| 劇団 | 大森プロデュース | ||||
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| 題名 | 更地 Select SAKURA10 | ||||
| 公演期間 | 2026/3/28~2026/4/5 | ||||
| 作 | 故林広志/大森博 | 演出 | 大森博 | ||
| 出演者 |
伊倉一恵:行き方はひとつ、新しい私1、同窓会事故、新しい私2、握手会、新しい私3、帰り方はいろいろ 大森ヒロシ:行き方はひとつ、新しい私1、同窓会事故、裏切りの街角、新しい私2、新しい私3、壁の穴、帰り方はいろいろ 松野井雅:行き方はひとつ、新しい私1、新しい私2、仁義っ子、握手会、新しい私3、帰り方はいろいろ 山口良一:行き方はひとつ、新しい私1、同窓会事故、裏切りの街角、新しい私2、アクション家族、新しい私3、壁の穴、帰り方はいろいろ おおたけこういち:行き方はひとつ、新しい私1、セブンスリー、苦情、アクション家族、新しい私3、帰り方はいろいろ 依里:行き方はひとつ、新しい私1、想い出がいっぱい、苦情、アクション家族、新しい私3、帰り方はいろいろ 岩崎ひろみ:行き方はひとつ、同窓会事故、想い出がいっぱい、苦情、握手会、帰り方はいろいろ 佐久間哲:行き方はひとつ、同窓会事故、想い出がいっぱい、仁義っ子、新しい私3、帰り方はいろいろ 石倉三郎:行き方はひとつ、裏切りの街角、仁義っ子、壁の穴、帰り方はいろいろ 黒田篤臣:行き方はひとつ、新しい私2、苦情、仁義っ子、アクション家族、新しい私3、帰り方はいろいろ |
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| 劇場 |
小劇場B1(下北沢)
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| 観劇日 | 2026/4/4(マチネ) | ||||
目次
受付様ありがとうございます!
今回の公演、実は東京行きの予定がなかなか固まらず、チケットを取ったのは前日でした。補助席扱いになるかも、と思っていたのですが、当日の受付でうまく案内していただいて、結果として落ち着いて観劇することができました。このあたりの運営のしっかりさも、大森カンパニーらしい安心感かなあと思います。
ただ、今回いちばん強く感じたのは、そういう周辺のことよりも、やはり「再演なのに、こんなにも味が変わるのか」という驚きでした。
「更地」は14本のコントが次々に上演されていく舞台です。今回もそのうちいくつかが続き物になっていたのが特徴的でした。1本目の「行き方はひとつ」と14本目の「帰り方はいろいろ」が、きれいに始まりと終わりを作っていて、最初の一本が最後へ向けた大きなふりになっている。ああ、こういう構成のうまさが「更地」だよなあ、と最初から引き込まれました。
さらに「新しい私1」「新しい私2」「新しい私3」という三部構成も入っていて、1と2の段階では正直、どこへ着地するのか少し見えにくいところもありました。けれど3まで見終えると、なるほど、ここに落とすのかと分かって、全体としてちゃんと一本の流れになっている。単発のコントを差し込みながら、続き物も混ぜ、しかもテンポを落とさない。この14本を見せ切る構成力そのものが、まず見事だったと思います。
その上で、今回特に印象に残ったのは「裏切りの街角」と「握手会」でした。
石倉三郎さんが入った「裏切りの街角」の新しい重み
「裏切りの街角」は、山口良一さんと大森ヒロシさんという、いわばこのシリーズの空気をよく知っているお二人が支える構造は変わっていませんでした。ただ、そこに石倉三郎さんが入ったことで、作品の手触りがかなり変わっていたように思います。
前回はもっと若い方が親分役だった記憶があるのですが、今回は山口さんや大森さんより年上の石倉さんが組長を演じる。これが実に効いていました。貫禄のある、いかにも重みのある組長が、作中ではオロオロしている。そのギャップがまずおかしい。しかも石倉さんご本人が持っている俳優としての重みがあるので、単なるドタバタでは終わらず、妙な説得力まで出てくるんですね。
