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[劇評]新転位21「マーちゃんの神曲」@光座

久々の復活を遂げた転位21は、様式にこだわる演出もそのままに復活していた。但し、役者はまだ若く主役の三人程を除くとその演出に対応しきれていないのかもしれない。演出/脚本とも斬新であり古くはない。是非もう一度見たいと思う反面、見ていて時間を忘れるというタイプの芝居でもなく、時間が長すぎるのが難点か。

劇団 新転位21
題名 マーちゃんの神曲
公演期間 2002/11/24~2002/12/01
山崎哲 演出 山崎哲
出演 村山好文、伊藤悦子、集山大揮郎、嘉手納康江、松永知秀、おかのみか、浅川貴道、真田知幸、咲羽靖子、穂積美幸、戸辺俊介
劇場 光座(中野)
観劇日 2002/12/01(マチネ)

<<ストーリー>>

ある朝目を覚ますと、まーちゃんがいなくなっていること気づき、女は慌てる。しかし、それ以上に驚いたのはもう一人の同居人が外から帰ってきて知らない間に4日も立っている事実を知らされたことだった。二人は、必死になってその間に起きたことを思い出そうとする。大量に消費された塩の意味と供に。配水管のつまりを気にする近所の主婦たちが現れ、配水管に大量の脂分と髪の毛が流れていると知らされる。すこしづつ4日間のできごとが蘇る。

<<感想>>

転位21を前に見たのは幼女連続誘拐殺人事件を題材にした「骨の鳴るお空」だった。事件の記憶の生々しさが芝居の迫力を増し、その相乗効果がこの劇団の作品の凄みだと感じた。

 

今回の作品は10年以上前の事件を元にした芝居であり、しかも僕はこの「藤沢悪魔払い事件」という事件が記憶にない。正直面白いかなぁと思っていた。

 

しかし、ひさびさの再結成の「新」転位21の作品として山崎哲さんが選ぶだけのことはあり、この脚本は非常にいい。話が進むにつれてなぞが深まり、事件云々ではなくストーリーで観るものをひきつける魅力がある。

 

役者も、主役の三人には三者三様の存在感がある。前に、新じゃないほうの転位21の時よりもこの三人に関しては魅力的というか個性があったように思う。(何せ古い記憶との比較なので当てにはならないが)

 

この三人が個性的であったからこそ、他の出演者の無機質な演技が生きてきている。

 

ロックバンドをやりながら、同棲をするカップルの目には周りが外敵に見えていたのだと思う。

 

今回の演出は、そのカップルの心象風景を観客が共有するために非常に有効に働いている。

 

ただ、楽日ということもあるかもしれないが、声を嗄らしてしまった役者さんの声は参った。ほんとに聞き取りづらかった。(かなりハードな発生を強いる演出であったことなど同情の余地もあるが)

 

また、2時間半にわたる長い芝居は、元映画館のこの劇場の座席をもってしてもつらいものがあった。特に終盤のある意味全てが明かされ、死体を切り刻む抽象的なシーンは、その意味するところがあまりにもつらい風景であるが故に、見るものに舞台を注視させることをためらわせ長さを倍以上に感じさせた。

 

山崎哲さんの演出は、今でも十分斬新であり久しぶりに見ると感動さえ覚える。ただ、心躍る芝居ではないだけに、そうちょくちょく見たいという気にさせられるものではないのも正直な感想。もうちょい、芝居全体の時間を短くしてもらえればちょっと足を運びやすくなるのだけど。

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