2018年の秋に「贋作 桜の森の満開の下」が野田地図によって再演されることが、発表されました。物語の重要な役どころでである男役の「オオアマ」を「アマ」ミユキ(天海祐希)さんが演じる等豪華キャスティングが話題です。そもそもどんな話だったのかと、今回の再演の見どころを予想してみたいと思います。
目次
昨年の歌舞伎版に引き続いての突然の再演発表
昨年の歌舞伎版は、2001年の新国立劇場での舞台以来のひさびさの再演で、歌舞伎を見に行かない(老後の楽しみにとってある….もうそろそろ老後という気がするが)と決めている僕としても少し気になる舞台でした
まさか、それから1年も立たない今再演をするとは思いもよりませんでした
以下の記事に、詳しい再演経緯と今回の豪華キャスティングの経緯がかかれています
作・演出ならびにヒダの王役を務める野田は今回の上演にあたり「今年の秋に『ジャポニズム2018』というフランス・パリで行われる日仏連携による大規模な複合型文化芸術イベントの公式プログラムとして本作を上演してほしいと逆指名されたので、それならば日本を代表するキャストを揃えたいとあちこちに “あたってくだけろ” という気持ちでオファーをしたところ、皆さまご了解いただき、これ以上ないメンバーが揃いました」と喜びを言葉にした。
確かにびっくりするようなキャスティングだなと思いました
天海祐希の名が浮かんで…絶対ダジャレですよね
特に、「オオアマ」役は、当初男性の俳優のキャスティングを考えていたとのこと(初演段田安則さん、昨年の歌舞伎版は市川染五郎さん)なのに、「天海祐希、という名前が思いうかんだ瞬間、これだ!と思いました」との事で、今回宝塚退団以来初の男役を天海祐希さんが演じることになりました
これ絶対「オオアマ誰がいいかなぁ、オオアマ..アマ..アマミユキおお天海祐希がいいんじゃないか?」となった気がしてます(注:妄想です)
なにせ、脚本中では「ヒコウ」するはずの羽を持たせるはずなのに、神様が江戸っ子だったから「シコウ」する脳を持ってしまった人類とか、妄想するしかない自分を「もう、そうするしか仕方がないんだ」と自己肯定するようなダジャレ(言葉遊び?)が多発する野田さんの思考回路
普段のシコウにもそのようなヒコウが入り混じってそうです(注:妄想です)
とはいえ、2度もこの作品を観ている身としては、このキャスティングはかなり魅力的です(オオアマとは何か?は後述します)
現在上演中の「髑髏城の七人 Season極(修羅天魔)」では、主役の極楽太夫を演じている天海祐希さん。その存在感たるや相当なもので、かつて観に行った「蒼の乱」では、登場した瞬間に客席から自然と拍手が巻き起こりました
歌舞伎とかなら当たり前かもしれませんが、商業演劇や小劇場ではほとんどそんな存在感の方はいません
1年半ぶりの劇団☆新感線の本公演。天海祐希さんを主役として迎え、脇を固める実力派とものすごい制作スタッフ力を背景に圧倒的なパワーを見ることができた。新感線には珍しく「爽やか」な印象をもったのは、天海さん、松山ケンイチさんの清々しさとタイトルにある「蒼」を意識した舞台照明そしてなにより、色んな所で風を感じさせる演出にあった。そして、早乙女太一の超絶殺陣は健在でした。劇団劇団☆新感線公演期間2014/03/27~2014/04/26演出いのうえひでのり作中島かずき出演天海祐希、松山ケンイチ、早乙女太一、梶原善、森奈みは... [劇評]劇団☆新感線「蒼の乱」@シアターオーブ - 演劇とかの感想文ブログ |
ちなみに、他のキャストの方も豪華で、今年唐組30周年記念公演「吸血姫」に出る銀粉蝶さんも、アナマロ役で出演します
今年(2018年)は、唐組が創設から30年にあたります。それを記念して今年の唐組は、状況劇場時代の名作「吸血姫」を上演しています。結構好きな話なので、今回はこの舞台について記事にしたいと思います(恒例の過去上演バージョンのキャスト比較表も作りました!)というわけで、観に来ました!!以下が私の劇評1971年初演作。唐十郎演出は、47年ぶり以下の記事を参考にしました当時は、前年に「少女都市」で岸田戯曲賞を受賞してのに乗っている時期ですね1971年版のチラシはこれ出演者は、唐十郎,李礼仙,麿赤児,大久保鷹,不破万作,田... 唐組30周年記念の「吸血姫」ってどんな作品? - 演劇とかの感想文ブログ |
既に、修羅天魔はチケット確保済みだし、吸血姫も観に行きたいし、今年は天海祐希さんと銀粉蝶さんには劇場で2回お会い出来そうです(もう観に行く気になっている私)
贋作 桜の森の満開の下とは
