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[劇評]大森カンパニープロデュース「いつかの宴」@小劇場B1(下北沢)

完璧な感染対策のもと、上演された舞台でした。過去に何度も見ているシリーズですが、過去のどの作品とも違う味で、少々戸惑うことが多く、大満足とはいきませんでした。芝居の作りにまで感染対策が影響を及ぼしているのかなと思い、少し残念な気持ちがあった
劇団 大森カンパニープロデュース
題名 いつかの宴
公演期間 2020/11/202020/11/29

大森ヒロシ

演出 大森ヒロシ
出演者 坂本あきら:神林善次郎(むくろぎの里の家主。そば屋)
山口良一:鈴木慶照(むくろぎの里住人、りゅうちゃん)
小川菜摘:田所早苗(むくろぎの里住人)
横山清崇:草野敏成(むくろぎの里住人)
仙石みなみ:内田光里(むくろぎの里住人)
依里:冴木まりか(むくろぎの里住人)
かんのひとみ:飯野佳代(自治体職員)
岩田有弘:柴田豊作(JA職員)
大森ヒロシ:町田真司(ジャーナリスト)
劇場
小劇場B1(下北沢)
観劇日 2020/11/21(マチネ)

目次

感染対策バッチリ

久しぶりに劇場に足を運びましたが、こちらの劇団の感染対策の徹底には感心させられます
入場時は、サーモグラフィーで体温測定、半券は自分でもぎり、アンケートなし。
劇場に入るとサーキュレーター常時稼働、3尺(90cm)が舞台際から客席の間にあいた設計など、ガイドラインに沿った手配が知っ明かり行われています。
こういう時期だからこそ、このような完璧な対策をしてもらえることが観客にとっては何よりも嬉しいです

ここからはネタバレします

更地のような素舞台

あれ、 更地に来たのかと思うくらいなにもない舞台です
いつもは、しっかり作り込まれた舞台装置で上演されることがおおい人情喜劇シリーズでしたが、だいぶ趣が違います。
なにか狙いがあったのか、装置づくりをする際の密になるのを避けた結果のどちらかだと思いました

が、残念ながら素舞台の印象と芝居の印象は合わないというのが率直な感想でした

どうしても、寒々しい感じのある素舞台上で、疑似家族の絆を語られる芝居全体のメッセージは、空々しい感じを受けました。これまで、作り込まれた舞台装置が芝居に対して良い影響を及ぼしているのは何度も目の当たりにしましたが、逆にこんなに舞台装置が悪い影響を芝居の印象に与えているのを初めて見ました

モノローグ多めも、感染対策練習のせいか?

終盤に、依里さんが自分の生い立ちを語る部分では、客席は涙腺が崩壊していました。
それに限らず、いつもに比べて、自分語りのモノローグの部分が多かったように思います。
個人的には、そういうモノローグでストーリーが進む舞台は得意ではなく、結局それが主な原因で物語世界に没入することができませんでした。前述の依里さんモノローグも、僕の中では何も響かず…うーん。

過去の人情喜劇シリーズは、思わぬ人間関係が、個々の登場人物同士のやり取りで明らかになったり、過去の心の傷が見え隠れしたりというさり気なさに心を奪われていたのですが、今回は取材への協力という体で、自分語りで語られるためあまり驚きがない。

この辺、会話よりもモノローグが多いのは、個別練習などがしやすいという、練習場での感染対策をした結果かなぁとか思ったりして、そういう事情まで芝居中に考えてしまって余計に芝居に集中できないという 悪循環にハマりました…無念
思い返せば、前半はモノローグを抑えて、過去の振り返りも芝居で繋いでいるが、後半ほぼモノローグになっていたという気がしました。

主役が不在?

