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[劇評]PARCOプロデュース「人間風車」@東京芸術劇場 プレイハウス(池袋)

楽しみにしていたPARCOプロデュースの「人間風車」は、過去の作品とくらべても演出もよく、より「恐怖」を感じさせるとても良い演出でした。劇場を小さくすると興行が厳しくなるのはわかりますが、もっと小さな劇場で、役者の近くで見たかった舞台でもありました

劇団 PARCOプロデュース
題名 人間風車
公演期間 2017/9/282017/10/09

後藤ひろひと

演出 河原雅彦  
出演 成河:平川(売れない童話作家)
ミムラ:アキラ、オロ、盲目の少女
加藤諒:サム
矢崎広:ケビン、小杉(番組プロデューサー)、カオス
松田凌:則明、村人、妖精
今野博喜:王、住職、サンマルチノ、ラ・バルカ、蒲田
菊池明明:齊藤、のん、村人、沢井、妖精、隣人
川村紗也:荒川、ピロ子、村人、中野、妖精
山本圭佑:藤木、かっつん、長老、妖精、照屋、墓掘り
小松利昌:美女1、小坊主、くるみ王、星野かがやしき、侍従長、古谷
佐藤真弓:紺野、カメ蔵、村人、妖精
堀部圭亮:中華家来、ワフー、山際、美女2、王
良知真次:ケリー、老婆、國尾(売れてる童話作家)、ブラタ
劇場
東京芸術劇場 プレイハウス(池袋)
観劇日 2017年10月09日(マチネ)  

目次

17年ぶりに再演を観劇

僕は、過去に2回見ています。初演の遊気舎版と、2000年のPARCOプロデュース版です。(2003年版で、今回の演出を努めた河原雅彦さん出演版は見ていません)

その為、この作品は、14年ぶりの再演ですが、僕にとっては17年ぶりの再演です。子供だったら高校生になるくらい前ってことか....昔すぎorz

恐怖ものとしては、非常に良くできている。ストーリー展開も、童話作家を主人公にしたその配役の妙もある。童話作家と恐怖ものって確かに最もかけ離れたものだから。目的意識のはっきりした脚本の勝利といえる。劇団遊気舎題名人間風車公演期間作後藤ひろひと演出後藤ひろひと出演山本忠、楠見薫、三上市朗、久保田浩、西田政彦、谷省吾、うべん劇場紀伊国屋ホール(新宿)観劇日1997年12月6日童話作家役(三上市朗)は、非常にうまい。遊気舎のメンバーにいないタイプの役者で、普通の役者。それでいて、一人芝居的に童話を子供達...
[劇評]遊気舎「人間風車」@紀伊国屋ホール(新宿) - 演劇とかの感想文ブログ

前回の遊気舎版との違いを意識し、比べながらの観劇になった。 結論としては、先にこちらのバージョンを観たかったなぁと思った。遊気舎版の方が、脚本的な落し方がしっかりしていたし、恐怖というテーマにより忠実だった気がしました。PARCO版では、少し肩透かしを食らった印象です。劇団PARCOプロデュース題名人間風車公演期間2000/11/03~2000/12/03作後藤ひろひろ演出G2出演生瀬勝久,斉藤由貴、阿部サダヲ、八嶋智人、後藤ひろひと、竹下宏太郎、田鍋謙一郎、松永玲子、大倉孝二、神野美紀、武藤灯子劇場PARCO劇場(渋谷)観劇日200...
[劇評]PARCOプロデュース「人間風車」@PARCO劇場 - 演劇とかの感想文ブログ

初演のときの感想、上記の記事にはめちゃくちゃあっさりしか書いていないのですが、97年(20年前!)に見た芝居にしては結構印象が強い舞台で、2000年版も、結構記憶に残ってました。なので、以下のような記事も書いてみました

東京千秋楽を観劇!感想記事を書きました!(2017/10/13 追記)https://blog.kansolink.com/02reviews/stage-review/parco-human-windmill2017/近づいてきたので、過去のキャストをまとめてみました。そちらもどうぞ!(2017/09/19追記)13年ぶりに後藤ひろひとさんの戯曲「人間風車」が、この秋上演されます。PARCO & CUBE 20th. Present「人間風車」が、今秋、東京・東京芸術劇場 プレイハウスほかにて上演される。 本作は、1997年に後藤ひろひとが遊気舎に書き下ろした“童話ホラー演劇”。2000年にはG2演出のもと、東京・PARCO...
小劇場ホラーの傑作「人間風車」が楽しみ - 演劇とかの感想文ブログ

