[劇評]12人の優しい日本人を読む会「12人の優しい日本人」@YouTubeLive

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外出自粛、次々の公演中止の続く暗い雰囲気の続く中で、ZoomとYoutubeLiveで上演された生配信。生物(なまもの)の良さに改めて気づかせてくれた試みでした。いや試みというのはちょっと申し訳ないくらいの完成度で、無償で見せていただいた事に感謝しか感じない素晴らしい作品。勿論、芸達者な役者たちによって演じられたことも、素晴らしい脚本であることも去ることながら、演劇のチカラを見せつけるという気概が伝わってきたからこその感動だったと思いました

劇団 12人の優しい日本人を読む会
題名 12人の優しい日本人
公演期間 2020/05/06

三谷幸喜

演出 冨坂友
出演者 甲本雅裕:1号(陪審委員長)
相島一之:2号
小林隆:3号
阿南健治:4号
吉田羊:5号
近藤芳正:6号
梶原善:7号
妻鹿ありか:8号
西村まさ彦:9号
宮地雅子:10号
野仲イサオ:11号
渡部朋彦:12号
小原雅人:守衛
劇場 Youtubeライブ
観劇日 2020/05/06

目次

突然発表され、熱狂で迎えられた「読む会」

2019年末に中国で症状が確認された新型コロナウイルスの感染拡大は一気に広がり、2020年に入って以降、事態は日々悪化していきまいした。
演劇界は、もろにその影響を受け、数々の舞台が上演中止を決断。舞台関係者(僕のような観るものも含め)非常に厳しい状況に置かれています。

暗いニュースが多い中で、この感染症対策のためのテレワークで一気に注目を浴びたZOOMというオンライン会議アプリで三谷幸喜さんの名作「12人の優しい日本人」をその東京サンシャインボーイズの面々と、あの2009年再結集時の舞台に出た吉田羊さんが再結集してライブで脚本を読むという企画は、演劇系のウェブメディアでは一気に取り上げられました。(残念ながら、地上波メディアではほとんど上演されるまでは、注目を集めていませんでしたが、上演後はテレビのワイドショーでも取り上げられました)

ここからはネタバレします

三谷さんのヒゲが

上演後も配信されることは予告されていたものの、できれば生でみたい。とはいえ、始まってみなければ動画の再生環境等がちゃんとできるかどうか不安もあり、僕自身、バタバタしながら上演を待ちました(できれば、大画面でみたいと思い、今まで接続したことのなかったテレビにパソコンをつないでみようとしていたのでちょっと慌てていた)

そういう意味で、ライブ開始後すぐに上演が始まるわけではなく、近藤芳正さんによる企画の経緯とかを話してくださる時間は助かりました。この時間で、見る側の環境設定を確認することができました。( 私の場合、この時間内にテレビ接続ではうまく視聴できないことが判明し、ノートパソコンの若干小さめな画面で観る決断をしました😪

と、 突然三谷さんが乱入。その髭ボーボーの姿に一気に和みました。 が、三谷さんからは、作品完成度いついての激が入りいよいよ上演開始しました

古い脚本だったんだなぁ

僕自身は、映画版も観ましたし、PARCOで上演された舞台版も観ました。
ただ、細部は覚えてなかったので、セリフ中に出てくる時節を表す言葉で改めて、脚本の書かれた年代が古いことを思い出しました。
貴花田(貴乃花でなく)、若花田(若乃花ではなく)、ジョイナー…そうかそんな前か…と思いびっくり(舞台や映画見たときには違和感がなかったということはきっとそれを観たのでさえ、結構前なのかと地味に衝撃が….)

勿論、日本に裁判員裁判制度が導入される前の話ですから、当然に古いのはわかっていたのですが。

それでも、話の面白さは抜群で、脚本のちからは全く衰えを感じることがありません

ま、一方で、当時の配役と同じ役をやっている役者さんも確かに年齢を重ねているわけで、特に若い人を演じていた相島一之さんと梶原善さんの役は若干痛い…かもと失礼なことを思いつつ観てましたm(_ _)m

「読む会」なのに読んでない!!