もうひとつ、集中しにくかった理由が、この物語の主役と思しき人がいなかったことでした
群像劇的な作りになっているので、主役が不在で誰かに肩入れしてみることができませんでした。好みの問題だと思いますが、結果として物語に集中することができぬままに芝居が終わってしまいした。

時間を感じさせぬ役者陣の奮闘

とはいえ、1時間30分の公演時間を長いと感じたり、途中でだれたりということはまったくありませんでした
特に、俳優さんはいずれも素晴らしく、山口さん、坂本さんの相変わらずのおとぼけぶりも見飽きぬ楽しさがありました
また、小川菜摘さんは今回舞台で初めて見ましたが、変幻自在で安心して見れる女優さんでした。
お馴染みの依里さんも、モノローグで観客の涙腺崩壊させるなどかなり見せ場があり、観る度にうまくなっているなぁと感じました。

久しぶりの舞台で、期待値が高すぎたせいか戸惑いも多かったのですが、素敵な舞台でした

過去の人情喜劇シリーズの感想は以下

カンパニーの常連役者が見事に各自の役割を果たし、笑えて泣ける人情喜劇の期待を裏切らない出来。特に、主人公にあたる姉妹を演じた二人の女優さんの演技のうまさと存在感を感じ取ることができた。また、カンパニーのコアメンバーである山口さんと大森さんのシンクロ率の高さに感嘆劇団大森カンパニープロデュース題名いきどおり公演期間2019/11/27 ~ 2019/12/04 作大森博演出大森博出演者 山口良一:結城孝史(父親) 杉本有美:結城優香(姉) 依里:結城百香(妹) 伽代子:本谷香奈(おば) 中原果南:佐伯響子(孝史行きつけの...
[劇評]大森カンパニープロデュース「いきどおり」@小劇場B1(下北沢) - 演劇とかの感想文ブログ

本多劇場進出を果たした大森カンパニープロデュース作品は、一見、つながりのない様々な過去を持つ登場人物たちが、各々の内面をお互いにさらけ出し合うことで変わっていく物語が秀逸。笑いながら泣けるという稀有な経験ができる「人情喜劇」の面目躍如の舞台でした劇団大森カンパニープロデュース題名あじさい公演期間2019/02/20〜2019/2/24作竹田哲史/大森博演出大森博出演坂本あきら:横やん(解体業の日雇い。足が痛い)山口良一:カバちゃん(解体業の日雇い。昔は鉄道が好きだった)天宮良:千葉ちゃん(解体業の日雇い。ギャンブルに狂...
[劇評]大森カンパニープロデュース「あじさい」@本多劇場(下北沢) - 演劇とかの感想文ブログ

人情喜劇としての型は本当にキッチリできていて、期待通り笑わせてもらい、ぐっと来るシーンもありました。驚きのアクションシーンもあり、見どころは満載でした。出てきた瞬間客席が笑いに包まれる役者さんって得だなと思う一方で、演じる役がずいぶん固定化されているような気がするのが気になりました劇団大森カンパニープロデュース題名いじはり公演期間2018/11/07〜2018/11/20作故林広志/大森博演出大森博出演坂本あきら:結城智有(三勇士の一人。結城組組長。3年間禁固刑に服役した過去)山口良一:亀有達郎(三勇士の一人。昔は喧嘩...
[劇評]大森カンパニー「いじはり」@小劇場B1(下北沢) - 演劇とかの感想文ブログ

大森カンパニープロデュースの「いざなひ」は、コンセプトである「人情喜劇」に違わぬ笑えるところが随所に散りばめられながら、「ほろっと」と泣けるウェルメイドな物語でした。誰にでもオススメできる安心できる舞台でありながら、少し物足りなさを感じる部分もありました劇団大森カンパニープロデュース題名いざなひ公演期間2017/12/13〜2017/12/20作故林広志演出大森博出演坂本あきら:しげさん(クラブKの専属コントトリオの一人。先代オーナーとは昵懇)岡まゆみ:まき(クラブKの専属の歌手。娘のアイは、ミサキと同級生)山口良...
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劇団大森ヒロシブロデュース公演期間2012/12/07~2012/12/16演出大森ヒロシ作竹田哲史出演坂本あきら、山口良一、笠原浩夫、大森ヒロシ、岩田有弘、伴美奈子、保田圭、三好絵梨香、なしお成、高橋恵理笑いが自然に出て、何度もほろっとさせるシーンがあって、オススメ度が高いのに、客席は寂しかったとか。もったいない!来年は、早めに行ってちゃんと口コミしよう。坂本あきらさんの卑怯なまでのおとぼけ芝居に笑わせられました。あれだけ、周りを振り回しておいて、「いいとこ」はすごくしっかり役者している。やっぱ卑怯だ。<以...
大森ヒロシプロデュース「あおげば」@THEATERBONBON - 演劇とかの感想文ブログ
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