幸を感じる非常に考えさせられる舞台でした

劇団 渡辺源四郎商店
題名 ハイサイせば〜Hello-Goodbye〜
公演期間 2018/01/062018/01/08

畑澤聖悟

演出 畑澤聖悟
出演 安和学治:比嘉盛昌(漁師、沖縄県浦添村出身)
当山彰一:比嘉幸信(クェーカー教の牧師、沖縄県浦添村出身)
三上晴佳:工藤シズ(海軍省の掃除婦、青森県大杉村出身)
工藤良平:工藤佐吉(序二段梵珠山、青森県大杉村出身)
佐藤宏之:田中康成(東京帝国大学助教授、茨城県出身)
我満望美:高橋芳子(海軍省職員、タイピスト、東京都出身)
工藤和嵯:鈴木利通(情報将校、海軍少尉、東京都出身)
畑澤聖悟:佐藤剛太郎(情報将校、海軍少佐、東京都出身)
劇場
こまばアゴラ劇場(こまば東大前)
観劇日 2018年01月08日(マチネ)

目次

物語(劇団HPより)

【あらすじ】

第二次世界大戦末期、日本の外務省と在独大使館の間で、乱数表を用いた暗号電報の代わりに早口の薩摩弁で国際電話をかける方法が採択された。大胆なその手法は功を奏したかに見えたが、アメリカ軍に盗聴、解読される。次の手を打つため、琉球語を話す男と津軽弁を話す男が、密かに軍に呼ばれた・・・

劇評での評判をみて朝こまばアゴラ劇場へ行きました。

渡辺源四郎焦点は青森の劇団で、良く耳にしつつもなかなか観ることのできないままになっている劇団でした

高野しのぶさんの劇評での高評価もあり、当日券狙いで早起きしてみにいきました

早起きのかいあって、整理番号は1番をゲット!前から二列目のほぼ真ん中という両席を確保し、十二分に堪能できました

青森と沖縄のコラボ作品

両者の距離を考えると奇跡のコラボといっても過言ではない

実際、2015年から交流を続け、途中でひらめいたアイデアを元に、メールとお互いのやり取りの末、年末年始の合宿で完成した作品とのこと

以下ネタバレがあります。これから見る予定の方は、見られた後でご覧ください。

方言がマジでわからない

僕が、初めて琉球方言に触れたのは、大学3年のゼミ合宿という名の沖縄観光旅行。居酒屋の店員の言葉が全くわからないという経験をしました

薩摩方言は、大学4年の卒業旅行で訪れた鹿児島で地元の人たちの会話を聞いてやはり全然わかりませんでした

新卒で入った会社の同僚の中に二人の津軽出身の人間がいて、二人の会話がまるでわからなかったのもよく覚えています

だから、各々の言葉がいかに理解できないかはを実際の生活の中で実感していました

それでも、それが舞台で目の前に並べられると壮観な舞台になりました。(今回は薩摩方言は、背景説明にしかでてこないが)

実際、途中でこれでもかって言うくらいに各々の津軽と琉球の出身者が勝手に身の上話を始めるシーンは、客席全体があまりに理解のできない目の前の光景に笑い出すしかないという状況がくりひろげられました

方言を巡る哀しい歴史

そんな方言を巡る歴史物語として、今回は第二次世界大戦末期の海軍省での一室で物語がはじまります

僕は、こういう知られざる歴史を扱う作品は大好物です!!

誰もが自分の素性を隠すことから始まる

当時の方言についての差別的な扱いや地方から東京に出てきたものの哀しい事実が各々から語られる

方言札の存在。土人と罵られる現実。一際、沖縄の置かれている立場は哀しい。そして現在にも続いているウチナーとヤマトの関係が浮き彫りになる

勿論、相撲部屋や仕事場で差別されたり殴られた青森の話も悲しい

赤狩りと沖縄、戦争と青森リンゴ

共産主義者を狩る当時の言論思想統制の歴史が絡むあたりは、脚本の巧みさを感じました

必ずしも、共産主義者として政府に拘束された人が沖縄の人ばかりだったわけではないでしょうし、戦争が人を変えた時代の中で起きた悲劇ですが、話の流れから、赤狩りに繋がるとは思いませんでした

国が推し進めた青森リンゴを戦争によって、方針変更を喰らい、リンゴの木を泣きながら切った話も、青森の劇団ならではの視点の話でした

泣かせるラストシーン

方言を巧みに操る役者さん(地元の方なので当たり前ですが)の演技はどなたもとても真に迫っていて、物語への感情移入ができました

中でも、三上晴佳さん演じる工藤シズカが、つながっていない電話の向こう語りかける長文のモノローグで終わるラストシーンは私も含め目頭が熱くなりました(まわりも、泣いている雰囲気が伝わってきたので、僕だけが涙腺が弱いわけではないはず)

国の勝手な都合に振り回された青森のリンゴ農家の話が、ラストシーンの伏線になっていました

11時開演の舞台。いいなあ

実は、今回当日券でこの芝居を選んだ大きな理由は、この舞台の開演時間(午前11時開演)にありました

休みの日午前中って何かあんまり生産性のある活動が出来なくてボーッと過ぎてしまうことが多いのだけど、この時間開演の舞台ならば、午後は別のことに使えそうで丁度いいです(うちを9時に出て、10時過ぎに劇場に到着)

おそらく地方から東京に公演に来ている劇団に取って、楽日の早い時間に公演を終えてバラして帰る為の公演時間だったと思うのですが、他の東京の劇団もやってくれないかなと実感しました

終わって12時半で、それから街中にでれるのってなかなか新鮮な体験です

劇団員にしてみれば、前日の夜公演との間が短すぎてつらいかもですか

沖縄や青森の公演もみたいなあ

きっと東京とはまったく違うところで笑いが起きたりするんだろうなとか想像をしてしまいます

劇中に、何箇所か方言が早くかつそもそも意味を知らないので、まったくわからなかった台詞が多数あったのですが、その中に笑いのポイントが実は隠されていたのではないかとか、勘繰ってしまっていたり

いや、無理ですが

以上 渡辺源四郎商店×おきなわ芸術文化の箱の公演「ハイサイせば〜Hello‐Goodbye〜」についての劇評でした

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