ここからは、ネタバレします
実は、2001年版の舞台は、僕はあまりいい感情をもっていません。1991年版の夜長姫役の毬谷友子さんがハマりすぎていて、今回も同役を演じる深津絵里さんがどうにもハマって見えなかったのと、主役の堤真一さんのかっこよさが生かされていないと感じたのが、そもそもの原因だと思います
哀しい体験だった。野田秀樹作品との付き合いは、既に12年近くになるが、野田秀樹のカリスマ性が終焉する場に立ち会った印象だった。芝居には、既に9年前のパワーはなく僕の胸に迫るものは何もなかった。野田さんか僕のどちらかが、共有できるものを失い既に野田さんの芝居に感動できなくなった自分を感じ非常に寂しい思いを感じた。 【2017/8/9追記】2017年歌舞伎版も含め、キャスト一覧を記事にしてみました。そちらも良かったら参照ください。追記ここまで!劇団新国立劇場題名贋作・桜の森の満開の下公演期間2001/06/01~2001/... [劇評]新国立劇場「贋作・桜の森の満開の下」@新国立劇場中劇場 - 演劇とかの感想文ブログ |
とはいえ、耳男役にかっこよさを求めるのが間違いのもとで、今回の妻夫木聡さんを起用した野田さんいわく「いじめられやすい」キャラクターにあるということなのでそこは改善されるとおもいます(←何故上から目線?俺)
この作品は、坂口安吾さんの表題作「桜の森の満開の下」「夜長姫と耳男」を下敷きにしているものの他の作品が色々混ざっています。特に、「飛騨の顔」という作品の影響が色濃く出ていると思います
「飛騨の顔」は、小説というよりも坂口安吾さんの日本古代史への解釈を書かれているのですが、どのくらい信憑性があるかどうかはさておき、坂口安吾さんは、日本の天皇家の源流はヒダ王朝にあるという論が展開されています
その中で、壬申の乱は、飛騨がやってきた王朝の庶流が嫡流を追い払って自らの源流となる飛騨を敵に回した戦いであり、その後王朝を継いだ王は、敵対する飛騨から飛騨のタクミ(名匠)を毎年連れてきて都で仕事をさせる。しかし、そのタクミがよく都から逃げるという話があります
この壬申の乱の勝者こそ天武天皇すなわち「大海人皇子(オオアマの王子)」で、この舞台の天海祐希さんの役どころにあたります
野田さん演じるヒダの王とは、その天皇家の源流。そして、耳男はその逃げ出すタクミの象徴であり、反権力の象徴であったりします
そのため、天海祐希さん演じるオオアマは、途中から存在感を増していく「かなり」重要な役です。
天海祐希さんの演劇作品の劇評/感想へのリンク集。最新の作のスジナシが上演した「スジナシ(2019)」だけでなく、1999年以来の12作品の公演情報や劇評を読んでいただくことができま... 天海祐希さんの公演についての劇評/感想のリンク | 演劇感想文リンク - 演劇感想文リンク |
一味違う、集大成の作品になるのか
2001年もキャスティングの豪華さに期待をして観に行きましたが、今回は前回以上の期待を持てるキャスティングになっています
東京芸術劇場のサイトにも野田秀樹さんのコメントが掲載されていますが、豪華すぎるキャスティング及びスタッフが集まったので、これで良いものができなければ、誰がみても自分だけが悪いと思われるみたいなことを書いているので、相当に気合が入ったリニューアルが行われるものと期待しています
本当は、フランスに観に行きたい…がそれはかなわないので、国内のチケットをなんとか確保したいと思っています
以上 5回目の再演になる「贋作 桜の森の満開の下」についての記事でした
再演時のキャスティングは、昨年の歌舞伎版上演時にまとめたので、そちらを観てください(今回の2018年版のキャスティングも反映済みです)
野田秀樹さんの「贋作 桜の森の満開の下」は、1989年の平成元年に初演を迎えて、歌舞伎版も含め既に4回再演されている演目です。平成が終わろうとしている2018年秋に再演されます。キャストを変えながら再演を繰り返された作品なので、2018/4/5の記者会見記事による2018年版も含め、キャスト比較表を作ってみました2018年4月5日に記者発表のあった2018年秋のNODAMAPのキャスティングを以下の記事を参考にして追記しました野田秀樹が海外公演に意欲「贋作 桜の森の~」古田新太は2001年版の裏話明かす - ステージナタリーshort : ちなみ... 野田版「桜の森の満開の下」の過去キャスト一覧 - 演劇とかの感想文ブログ |
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