実は、観るまでは本当に脚本を読む、パルコの「ラブレター」みたいな朗読劇イメージをしていたのですが、がっつり皆さんセリフを入れ、小道具まで用意して演技をされていることに驚きました

これは、相当練習をしたんだなぁと感じました。この作品に対する皆さんの本気度が伝わってきました(そりゃ、三谷さんも激をいれてくるはずだ)

基本的には、会話劇であるこの舞台(だからこそこの作品を選んだのだと思いますが)でも、表情だけで演技をしなければならない今回の上演はかなり難易度が高かったはず。画面12分割されている小さな空間の中で、画面によったり、振り返ったり、小道具と自分がうまく収まるように少し引いたりとそれでも、みやすさを相当に意識した演技。

ちょっとした演劇界の実験的な試みというよりも本気の作品に向き合う真剣度でこちらも居住まいを正して観てしまいした

Zoom上演のいい点とちょっとなぁ

ZOOM上演のちょっとなぁ

当然に舞台上演ではないので、様々な制約があります。特に、俳優が動けないのと、画面上での自分の位置を指定できない(のだと思う、実はZOOMを自分で使ったことのない私)ことによる制約をいくつか感じました。

誰に話しかけているかわからない

もしかしたら、上演中は参加されている方も自分が画面上のどのあたりにいるかということを把握しにくいのかもしれないですが、顔を向けた方向に話しかけた人がいないという場面がいくつかありました

ま、話しかけられた人が答えるので、そのうちなれたのですが、やはり役者さんの目線を追う癖があるため最初は戸惑いました

やはり、脳内補完してるんだろうな

また、体の動きがないがゆえに、初めて観た人にはこのシーンの状況わからないだろうなと思うところもありました。
例えば、弁護士と名乗る俳優(野中さん)が、無実の証明をしたいがいまいち論拠が思いつかない二人に対してこっそり時間稼ぎを提案するシーン。舞台版や映画版では他の陪審員に聞こえないようにこっそり話すというシーンなのですが、ZOOMではその感じはわかりません。でも、そこを違和感なくスルーして状況を理解していたことに後で気づきました。

もとの舞台なり映画を見たときのイメージが残っていたからだと思います。このライブで初めてこの脚本に出会った人にはその辺りはつたわらなかったかもしれません

「読む会」なんだから、そこまで期待しちゃだめだとも思うのですが
なまじ、素晴らしい作品であるがゆえに、そういう部分は気になりました

ZOOMとライブであるがゆえの利点

一方で、Zoomであるがゆえの利点もありました

大量の視聴者が同時に視聴

最大で2万人近い視聴者がいたとおもいます。これほど多くの観客が同じ時間を共有し、しかもここの役者さんの演技を表情だけとはいえ、間近に近い感覚で見れるというのはとても新鮮な試みでした

登場人物が減ると自動が顔がアップになる

これは、ZOOMの仕様だと思いますが、登場人物が増えたり、減ったりすると自動的に残った人の顔を写す画面サイズが大きくなります
特にラストで、一人づつ部屋を出ていく(=ZOOMから退出する)につれて、残った相島さんの顔がアップになっていくことにより、相島さんの表情の演技がドアップで見れるようになったのはより感動を増幅させてくれました
(おそらく、演出としてそこを活用したのだとおもいます。そういった意味で、こんな新しい仕組みを使いこなして演出した富坂さんもすごい)

食事をしながら、ディナーショー気分で

通信回線等のことを考えて、2部構成で上演された今回の作品。第2部の上演が18時からということもあり、夕食をとりながらの視聴ができました。舞台ではとても考えられないディナーを取りながらの観劇。思わぬ贅沢気分を味わうことができました(ドミソではありませんが、ピザを食べながらの観劇でした!)

後から知ったWeb会議だからこそのハプニングとファインプレー

富坂さんの以下のTwitterで知ったのですが、ラストの大事なシーンで相島さんのセリフが通信回線の関係で聞き取れないというハプニングがあったようです(気づきませんでした)

それを宮地さんがうまく拾ってセリフを変えることで乗り切ったという部分、当初近藤さんがおっしゃっていた「どんなにグダグダになってもやりきる」という精神を感じさせてくれたエピソードでした(もっといえば、このハプニングも、グダグダになったという感じではなく、逆手にとってより良いシーンになったと僕は思いました)

いずれにしても、演劇の世界で新しいものに出会うことができました
このウィルスによる暗いニュースの中で、こういう試みから生まれる作品の可能性を感じ、役者さんたちのちから、脚本のちからを感じた時間でした

以上、12人の優しい日本人を読む会の「12人の優しい日本人」の劇評でした

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1 個のコメント

  • 12人の優しい日本人(2020) | 演劇感想文リンク へ返信する コメントをキャンセル

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