コントなのに場が締まる。なのにその締まり方が、そのまま笑いにもなっている。これは石倉三郎さんという存在ならではだったのではないでしょうか。今回、舞台全体が少し引き締まって見えたのは、間違いなく石倉さんの参加が大きかったと思います。
「握手会」はキャラクターの見え方がまるで違った
もう一本、大きく印象が変わったのが「握手会」でした。こちらは出演者三人とも初顔合わせに近い布陣だったこともあって、前に見た時とはかなり違う作品に見えました。
松野井雅さんのマネージャー役は、どこかすっとんきょうで、独特のずれ方をしているのが面白い。普通にまとめ役になりそうな場面でも、少し空気を外してくるので、その存在自体がもう可笑しいんですね。
そして岩崎ひろみさんがとても良かった。立っているだけで「アイドル然」とした雰囲気があるので、舞台上の構図が非常に分かりやすくなる。そこに伊倉一恵さんがいて、「本物のアイドル」と「ファン」という関係が以前よりもはっきり見えてくる。その結果、作品全体の輪郭が前回よりずっとくっきりしていたように感じました。
以前見た時のアイドル役は、もう少しおどおどした印象があった記憶があります。今回はそうではなく、風格がありながら、きちんとアイドルらしさもある。その違いが、再演作品を単なる焼き直しではなく、別の味わいの一本にしていました。
年齢を重ねた今だから刺さる「同窓会事故」
そしてもう一本、今回とても面白かったのが「同窓会事故」です。これは発想の勝利ですね。同窓会で起きがちな気まずさやすれ違いを、交通事故の用語になぞらえて説明していく。
つい思いの丈をぶちまけてしまって冷や汗をかくこと。相手はもうすっかり忘れているのに、こちらだけ昔の温度感のままで話してしまうこと。思い出を語りすぎてしまう「過積載」。そうした同窓会あるあるを、正面衝突事故だのスリップ事故だのという妙にそれっぽい言葉で整理していくのが、本当におかしかったです。
しかも、私自身、57歳になり、最近地元に戻ってきてから、同窓会のような場に出ることが以前より増えています。だから、ただ笑うだけではなく、「ああ、これ、気をつけないとな」と妙に身につまされるんですね。若い頃には分からなかった笑いが、今の年齢だからこそ実感を伴って刺さる。そういう意味でも、とても印象に残る一本でした。
新しい顔ぶれが増えることで、舞台に意外性が生まれる
今回、石倉三郎さんと並んで挙げておきたいのが、おおたけこういちさんです。見た目も含めて、どこかほのぼのとしていて、癒やしのある雰囲気の俳優さんですが、そのおおたけさんが入ることで、舞台に不思議な意外性が出ていたように思います。
特に「アクション家族」では、依里さんと一緒にかなり激しく動いていて、これが実に面白かった。これまでの「更地」では、あまり見たことのない種類の味だったのではないでしょうか。柔らかい雰囲気の人が、急に身体を張る。その落差が笑いになるし、座組全体の引き出しも広がって見える。新しいキャストが入る意味は、こういうところにもあるのだと思います。
おわりに
今回の「更地Select SAKURA10」は、過去作を並べた再演版でありながら、決して懐古的な公演にはなっていませんでした。むしろ、新しいキャストが加わることで、一本一本のコントの質感が変わり、全体の印象まで変わって見える。その面白さを、私はとても強く感じました。
けれど、最終的にいちばん感心したのは、やはり14本の短編を、続き物も単発も織り交ぜながら、最後までテンポよく見せ切ってしまう座組の力です。役者が多種多様な役を演じ分け、それを観客が無理なく受け取れる形で運んでいく。この手際の良さ、その場の空気をきちんと転がしていく力こそが、「更地」が長く続いてきた理由なのだろうなあと、改めて思いました。


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