[劇評]プリエール「愛しのドラム 〜ザ・フルーツ2〜」@赤坂レッドシアター(赤坂見附)

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「愛しのドラム〜ザ・フルーツ2〜」は、この前作にあたる「ザ・フルーツ」にてドラマー役で出演していた井之上隆志さんが3月に急逝されてしまった後の、新作舞台。出演していない井之上さんを一番感じる物語で、「ゴドーを待ちながら」さながらに、出演者たちがゴローならず井之上さんを慕う思いが伝わってくるジーンとくる舞台でした

劇団 プリエール
題名 愛しのドラム〜ザ・フルーツ2〜
公演期間 2017/09/082017/09/18

中島淳彦

演出 中島淳彦  
出演 春風亭昇太:青井リンゴ(たもつ)
六角精児:大木バナナ(浩一郎)
中嶋淳彦:桜井チェリー(正男)
津村知与支:パール・ライデン(島津)
照屋実:今野ただし(13号)
清水ゆり:中泉花子(事務員)
池田愛:伊藤ペペ子
矢野陽子:青井繁子(青井りんごの母)
劇場
赤坂レッドシアター(赤坂見附)
観劇日 2017年09月10日(マチネ)  

目次

ゴドーを待ちながら

というかぺぺイトーを待ちながらといった感じの物語

最後まで現れないが、そして誰よりも、観客はそれを分かっているのだが、それでも、奇蹟を信じてドラムを見つめてしまいます

ザ・フルーツというバンドが主役の演劇

一見昇太さんが主役の物語だが、六角さんや中島さんを含めバンドが崩壊し再生していく物語という枠組みを考えると、バンド全体が主役の物語だった。前回の作品に較べて、物語色が強くなり、バンドの演奏が中心の舞台という印象はなくなった

フルーツというバンドをささえ続ける人々に周りで支えられ、すべてがこのバンドを中心に話が続きます

なぜ、こんなバンドのためにみんなが一生懸命になるんだろうという問いに応える照屋さん演じる唯一のファン13号の台詞は印象的でした。ダメなバンドでも、ダメだからこそ、救われる者がいるという心理は、何かつたわってくるものがあります

ダメでも、存在する意味がある。ある意味深遠な言葉です

色々な形で、バラバラになりかけたバンド

バラバラになっていくさまは、見事なまでにバラバラでおかしい。大木という役名の六角さんが、選挙ポスターになると大木凡人にしかみえません

そんな、六角さんは、金権政治そのままの選挙演説であえなく落選

演歌歌手に転身した中島さんの歌も、静岡を日本三大バカの産地としてうたったおかげで将来性はなくなった。

ちなみに三大バカ産地というのはどうやら中島さんの創作みたいですね。ネットで検索しても出てこなかった。

昇太が母を思う涙は

最初はギャグで、観客を惹きつける為に、嘘で殺した母へ捧げる歌「煙突」がとてもよかった。

火葬場の煙突から上がっていく煙に身内を思う様にグッときたりした。こんな歌をギャグの中で使う辺り、脚本の巧さを感じました。

でも、そのギャグはやがて真実になってしまう。

静岡の茶畑を売り、バンドをささえつづけてくれた母の危篤、そして死を前にして歌うラストのバンドシーンも同じくジーンとくる

潤んで見えた昇太の瞳(気のせいかもしれないが)は、演技もあるだろうが、設定上バンドを支えてきたそして本当に他界してしまったぺぺ伊藤こと井ノ上隆志さんへの涙だった。というのは、僕の勘ぐりすぎたろうか。

存在感のある13号

目を引くそして印象に残る役者さんでした…と書こうとしたら、前回観たときにも同じ事を書いてました。なんだろう、この存在感。照屋さん、不思議な役者さんです

津村知与支さんは、今回は謎のドラマー役

ライデンという名前のドラマーって聖飢魔Ⅱのドラマーををイメージしてたのですが劇中の格好はちょっと違いましたね。僕のイメージは、こんな感じだったのですが。↓

ライデン湯澤殿下のドラムを忘れられない僕としては、単なる金髪ではなくこんな感じのヘアで出てきてほしかったです(あくまで、妄想です)。 悪魔的な衣装?の黒ずくめの全身タイツ姿で心を悪魔にうってしまうあたりはおなじかな?

身内から湧き出る悪魔のささやきにあらがいなから負けてしまう記憶喪失の男という、めちゃくちゃな設定を過剰すぎる演技でのりきったのはさすがです。

もともとドラム叩けるひとだったのでしょうか?ぺぺ伊藤に代わって、最後のドラマーとしての演奏もなかなかのものでした。

本当の主役は…

なんかしんみりとした終わりかたでした。前作は、楽しい!終わり方だったのとちょっと対照的だったかもしれません。

結局、本当の主役は、井之上隆志さんが演じるはずのぺぺ伊藤だったからかなぁ。と思いました。

以上 2017年9月に赤坂レッドシアターで上演された「愛しのドラム 〜ザ・フルーツ2〜」の劇評でした。

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