というわけで個人的にも、相当期待をして見に行った舞台でした。

サム役が、キーだという認識は外していなかった。

加藤諒さんは、やはりすごかったです

キャスティングを聞いたときから、期待をしていました。子役出身ということで、それなりの演技の基礎はできていると思いましたし。

一方で、バラエティのイメージで、キャピキャピ(?)した印象があった彼の後半の変貌がどのくらい落差がでるかは未知数だと思っていました。

結果としては、彼のサム像はとてもよくて

無邪気と狂気の落差がすごく明確

で、この物語のテーマである「恐怖」を体現されていました。

最後の最後のシーンは、加藤諒さんがでなかったのは、ちょっと残念でしたが、(サムの肉体も滅びてしまったという)こっちの解釈にした方が、恐怖心は増すなと思いました。(記憶が正しければ、昔見たバージョンは最後にサムの肉体が「ビル」としてもう一度蘇ったような気がします)

成河さんの「語り部」力(かたりべりょく)はもうちょっと欲しかった

前半は、成河さん演じる童話作家平川が語る童話は、すぐに他の役者さんによる劇中劇に切り替わりカラフルな話に変わっていきます

目先が代わって良かったですし、個々の童話がそれぞれ芸達者な役者さんに演じられる(特に、今野さんは最高)為、見ていて楽しいです。

この辺も、再演のたびに強化されてきている印象で、今回は特にほとんどの童話は、平川の口から語られるところが少なく、わりと平川(成河さん)は、劇中劇の童話を舞台袖から眺めているようなシーンが多かった気がします。

初演(1997年)に見た時に、この平川を演じている三上市朗さんを見て、「語り」の力が強い役者さんだなぁと感じたのを覚えているので、初演の時は、前半も含め多くの物語は、平川の語りで聴かせてもらえていたのだと思います

それこそ、公園で童話を聞く子どもたちのように、客席に向かって、彼は語りかけてきたように思います。(紀伊国屋劇場と今回の劇場より小さな劇場という効果もあったと思いますが)

その演出の違いは、最後のシーンで出た気がしました。

平川が怒りに任せて作った悪魔の童話物語をサムに聴かせるシーン。耳を塞ぎ、転げ回り、全身で平川の話を拒絶するサムに向かい、語りかける平川。

このシーンばかりは、劇中劇でごまかすことは出来ません。

サム(加藤諒さん)が、聞きたくないのに彼の脳に直接語りかけるような強力な話術。これが、必要なのですが、今回の成河さんは、前半の語りのシーンが少なかったせいか、そもそもの語り力が、過去に見た平川役(生瀬さん、三上さん)より弱かったのか、はたまた劇場が広かったからか、迫ってくる力が少し弱かったと思いました。

ただし、成河さんのヒトの良さそうなキャラクター設定や、語り口はとても親しみやすく全般としてはとても良い配役だったと思いました。

演出全体はとても良かった。

演出全体としては、良い演出になっていると思いました。怖さをより強調する演出になっていました。

実は、初演では、子供を襲う男(今回の舞台では、今野さんが演じる舞台上の男)が、観客席(しかも、僕の斜め後ろ!!)から立ち上がり、舞台にあがっていくという、客いじりが真骨頂の遊気舎らしい演出があったりと、色々とギミック満載だったのですが、観客いじりこそなかったものの、ギミック満載の演出でちょっと遊気舎版を思い出しました。

欲を言えば、もうちょっと小さな劇場で見たかった気がします。(カーテンコールで、成河さんも客席の密度が必要と言っていましたが、同じような思いなのだと思います。)

過去の上演作のDVD

ちなみに、過去のキャストの比較表記事は以下になります。

もうすぐ、開幕するPARCOプロデュース「人間風車」。14年ぶりの再演です。過去の全てではありませんが、僕も3度めの観劇に行くことが決まっています。 今回は、物語の内容の概略と、過去のキャスティングの歴史を振り返ってみたいと思います。「人間風車」という作品について遊気舎の作品で、大王こと後藤ひろひとさんの作品です。題名もそうですが、中にたくさんプロレス技の名前が出てきます。 別にプロレスものというわけではなく、売れない童話作家と知り合った女優の間の物語です。 恋物語という側面がないわけではありませんが...
PARCO/遊気舎「人間風車」過去キャストの一覧 - 演劇とかの感想文ブログ

以下は僕も見た2000年PARCO版。残念ながら、1997年の初演版のDVDはない様子。

以下は、見ていませんが2003年版。

こちらは、若手俳優を集めて行われた昨年の上演版。知りませんでしたが、見たかったかもしれません。

こういうのを見逃しているのは痛いなぁ、アンテナを高くあげたいところです。

以上 PARCOプロデュースが2017年10月に東京芸術劇場で行った舞台「人間風車」についての劇評でした。