テント芝居ならではの装置の作りこみはすばらしい。役者もここまでやらなくてもというくらいに、芝居にのめりこんでいる。それだけでも、一見の価値はある。ただ、過去のこの劇団の公演を見ているもののわがままとして言わせてもらえば、本公演は全体に脚本の練りこみ/役者の練習ともに足りてない感がある。初日近くということもありしょうがない部分もあるかもしれないが、過去の公演は、初日であっても非常に高い完成度を誇っていた劇団だけに少しがっかり。
劇団 | 劇団桟敷童子 | ||||
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題名 | 風来坊雷神屋敷 | ||||
公演期間 | 2005/10/15~2005/10/30 | ||||
作 | サジキドウジ | 演出 | 東憲司 | ||
出演 | 東憲司、原口健太郎、稲葉能敬、池下重大、桑原勝行、小野瀬弥彦、尾崎宇内、鈴木めぐみ、外山博美、川原洋子、もりちえ、松本しゃこ、新井結香、板垣桃子、川田涼一、岡島博徳、南谷朝子 | ||||
劇場 | 北区・飛鳥山公園内特設天幕劇場(大山) | ||||
観劇日 | 2005年10月16日(ソワレ) |
【ストーリー】
時は戦国時代。長く続く戦に加え、雷神峡では雨が降ると川が氾濫し、その濁流は家屋敷を呑み込む。 人々は、かかる不幸は全て雷神峡龍神様の怒りによるものと、毎年生贄が捧げられる。 生贄には、阿呆丸と呼ばれる生贄のために育てられた娘をあてがうか、 阿呆丸が来なければ、 邑の若い生娘をあてがわなければならない。 今年の生贄は雷神峡日陰谷邑の長・ 重蔵の娘、志乃の番だ。 生贄の儀式を目前に、志乃は恋仲の千代丸と伴に邑から逃げだそうとするが、 追ってきた邑の人々に捕まってしまう。 生贄が出せない邑は龍神の怒りを買うとともに、近隣の邑々から私刑を受けるのだ。 掟を犯した千代丸と志乃を制裁しようとしたその時、フラリと現れた男、興櫓木が二人を助ける。 そして興櫓木は、龍神を退治すると言い出した・・・。(劇団HPより)
【感想】
アングラ芝居の期待のホープ(勝手に命名)、満を持してのテント公演。期待は絶好調で見に行きました。劇場に入って気づいたのは、相変わらずのこの劇団の観客に対する真摯さが劇場にまであらわれています。なんと、客席がちゃんとひな壇になっていて、観客は桟敷ではなく(劇団名は桟敷なのに)椅子席(というか長いす状の座席)になっているのです。
テント芝居で、靴の脱がないで入れて、芝居中に窮屈な思いをしないですむのはかなり久しぶりです(昔黒テントを見に行ったときにそうだったようなきがするけど)
前々から、この劇団の制作さんの観客思いなところには頭が下がりますが、今回の客席作りは本当にすばらしいと思いました。(自分でテント芝居を作ったことがあるものとしては、余計にその苦労がしのばれます。ほんと、劇場を一から作るテント芝居では、客席作りってどうしても後回しになってしまうので、ここまで作りこめるパワーと気配りはすばらしいと思いました。
じゃ、装置や舞台が手を抜かれているかといえば、そんなことはない。装置および舞台は、本当にすごい。テント芝居だから当然×××くずしはあるだろうと思っていたが、まさか×××まで×××するとは思わなかった。ラストシーン思わず「マジか」と口走ってしまいました。(口走る前のいくつかのシーンは心の中でなんどもつぶやいてましたが、最後に耐えられなくなった) (以上自主規制 なおここから下はネタバレします。)
女優陣はいいですね。特に「もりちえ」さん。せりふがまったくない役でありながら、悲しい役を見事に演じきってました。こういう役者さん大好きです。(前々から嫌いじゃないけど。)
声を聞いていると、ジャズ歌手の綾戸智絵さんにしか思えない、南谷朝子さんは、今回は敵役ですが、なかなかの好演です。でも、もう少し若々しく芝居をしてもいいと思いました。最後は、結構おいしい役だなぁと思いつつ、体が心配です。
板垣桃子さんも、今回は前回公演とは打って変わってかわいい役どころ(悲しいけど)はしゃいだ感じと東北弁(?)が素敵です。こんな悲しい話で、悲しい役でありながら、笑いが取れるのはすごいです。
興櫓木と聞いたら、絶対原口さんがやると思っていたのに、今回は違ってました。(先入観は怖い)
確かに今回、原口さんがやっていた役は原口さんじゃないできない思うが、個人的には、今回の興櫓木役もぜひ原口さんにやってほしかったなぁと思いました。(可愛い千里眼興櫓木役(下の名前が違いますが)の原口さんは好きでした。)今回の興櫓木(池下さん)は、まじめすぎました。
何度も見るうちに、少しづつ期待値があがっているので、あくまでも以下の感想は今までの作品に比べてという前提つき。
前回見た作品(博多湾岸台風小僧)や、可愛い千里眼(個人的にはここ最近みたあらゆる芝居の中でも最高傑作)とかに比べると脚本の練りが足らない気がする。説明せりふが多く、まるで「渡る世間は鬼ばかり」のようなせりふの多さ。ちょっと辟易。
あと、殺陣がかっこよくない。基本的にプロじゃないんだからと今までは大目にみていたが、そろそろちゃんと殺陣をしないと舞台全体がしまらないぞ…
おそらく、全体に練習が足りていない感が漂っていたような気がします。(ラストシーンも何かが失敗していた気がする)
テント芝居の大変さは、自分の経験から見てもすごくわかる上、結構雨降ってましたからねぇ。きっと色々大変だったに違いないとつくづく感じました。
今週末は貸切公演らしいので、週末を狙うなら来週末(10/29、30)。芝居はきっとより洗練されたものになると思うが、本当に役者たちの体力は持つのか….
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